特別企画ベルリン・フィル来日公演

 1998年ベルリン・フィルの来日公演。私は幸運なことにその全プログラムを聴くことができることになった。そのレポートをここで報告していきます。

 なおcon graziaではもっともっと大規模な企画がされていますから、そちらもぜひご覧下さい。


98.10.23
 ベルリン・フィルを東京・横浜で聴いてきた。素晴らしかった。楽しかった。
 やはり世界のスーパーオケは聴くべきだ。それに何となくだけど、最近のアバドとベルリン・フィルは一段と充実してきているのでは?2年前の第九と復活より自在に音楽をしているような(なんとなくですが)感じがした。

 今回はサントリーホールに隣接している全日空ホテルに泊まった。あわよくばエレベータの中でアバドにでも会えたりしたらサインもらおうと思ったのだ。スウェーデンの合唱団の人とは一回エレベーターで一緒になった。朝食でもだれとも出会わない。後でYUKOさんから聞いたが、ベルリン・フィルはオークラに泊まっていたのだ。ホールの隣だから全日空ホテルと勝手に思った私が甘かった。でも、21日は雨だったのでホテルのすぐ隣がホールというのはとても便利だった。

 22日は横浜公演を聴くことだけが目的だったので午前中はずーっと寝ていて、12時からは部屋で映画「FACE OFF」をみた。おもしろかった。今まではコンサートを聴きに東京に出てくると、昼間は誰かと会ったりどこかに出かけたりしていたが今回はコンサートに集中ということで、ゆっくり過ごしたがこれがとてもよかった。5時頃横浜に着き中華街でおいしい中華粥を食べ、ホール横のファミレスでコーヒーを飲みながら1時間ほど時間をつぶした。ベルリン・フィルの団員も数人来てスパゲッティなどを食べていた。
 ベルリン・フィルのファーストバイオリンにヒラリー・クリントンに似た美人(いつも黒ヘヤーバンドをしている)がいるが、彼女も見かけて幸せだった。

 今回は22日の横浜公演の後con graziaの山下侑子さん夫妻と、そのcon graziaの中でご活躍の作曲家高島豊さん、それから私の友人の前川夫妻と食事に行けたのが、コンサートに加えて楽しい出来事だった。アバド、ベルリン・フィルの話を聞くとYUKOさんがいかに入れ込んでいるかがHPを見る以上に伝わってきた。人をここまで夢中にする音楽、アバド、ベルリン・フィルもすごいもんだ。
 飲みに行った店では隣にドイツ人がいたが、ひょんなことから話をすることになって高島さんの流暢なドイツ語のおかげでちょっとした国際交流もできてまた楽しかった。
 こういうことをたくさん経験していきたいな。

左から前川(妻)、山下夫婦、坂本一生、Pocknさん

 22日23日とも会場で偶然NHK交響楽団のビオラ奏者の小野富士(おのひさし)さんと会ってしまった。実は小野さんとは今日(24日)のN響熊本公演のあと飲みに行くことになっていたのでお互いびっくり。さすがの小野さんもベルリン・フィルには感嘆の声しかないみたい。くわしくは今夜聞けるので、何かおもしろい話題があったら紹介します。
 オケの人達もこうやっていいものを聴きに来て吸収しようとしているのだ。音楽というのは上を見たらきりがないが、でもそこを常に目指してやっていくからこそ新しい感動を作り出せるのだと思う。世界中のオケがもっともっとよくなっていけばこれからますます楽しい世界になるな。21世紀を楽しみに待とう。

 今回の3つのプログラムでどれが一番よかったか。私は最初に聴いたモーツァルトとブルックナーのプログラム。そのモーツァルトが一番かも知れない。やはりモーツァルトは群を抜いた天才だし、演奏もまったくもって素晴らしかった。
 私はもしもう一度だけ聴きにいけるとしたら、このプログラムを選ぶかな。

以下はcon graziaに投稿したものです。

21日 サントリーホール
 前半のシューマンはいまひとつの感がありました。別にアバドとベルリン・フィルが悪い訳ではないと思います。ひとつはマンフレッド序曲が分かりにくいということ。もうひとつは何人かの人の意見どおり、ピリスのピアノが物足りなかったということが原因です。

 でも、後半はベルリン・フィルの威力全開で、オーケストラの楽しみを極限まで味わうことができました。
 夜想曲はアバドが子供のころに初めて生のオーケストラを聴いたときの曲で、指揮者になろうと決めた因縁の曲。1曲目は木管の綾がうつくしい。2曲目の「祭」での名人芸、それと溢れんばかりの生命力には息を飲みました。3曲目の女性合唱のうつくしいこと!ベルリン・フィルのドビュッシーもいいものですねー。

