| いよいよ本番の日を迎えた。練習はここまで頑張ってきてもうこれ以上やることはできないから、楽しんで演奏するだけだ。きっといい演奏会になることは確信が持てたが、最後まで心配だったのはお客さんの入りだ。もし、がらがらだったらどうしよう。せっかく、練習はうまくいっていい演奏になることは間違いないのだが、このお客の入りのことはその日にならないとわからない。 ゲネプロを終えて私は、楽屋とホールの入り口を行ったり来たりして落ち着かなかった。 本番30分前になると、入り口から長ーい列が出来始めた。これで一安心。どきどきしながら開演時間を待った。 当日は珈琲屋「末次」の佐野さんが受付を一手に引き受けてくれていた。楽屋からそろそろ開演したいということを館内の電話で佐野さんに尋ねた。 「まだまだお客さんが続々と来ているから開演を少し待って」 開演時間過ぎてもまだたくさんの人が来ているらしい。なかなかお客の列が切れずに結局コンサートが始まったのは異例の15分遅れ。 ステージに出てみると超超満員!!立ち見もたくさんいるようだ。(結局1800の席に2200人入った。後日消防法違反ということで県立劇場に呼び出され始末書を書かされたが、書く私もニコニコ、対応された劇場職員の岩永さんも「大成功おめでとう」ということでニコニコ。始末書を書くということは、要するに怒られるということだが、書く方も書かせる方も幸せだった。たった一枚始末書書くだけでいいのならお安いご用だ) 演奏会はとにかく大成功。一曲目のベートーヴェンの第2交響曲はブラームスの二重協奏曲に比べると話題の面でも地味で、ベルリン・フィルのソリストを聴くための前座という雰囲気があったがこれもまた大好評。聴いた人の話では、オケ全員が確信を持って弾いていたとのこと。このベートーヴェンだけでも事件的な名演だった。 ブラームスは当然の超名演。2200人、つまり立ち見が400人のお客さんも一体となってブラームスの音楽を堪能した。 あの二重協奏曲はとんでもない名曲だと思う。ブラームスの作品の中では特にポピュラーとはいえないが、晩年の作品らしく内容の深さではブラームスの作品の中でもトップクラスだと思う。第2楽章の深い祈りに似た歌を安永さんボルヴィツキーの二人が歌い尽くした。 アンコールでブラームスの2楽章をやって、感動のうちにコンサートが終わろうとしていたとき思いがけないことが起こった。安永さんたちがカーテンコールを繰り返しているとき、最後に私のところに握手しに来てくれたのだ。コンマスでなくチェロの私のところに来てくれたのだ。これまでの大変な努力がいっぺんにふっとぶ最高の出来事だった。 |