序章 パリ大好き!! 第1章 パリの街 第2章 パリのレストラン 第3章 オペラ・コンサート
第4章 パリの観光 第5章 パリの美術館 第6章 フランス語 第7章 ミシュラン
第8章 飛行機の乗り方 第9章 レンタカーの旅 第10章 パリのホテル
第11章 パリのお買い物 第12章 パリの乗り物 第13章 お金、クレジットカード
第14章 核実験 第15章 たこやき 第16章 旅の本

第6章 フランス語

 「フランス人って、英語を知っていてもフランス語にほこりを持っているので、日本人にも英語をしゃべらない。」という話は私もときどき聞いていたし、今でもそのように私に聞いてくる人も絶えない。でも少なくとも私の経験では全然そうは思わない。普通の観光客が出会うフランス人、つまりレストランでとかホテルで英語は当たり前のように通じる。ホテルで英語をしゃべらないおばさんがいたら、その人はきっと学生時代にあまり勉強しなかっただけではないか。フランス人ってそんなに意地悪ではないと思う。だいいちお店の人が英語しゃべらなかったら、商売にならないだろうからね。そんなバカなことはしないでしょう。

 でも英語をしゃべれないホテルマンもいるし、しゃべっても日本の中学生のほうがもっと上手だろうな、とおもうような人も結構いる。それで、やっぱりフランスを本当に楽しむためには、自分がある程度フランス語ができるという事が必要になってくると思う。学生の格安旅行のガイドブックには、言葉ができなくても旅行は十分にできる、と書いてある。確かに私の22歳の時の旅行はそうだった。フランス語ドイツ語なんて一言もできなかったが、別に飢えることもなく、野宿することもなく40日間の旅行ができた。だけれども言葉はできた方がいいに決まってる。外国語が日常会話程度でもはなせるようになるためには相当な努力がいると思う。でもカタコトの言葉ができるだけで、旅は100倍楽しくなる。外国語を勉強するのは大変、しかし少々大変な思いをしても言葉をある程度できるようにしてからフランスに行くと、その大変なおもい以上のものが得られると私は思う。

 私がフランス語を勉強してみようと思ったのは、実はそうたいそうな理由からではない。私がまだ全然言葉がわからなかった頃、ドイツやフランスでそれぞれの国の言葉を自由に操る日本人に数多く出会った。仕事をしている人や音楽で留学している人たちと会うことが多かったが、当たり前とはいえ彼らはドイツ語を使ってレストランで食事をし、フランス語を使ってコーヒーを飲んでいた。その姿がただただかっこよかった。時々、日本人で知らなかったもの同志お茶を飲むような機会があった。ほとんど言葉がわからないでいるものの中で、たったひとりフランス語でコーヒーやワインを注文する姿はほれぼれするほどかっこよかった。そこで私は単純に思った。「これはフランス語ができたらきっと女の子にもてる!」
 当時学生の卒業旅行がはやり始めていて、2〜3月のヨーロッパにはたくさんの日本人の大学生がいた。その中には英語以外ができる人はほとんどいなかったとおもう。そんな中にもたまに言葉が堪能な人がいて、回りからの尊敬のまなざしを浴びていた。きっと女性から見ればフランス語が話せる男はステキ!と思っただろうし、男性から見ればドイツ語でドイツ人と話す女の子は何か知的で憧れるものがあったと思う。
 それで私も女の子からもてたいという一心で、フランス語の勉強を始めたのだった。

 はじめは当然のように一番安く勉強できるということで、NHKのラジオで始めた。テキストを買って、録音して車の中で聞くのだが、始めたのがラジオ講座の新しいシリーズがはじまって2カ月目だったので、ある程度内容は進んでいたのでいきなり聞く私はかなり苦戦した。幸いだったのはラジオ講座の先生がとっても良かったという事。中井珠子先生に私のフランス語はじめに出会ったことは非常な幸運だったと思う。「意味は何となくわかればいいんですよ。」とか、「発音も日本語的になってしまっても、とりあえずは通じるからあまり心配しないでいいですよ。」とか初心者の私には良く勇気づけられるような言葉を発してくれた。それで楽しく勉強が続けられたと思う。
 私もでもただ中井先生に甘えていたわけではない。ある時車の中でカセットに録音したものを聞いていて、ほんの5秒くらいの短いフレーズの意味がわからなかった。それでそのフレーズを繰り返し繰り返し20回以上同じところを聞き返してやっとわかったという経験もある。やっと言っていることがわかって、車を止めてテキストを見て確かめるとまさにそのとおりだった。フランス語を始めた動機は何であれ、結局フランス語の勉強そのものがおもしろくなってきたのだった。

 語学の勉強ははじめは大変だが、やっているとおもしろいものだ。少しでも話せるようになって、それが実際に通じる経験をすると、もうたまらない。フランス語を少し勉強して、それがレストランやホテル、買い物の時などに役にたつときの快感は一度味わうとくせになるほどおもしろい。そしてつけ加えると、その時自分の知っている人に見られているとまた喜びは増す。英語でもそうだが、フランス語やドイツ語になると話せる人がうんと少なくなるために、それができると人々から尊敬のまなざしをえることは確実だ。そして簡単なフランス語が通じると、次はもっと勉強してもっと上手になろうと自然に思う。この繰り返しで私は勉強してきたし、これからもやっていくと思う。
 パリのレストランでフランス語で注文する快感をあなたも味わってほしい。

 私はこの調子で40歳になるまでには、カタコトでもいいから10カ国語ができるようになりたいと思っている。フランス語、英語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、中国語、韓国語、スペイン語、そして当然日本語。これだけ言葉ができるようになっての旅行は何と楽しいことだろう。今からワクワクしてくる。
 

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