 そして、最後の「ラ・ヴァルス」。パワーだけではどうしようもない、おしゃれなセンスが要求されるこの曲でアバドとベルリン・フィルは期待どおりの名演を聴かせてくれたと思います。確かにワルツということで言えばウィーン・フィルの方が本家でしょうけれど、「ラ・ヴァルス」はウィンナ・ワルツそのものではなくウィンナ・ワルツ風フランス音楽です。管弦楽法の大家ラヴェルの名作としてきけば、ベルリン・フィル、文句の付けようがありません。
 弦楽器も管楽器も歌うところは歌い、テクニックが必要なところではありあまるテクニックを披露し、それぞれのメンバーが音楽をやりほうだいにやっていながらアンサンブルは水も漏らさぬ完璧さ。
 ベルリン・フィルの魅力を味わうにもっとも適した曲のひとつでしょうね。堪能しました。

 アンコールの「火の鳥」の終わりの部分。このとても美しい傑作をこれ以上ないくらい美しく聴かせてくれました。ファゴット、ホルンのソロはあれこそ世界一だ。


22日 横浜みなとみらいホール

 アバドのマーラー。前回の2番が圧倒的な印象だったので今回の3つのプログラムでは一番期待していました。
 長い長い曲で、聴くのは疲れたがたとえようのない充実感を味わいました。もともと私はマーラーの交響曲ではこの3番が一番好きなのです。マーラーがこれを作曲した場所の美しい自然が全部音楽になっている、と思います。
 1楽章の緊張感はただごとではありませんでしたね。30分以上もかかる楽章を一気に聴かせてしまいました。あまりの緊張感に、ここで15分間くらいの休憩でもほしいと思いました。2楽章、3楽章のマーラーならではの美しい楽章ですが、ベルリン・フィルできくと美しい中に凛としたものがピーンと張りつめている。
 4楽章のソロの一声。豊かな美声で一瞬にして聴衆の心をとらえる。この楽章に限らずコンマスのソロがたくさん出てくるが、安永徹さん特にこの4楽章のソロは泣かせた。20日にお父さんののお葬式があったばかり。天上にもきっと届いたに違いない。
 5楽章のこどもの合唱の第一声。前の楽章からがらりと世界を変える強いインパクトがありました。日本のこどももすばらしい。
 6楽章については書くことができない。それまでの5つの楽章をふまえたうえで、さらにとんでもない高みに達した音楽。ブルックナーより宗教的か?

 最後の方ではアバドとベルリン・フィルが神々しく見えてきてこの世のものとも思われませんでした。すばらしい指揮者だしオーケストラだし、それに負けない本当にすばらしい曲でした。


98.10.15

 今日もまたアクロス福岡に行った。ヨーヨーマを聴いた。とっても楽しみにしていたが、全然だめ。これもすべてベルリン・フィルのせいだ。2日前にあんなすごいものを聴いてしまったらさすがのヨーヨーマもかなわない。ブラームスのチェロソナタを聴きながらモーツァルトのフルートとハープの協奏曲が思い出される始末。相当重症のベルリン・フィル病にかかってしまった。
 やはり自分が聴いたプログラムには愛着がわくもので今のところ今回のプログラムではモーツァルトとブルックナーのプログラムが最高と思っている。NHKの放送がマーラープロと聞き、なぜか口惜しい気持ちがしてしまう。それにしても素晴らしかった。きのうは一日モーツァルトとブルックナーの音楽の断片が頭に浮かんでは消え、まるで学生時代の恋心だと自分で苦笑した。音楽会でこういう気持ちを味わうのは本当にしばらくぶりだ。昔はよくこんな思いをしていたのに。

 しばらくはモーツァルトのフルートとハープの協奏曲はCDで聴かないぞと自分で勝手にきのう誓ったが、今日は福岡に行くJRの中でパユとアバド=ベルリン・フィルの録音を聴いてしまった。やっぱりいい。コンサート聴く前には気づかなかったことにたくさん気づかされた。この録音でも彼らは積極的に実にたくさんの表現をやっているではないか。以前聴いたときにそこまで聴けなかったのは聴く姿勢が悪かったのだろうな。やはり音楽は真剣に聴いた方がおもしろい。また改めてそう思わされた。
 さてブルックナーだが、この大物はいつだれの演奏で聴こうか?やはりアバドとウィーン・フィルかな?今度はどう聞こえるか楽しみだ。


