◆インビジブル◆
(HOLLOW MAN 2000年 アメリカ)
監督:ポール・バーホーベン
脚本:アンドリュー・W・マーロウ
出演:エリザベス・シュー、ケビン・ベーコン、ジョシュ・ブローリン他
かなり怖かった。
冒頭、透明にする実験に成功した「見えない」動物たち。温度感知センサーで、
そこになんの動物がいて、どう動いてるかは分かるものの、いいえ、むしろ、
分かるだけに、見えないことに不気味さが増していたかも。
それに、感知センサーつきのゴーグルをつけてゴリラ(かヒヒのようなもの)に近づく
シーンは、実際のその動物の動きが見えないだけに、けっこう緊張しました。
やがて、薬を注射された被験動物に現れた変化。
驚きです。
まず、血管を注入された薬が駆け巡り、やがて、体の内部から、可視状態に
なっていく。血管、骨、内臓、筋肉、そして外皮。
その全てが、恐ろしいほどリアル。なんだか、生物の教科書か人体模型でも
見てるみたい。しかも、ものすごく苦しそう・・・。ゴリラの咆哮が・・・。
で、動物実験が成功したら、その報告をしないとならないって言うのに、彼らは、
いえ、セバスチャン・ケイン博士は、野心に燃えちゃって、もう1つ実績を
あげてから報告しようなんて考えちゃうわけ。
やばい、やばいよな〜。きみたち〜、そんな言葉にのっちゃ、いけないのよぉ。
なのに、やっぱり始まる人体実験。
というか、ケイン博士は、自分を被験者にしろとみんなに詰め寄っちゃう。
そして、透明になる実験は無事成功。
で、うまいこと透明になったケイン博士。最初はグロッキーで大人しいものの
だんだん、いたずらっ気が出てきちゃう。
でも、意外と言ったら怒られるかな、ここまでのケイン博士、まぁ、透明になったら
そのぐらいはやりたいかな、という程度のいたずらに留まっていて、まだ普通。
問題は、いざ、彼を元に戻そうとしたときの実験が不成功に終わったこと。
動物には効いた薬が、彼に対しては、途中で効力を失い、元の透明人間に
戻ってしまう。
ここからが、地獄の始まり。
ケインは、最初のうちこそ、仲間が、自分を元に戻す薬を作り上げてくれると
信じて大人しくしていたものの、だんだん、やることが凶悪に・・・。
でも、この過程を見ていると、ケインを本当の敵、悪者とは思えなかったのです。
透明な姿のまま、いつ、元の姿に戻れるかも分からない。むしろ、戻れない確率の
方が高いのではないかと思ったとき、多少の気晴らしは欲しても当たり前。
問題は、それに、どこでブレーキをかけるか。
相手から見えない=無敵である=神のような存在である
という思い上がりと、どうやって闘うか。
ケインは、その闘いを、早々と放棄してしまいましたが・・・。
でも、自分がそこにいるのに、いないかのように、単なる実験材料であるかのように
仲間に話題にされてしまうというのは、それまで、自分がリーダーとして実験を
引っ張ってきたケインには、いっそう、耐え難いものであったことは想像がつきます。
だから、悲しいのです。
そうやって、心を破壊され、自分の存在を、仲間が上に報告しようとしたとき、
そうはさせじとあらゆる手段を尽くしてしまった彼の存在が。
人間が、モラルをもって行動するとき、少なくとも相手と同じ土俵に立っている
必要があるのではないでしょうか。立場の上下はともかく、まったく違った土俵に
いては、モラルも働かないのかもしれません。
いつしかケインにとって、自分こそ神に近いものであり、自分以外の人間が、
その意に反する行動を取るなんて許されないことだと思い始めたのです。
恐ろしいことです。
そうしなければ、いつ、透明状態から開放されるのかも分からず、精神の安定を
保つことができなかったのかもしれないと考えると、本当に悲しい存在であると
言わざるをえません。
透明になった彼は、マスクをつけたりもしますが、細かい表情は見えません。
それが、いっそう、悲しくて。
彼の中で、一瞬でも、そうなってしまう前の自分が目を覚ますことはないのでしょうか。
なんだか、徐々に人食い虎になっていく男を思い出してしまいました。
(2000.10.7 パラマウント・ユニバーサル・シネマ11)
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