|
今日本の世論はイラク派兵反対が圧倒的多数である。
一方拉致問題に不誠実な対応をした北朝鮮に対する強硬論(経済制裁発動)も圧倒的多数である。
しかし良く考えてみよう。
この双方の多数派に賛同するほど矛盾した論理はないのだ。
北朝鮮は日本が経済制裁を発動すれば宣戦布告とみなし物理的対抗手段をとると言っている。
物理的対抗手段とは六カ国協議の枠組みが壊れることだけではなく、戦争やテロを含む何らかの暴力的手段と理解して良かろう。
それに対し強硬派の自民党や民主党の政治家たちはそんなの脅かしに過ぎないと言っている。
はたしてそうだろうか。
脅かしだとの確証があるのだろうか。
政治家は軽軽しく、脅かしに過ぎない、などとと言ってはいけない。
彼等は嘗て、拉致被害者の子供達の帰国を、困っているのは北朝鮮だから放っておいてもすぐ先方が折れてくると何の確証も無しに言っていた。
だが北朝鮮は一向に折れてこず、この問題は一年半以上も解決せず、結局小泉首相が七重のひざを八重に折って再度の訪朝をし、やっと帰国が実現したのだ。
こういう見こみ違いをした連中を今なおマスコミはもてはやしている。
政治家、マスコミ、国民世論が互いに煽り煽られて強硬姿勢が高まるのは極めて危険な構図だ。
太平洋戦争はそうして起こったということを忘れてはならない。
第一経済制裁は何の為に行うのだろうか。
問題解決の為だろうか復讐の為だろうか。
それとも不誠実な北朝鮮が日本を侮辱している為か。
相手が宣戦布告とみなすと言っているのだから、すくなくとも拉致問題の解決にならないことはハッキリしている。
その場合日本はどうするのだろうか。
制裁の度合いに段階を設けそれを強めて行けばよいと言うのが大勢である。
そんなことをすれば相手は遠のくばかりである。
軍事手段に訴えて来るてくる可能性も高まる。
そしてこの問題の解決は最終的には、相手がし掛けて来ようがこまいが軍事的手段ということにならざるを得なくなってくる。
相手が言うことを聞かない限り、そしてあくまで言うことを聞かそうとするならばそうなる。
絵空事ではない。
第一民主党のある代議士は、テレビの討論番組で、戦車で攻めていって未だ北朝鮮にいる拉致被害者を取り返すべきだ、と堂々と主張している。
同席している他の民主党代議士たちも、これをたしなめるどころか、気持ちは判るなどと言っている。
勿論民主党内でこの発言が問題視されることもない。
経済制裁は、相手の側からも此方の側からも軍事的衝突を招く可能性が極めて高いのだ。
強硬論者は(戦争を此方からしかけろという連中は別として)北朝鮮の発言は脅かしだ、もし攻撃してきてもアメリカが北朝鮮をやっつけてくれる、と言っている。
ではどの段階でアメリカは軍事行動を取るのだろうか。
1、いきなり軍事攻撃する。
2、相手が戦争をしかける気配が見えたら攻撃する。
3、実際にしかけて来てから攻撃する。(この場合もいろいろと段階がある)
このうち(3)となる可能性が高いが、この場合日本の被害は甚大なものとなるだろう。
何しろ相手は核爆弾も生物兵器も持っているのだ。
いずれにせよ日本の安全保障は完全にアメリカ頼みだ。
しかもどの段階で軍事行動を取ってくれるかはアメリカ次第なのだ。
その段階によって日本の被害の程度は左右される。
それなのに対北朝鮮強硬派の多い民主党は一致してイラク派兵反対なのだ。
だが日本がアメリカのいうことを聞かなければ、先方だって此方のいうことを聞いてくれない。
どこの国だってイラクに軍隊を派遣などしたくない。
アメリカに大義のないことなど最初からハッキリしている。
でも安全保障をアメリカにゆだねる日本や韓国はアメリカのいうことを聞かざるを得ないのだ。
イラクでの人命損傷や日本国内でのテロなど、無いに越したことは無いが、北朝鮮の危険性のほうがはるかに高い。
だからイラク派兵反対で日本だけがが北朝鮮に強硬姿勢をとることは、国益の観点から論理的に矛盾してくるのだ。
それでも北朝鮮のいっていることは単なる脅かしに過ぎないと主張する人は多いだろう。
だが仮にそうだとしても、もし戦争が始まった場合も想定し、日本がどうなるかシュミレートして、それを承知の上で発言しなければ単なる騎虎の勇で、無責任と言われても仕方が無いだろう。
そして何よりも大切なのは核の問題を解決しなければならないということなのだ。
今日本の政治家で、経済制裁慎重論を唱えるのは社会党を除けば小泉首相只一人の様相を呈している。
自民党内の良識派は世論に阿って沈黙したり迎合したりしている。
ここは勇気を振るって小泉首相を支えて欲しいものだ。
だがそんな人物は出ないだろう。
そのことが今の日本の政治家に首相になるだけの器の人物がいないことを物語っている。
それにしても日本の将来は危ういものだ。
論理的思考を放棄してムードに流される世論。
面白ければなんでも煽りたてるマスコミ。
今もし日本にヒットラー的人物が出れば、簡単に天下を取る土壌ができつつある。
これが筆者の杞憂に終わることを願ってやまない。
なおさいごに付け加えておくが、北朝鮮の問題の解決は、核、拉致双方とも内部崩壊無くして有り得ないだろう。
この場合シナリオは二つある。
一つは北欧型崩壊、これなら目出度し目出度しである。
もう一つは軍事クーデターによる崩壊。
この場合は北朝鮮の態度が更に硬化する危険性が大である。
何しろ彼等は拉致など認めた金正日の側近(或は金正日そのもの)を批判しているようだからだ。
経済制裁は北朝鮮強硬派を利するだけだろう。
蛇足だが小泉首相が朝鮮総連の記念式典に祝辞を送ったのははなはだ怪しからんと1部の人間が批判を始めたことを批判する。
すくなくとも今の段階では彼等は日本に帰化していない人を含めて我々の味方。
だが中には北朝鮮に忠誠を誓う者がいるのも事実。
だからといって絶対に差別をしてはいけない。
人道上からも、彼ら全体を北朝鮮の側に追いやることを避ける意味からもだ。
以 上
|