◆あの、夏の日−とんでろじいちゃん−◆
(1999日本)

大林監督の、新尾道三部作の3作目。
原作は、児童文学の山中亘「とんでろ じいちゃん」
このコンビは、「転校生」「はるか、ノスタルジイ」などでも、成功して
いますが、今度も、大成功だったと思います。

少年が、ぼけたと周りに思われているおじいちゃんの様子を見に、尾道に
アルバイトで出かけていった夏休みの物語。

いつもそうなのですが、監督は、尾道を、とっても美しく撮りますね。
とっても、尾道が好きなのだなぁ、というのが、ものすごく伝わってきます。
そんなふうに撮ってもらえる街は、本当に幸せですね。

そして、物語。
おじいちゃんは、ときどき、みょうなことを言ったり、したりするのは確か。
でも、小林桂樹さん演じるおじいちゃんは、どうしても、ぼけてるようには
見えないのですよね。不思議な呪文を唱えては、孫のゆーたを、いろんな
ところに連れて行く。そこには、古きよき時代の風景があって、それこそが、
本当のありうべき姿なのではないかと思えるほど。
このへんで、おじいちゃんのメガネが、実に上手に使われていました。

やがて、おじいちゃんの子供時代の思い出したくない思い出が明らかになったり、
淡い思い出が浮かび上がってきたりしていきます。
ほらたこの太吉。玉虫。やくざの弥勒様。

おじいちゃんの家の近所の長恵寺の娘。みかり。彼女は、小説では、由太とほぼ
同じ年齢ということになっていますが、映画では、ちょっと上の年齢になって
いました。ちょうど、年上の女性に憧れる少年にぴったりなぐらい。
こういうところの扱いが、大林監督って、とてもうまいですね。

そんな中、原作には出てこなくて、映画ではとっても重要な位置を占める少女が
出てきます。おじいちゃんのとなえる不思議な呪文と同じ歌を好きだったという
おたまちゃん。かげろうの少女。少年の心に残る憧れのヒト。

そして、おじいちゃんが、ぼけてしまったと心配するおばあちゃん。
おじいちゃんの名前は、フルネームで出てくるのに、おばあちゃんは、
あくまでも「おばあちゃん」でしかありません。でも、終盤の、たった一言で、
おばあちゃんが、心の中にしまっている様々な思いが伝わってくる気がしました。
それだけに、ラスト・シーンは、ものすごくほっとしました。
やっぱり、そうでなくては、です。

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