◆黄泉がえり◆
(2003年 日本)


─ THE ORIGINAL BOOK ──────────────────────

『黄泉がえり』(ISBN4-10-149004-X))
 作者:梶尾真治
 出版:新潮文庫

─ STAFF&CAST ───────────────────────────

 監督:塩田明彦
 脚本:塩田明彦、犬童一心、斉藤ひろし
 出演:草なぎ剛、竹内結子、石田ゆりこ、哀川翔、
   山本圭壱、田中邦衛他

─ COMMENT ─────────────────────────────


大事な人が死んでしまったら、帰ってきてほしいと願ってしまう。
叶わないと知りながら、どうしても、願わずにいられない。
それは、止められない心。

それは、叶わない願いのはず、、、
それが、ある日、突然、帰って来たとしたら?
一瞬の戸惑いの後、こみあげる幸せ。
そして?

川田平太は、熊本で突如起こった「黄泉がえり」現象の調査のために、
東京から久々の帰郷をした厚生労働省の役人。
原作では、彼は、地元に暮す新聞記者。
そして、彼に絡んでのもっと大きな変更は、幼馴染の「葵」の存在。
死んだ恋人の俊介を忘れられないでいる葵を、
ずっと思い続けている平太。
想いを告げることもなく、ただただ、見守り、見詰めるだけの平太。
葵が彼を呼ぶとき、「へいた」でなく「ヘータ」って感じで○。

原作では、もっと、現実的なというか、社会的な動きも
描いていますが、そういうところをきれいに省いて、
美しい物語に仕上がっています。

それから、大きな変更が加えられているのが、
女手一つで娘を育てながらラーメン屋を経営する玲子。
職業も、子供の年齢も性別も変わっている上に、
中岡英也との関係も。
映画では、数年前に死んだ夫のことを、そろそろ吹っ切り、
真面目で誠実に自分を思ってくれる秀也のことを
とても大切に思っている感じなのに、
原作では、ひたすら夫の周平を恋い続けているのですから。

だから、夫周平が黄泉がえって来たことは、とても複雑。
もちろん、まずあるのは、夫が帰ってきてくれたことへの歓喜。
そんな2人の姿を見る秀也の心情は、、、
やっと、自分の方を向いてくれるかと思っていた女性の元に、
死んだ夫が戻ってきてしまうなんて。
玲子の幸せを、願わないわけはない。
でも、でも!
不器用な英也が、不器用なりに誠実に生きてきて、
やっと手にしかけた幸せだったのに。

そんな英也の元へも、黄泉がえってきたものがいます。
子供の頃に死んだ兄の優一。
幼い頃に両親と死別し、優一が風邪をこじらせて
逝ってしまうまで、2人で手を取り合って生きた兄優一。
黄泉がえった人は、死んだ時の姿で戻ってくるため、
優一は15歳、英也の年齢の半分ぐらいであるのに、
並んでいると、優一の方が、ちゃんと年上に見えるのが不思議。

そんな英也と玲子の様子を見る周平の表情も複雑。
愛しい者たちの元へ帰ってきたというのに、
自分では知らないうちに過ぎた時間の間に、
彼らには、すでに新しい生活ができあがっているなんて。
誰も、悪くはないのにね。
嬉しいはずのことを、喜んでだけはいられないなんて。

葵のカウンセリングをする精神科の医師。
幼い頃に神隠しにあった息子を思う老母。
長年連れ添った妻を失い、生きる気力を失った夫。

帰って来る死者、来ない死者。
その違いは、いったい、どこにあるのか?

大事な人を失って、まだ、その人が戻ってきてくれない。
そういう人たちは、幸せにわく隣の人を、
どんな思いで見ているのか、、、
どうして?どうして?どうして!!

みんなの想いが、様々に交錯する中、近付いてくるX−DAY。
人気歌手RUIの野外ライブに向けて。
なんて心に響く歌声。そしてメロディ、言の葉たち。

もう、涙が止まりませんでした。
映画ならではの、美しい音と光にあおられるみたいに、
感情があふれて、あふれて。

後に、優しい想いが残る。そんな感じ。

(2003.1.19 東宝公楽)


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