98.10.14
 ベルリン・フィル、11日にアメリカから15時間かけてやってきて疲れて演奏なんかやりたくない、と聞いていたのにあの素晴らしさ。やはり私はあのオケ大好きです。
 どうも、来日公演に限ってですが、私がここ3年ほど聴いた限りではウィーン・フィルよりベルリン・フィルの方がかなりいい演奏をするようです。
 オケの実力としてはどちらも、持ち味がまったく違い比較することもできないと思いますが、演奏会にかける姿勢ということではどうしてもベルリン・フィルの方が真剣さが伝わってくるのです。
 この問題は、微妙なのでもうふれません。とにかくベルリン・フィルの来日公演を楽しみましょう。

以下はcon graziaに投稿したものです。

10月13日(火)ゲネプロの感想
 福岡は学生に限り、しかも限定200人だけリハーサルを公開しました。私は学生ではありませんが何とか潜り込ませていただきました。
 おととい(11日)の夜にニューヨーク公演から来たわけですが、15時間飛行機に乗り続けて大変だったそうです。一旦札幌に降りましたが空港に降りると入国になるため給油時間も飛行機から降りられなかったのです。また、ホルンのトップ(名前は分からない)がニューヨークにパスポートを忘れていまだに入国できていないらしいです。今夜の本番には間に合わないだろうという話しも聞きました。

 ところでリハーサルですが、ブルックナーから始まりましたが疲れを考慮してか簡単に部分部分をつまむだけの練習で40分で終わってしまいました。そして、公開リハーサルはここまで、ということでモーツァルトは聴けませんでした。それでもベルリン・フィル。トゥッティの迫力はさすがだし、管楽器のソロはうつくしい。こま切れの練習のため音楽的にはあまり楽しめませんでしたが、数々のスタープレーヤー、そして、アバドの練習風景を直に見られただけでも感激ものです。
 おもしろかったのは、練習が始まる前にオケのメンバー数人を一人ずつみんなで拍手してお祝いしていたことです。誕生日のお祝いをしているような雰囲気でしたがなんだったのかな?とにかくアットホームで暖かい雰囲気でした。

 さて今回のベルリン・フィル来日公演で初めて福岡が選ばれた裏話を聞くことができました。アバドを交えて来日公演のプランを立てているときに候補地のリストに福岡があるのを見つけたアバド、「この福岡というのはいったい日本のどこにあるんだ?何故そんな所がリストにあがっているんだ?」こう言ったそうです。そこで「福岡はTORU(安永さん)が生まれた町だから」という一声。そしたらアバド、「じゃー行こうよ!」ということで決まったそうです。(ある確かな筋からの情報)


10月13日(火)本番の感想
やってくれました!ベルリン・フィル。もう最高!
まずブルックナー。私はブルックナーが苦手で特にこの5番はつかみどころのない印象しかありませんでした。 今回のベルリン・フィル来日にそなえて何回かCDで聴いて勉強しましたが、 今日の演奏はそんなものをいっぺんで吹き飛ばす説得力のあるものでした。
友達でブルックナーにうるさい男にいわせるとアバドは世に知られたブルックナー指揮者とはまったく違うそうですが、 とにかくよく歌うし一瞬も飽きさせません。 2楽章の弦楽器の分厚い歌(こんな表現でわかってもらえるか?)に入る前の間では、 アバド、オケそれに会場のお客さんも一緒に息を吸い込んで中身の濃い音楽が展開されていました。 残りの楽章も圧倒的で飛行機の疲れなど全く感じられませんでした。

そしてまたモーツァルトのフルートとハープの協奏曲が最高!!パユって天才ですね。 この魅力的な、しかしそれゆえに何回も何回も聴いたこの協奏曲から新しい魅力をいたるところで引き出してくれました。 疑い無く私が聴いた中で今夜の演奏が最高です。 アバド=ベルリン・フィルのバックも何と音楽的だったでしょうか。 モーツァルトのスコアは単純に書いてあってダイナミックも最小限しか書いてありません。 アバド=ベルリン・フィルは随所でクレシェンドしたり、2楽章では最弱音でとても緊張感のある瞬間をつくりだしだり、 いろんな細工をやっていましたが、それが全て全く自然なために聴いているほうはその細工が耳につきません。 ただ音楽が非常な生命力を持って聞こえるだけです。 アバドのモーツァルトもいいんですねー。

しかし、この協奏曲、いいですね。 モーツァルトの数ある名曲の中でもトップクラスの美しさだと思います。 その名曲を今日のような演奏で聴いていると、永遠にこの時間が続いてほしいと願わずにはいられませんでした。

アンコールになんと「カルメン」から3幕への前奏曲をやってくれました。残りふたつのプログラムがとっても楽しみになってきました。
 

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