03年2月19日のテーマ 外資は禿鷹か?

外資についての議論がかまびすしい。
自民党の亀井代議士は竹中大蔵大臣を禿鷹ファンドの手先などと言っている。
イメージ的には禿鷹ファンドと呼ばれる外資は手に入れた日本の会社を食い物にして,その会社をめちゃくちゃにし,儲けだけをさらっていってしまう,といったところだ。
新生銀行のリップルウッドなどがその代表的なものとされている。
一般的に外資は極めてドライで、なりふり構わず行動し、簡単に首切りも行うし、関係各方面の事情など全く頓着せず、まして義理人情などとは全く縁が無いから付き合いにくいと言うのが定評だ。
成る程そうかもしれない。
しかし日本の会社と比べれば合理的であり,フェアであり、陰湿なところが無い。
日本の財閥系の会社、典型的な中小企業、そして外資の会社に勤務した経験からそう言える。
一頃は盛んに日本的経営がもてはやされた。
だが考えてみると、終身雇用、年功序列などは賃金の後払いで、成長期にある会社が将来良いことがあるぞと人参をぶら下げ、安い給料で従業員を目いっぱい働かせれば、利益も上がり成長するのは当たり前のことだ。
ところが全ての会社が無限に成長を続けることはありえないから、今日のごとく破綻をきたしてくると、平気で約束を反古にし、リストラと称し首切りや労働条件切り下げをすることになる。
そのくせ自分達経営者は平気で居座っているのが今日いたるところで見られる日本のの構図だ。
日本式経営は相互依存と信頼から成り立っているから、100%ではないにしても性善説の立場を取る。
だから曖昧な口約束が多く、書類にすることを嫌う。
だがこれほど強者の立場を有利にするものはない。
物事が旨く言っているときは良いが、問題が生じると、真っ先に従業員や下請けが被害を受ける。
私を信頼してとか、悪いようにはしないから、などと言う言葉(悪いことにそう言った本人はその時は本気にそう思っているのだ)を信じていたのが、やがて裏切られ泣き寝入りせざるを得なくなる。
いささか怪しく思い、条件全てを紙に書いたものにしてくれなどと要求しようものなら激怒され、立場が悪くなるし、そう固いことを言わなくても良いではないかと言われてそれをまた押し返せば喧嘩になる。
約束を守れれば個人的に感謝されるし、都合が悪くなれば反古にしてしまえばよい。
まことに強者に都合良く出来ているのだ。
これが外資だったら、勿論そうする、と言って書類にしてくれる。
自分の言ったことを書類にしないような者はビジネスマンとしての資格にかかわる。
世の中は状況が変わり約束が守り難くなることもあるから、そうならない為の歯止めは当然と言う考え方なのである。
彼等は自分も含めて性悪説なので、紙に書いておきましょうとなる。
その代わり交渉はドライかつシビアなものになる。
どちらがフェアかと言えばはっきり外資に軍配が上がる。
筆者が最後に勤務した会社は100%アメリカ資本の会社だった。
そこで経営陣は自分達でこの会社を買い取り独立しようという事になった。
必要とする資金は五十億ほどだったが、そのとき資金を貸してくれたのが当時の日本興業銀行、 出資してくれたのがプルデンシャル保険の投資会社だった。
このとき興銀は当初の予定以下の資金しか貸してくれず、役員の派遣を要求してきた。
これを断ると残りの金額を貸し渋った。
日本の感覚からすればさもありなんといったところだ。
我々の会社の社長はアメリカ人だったから、この辺のことが理解できずに激怒し、借金を返済して銀行を乗り換えてしまった。
天下の興銀(今は見る影も無いが)と絶縁するなどは前代未聞のことであったが、この辺が感覚の相違なのである。
一方、出資したプルデンシャルは、出資者契約書を作成し、我々(出資者兼経営者)と株の保有について互いに勝手なことをしないように細かな取り決めをした。
日本の場合通常出資に関してこのような取り決めはしない。
何か約束があっても契約書にしたりしないから土壇場では何でもやり放題だ。
このプルデンシャルの投資会社は企業を買収してからその会社の株式の公開によって利益を得るという点において、禿鷹ファンドと呼ばれるリップルウッドと同じだが、我々経営者に対してはあまり干渉せず、フェアであった。
少なくとも後にこの我々の会社を買収した日本の会社の手法とは天と地ほどの違いがあった。
ではリップルウッドはどうだろうか。
新生銀行(旧長銀)は立ち直って黒字の会社になったという。
今になって売却の条件が甘すぎた、政府が瑕疵担保条項をつけたのは怪しからん等と批判する人がいるが、これはお門違いではないか。
会社の買収に当たって隠された負債があればこれを売主が負担するのは当たり前なのだ。
第一当時は政治家の利権も絡んでいるらしいこの会社の引き受け手は日本に無く、三拝九拝して引き受けてもらったのではなかったか。
人員整理も行ったが、日本のリストラとの違いはさしてなく、破産するより余程マシだと思えば、無能な経営者がいなくなっただけ良かったではないか。
リストラといえば思われるのは日本の労働組合のだらしなさで、経営者と馴れ合って弱いものを搾取しているとしか考えられない。
雇用を守る為と称して労働条件改悪を呑み、会社の為と称して首切りを呑む。 銀行などは組合の幹部になるのは出世コースだそうだからあいた口がふさがらない。
昔の総評のように理屈抜きにまずストライキ、というのも困るが,もう少ししっかりすべきだ。
欧米では弱者であるブルーカラーは労働組合がしっかりしているせいか、かなり保護されている。
アメリカではレイオフでも後で雇用したものから解雇する。
日本のように中高年狙い撃ちなどということは無い、ましてやそうしておいて給料の安い若年者を雇用するなどの阿漕なことをすればアンフェアだとたちまちストライキが起こるだろう。
ヨーロッパはワークシェアリングで雇用を守ろうとする。
失業率の高さだけの問題ではないのだ。
日本の経営者や労働組合はもっと互いに切磋琢磨して馴れ合いや弱者いじめの世界から脱却して欲しい。
禿鷹などと言って外資を非難し、その影で内輪の世界に甘んじていれば、日本の経済の活力はいつまでたっても回復しないだろう。

以   上

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