◆天国までの百マイル◆
(2000年 日本)
― THE ORIGINAL BOOK
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『天国までの百マイル』
作者:浅田次郎
出版:朝日文庫 ISBN4-02-264248-3
― STAFF & CAST
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監督:早川喜貴
脚本:田中陽造
出演:時任三郎、八千草薫、大竹しのぶ、筧利夫、柄本明他
― SUMMARY
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安男は、2年前に会社を潰し、妻子にも逃げられ、給料は全て妻子の養育費。
ホステスのマリに食べさせてもらって生活している。
だが、心臓の発作で倒れた母を百マイルを超えて、ただ1人、母の手術のできる
医者の元に運んでいくことを決心する。
― COMMENT
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後半は、もう、ボロボロに涙がこぼれて、ぬぐっても、ぬぐってもあふれてきました。
食うや食わずでやさぐれた生活をしていた安男。
それが、母の発作をきっかけに、一念発起して、また、立ち直ろうとする。
私は、その安男よりも、むしろ、周りの人間の温かさに泣けました。
母の主治医である内科医の藤本。
百マイル保つ心臓を作るために心血を注いでくれたドクター。
旅立つ安男に贈った言葉の、なんて心がこもっていたことか。
かつて、手術に踏み切れず、大事な人を失ったことへの痛み。
それが、彼をして安男に共感させたのでしょう。
安男には、同じ傷を負ってほしくないと。
それから、高利貸しの片山。
口では、安男をめいっぱい責めますが、安男がしようとしていることを知ると、
信じられないぐらい、思いやりを示します。
特に、母親に。
安男の運転する車で、少しでも楽になるように心を配って、
実際に体を動かしてくれる。
いかにもやくざな金貸しなのに、人情にあふれたいい男だね。
で、また、筧利夫がそういうのにぴったりなんだもの。
「踊る大捜査線」での、エリート意識ぷんぷんさせながら、
それだけでないものを持った男も、
「スペース・トラベラーズ」で、奥さんと派手にけんかしながら
「ホイなんていやだ」ってごねてたくせに、ころっと豹変する男も、
どっちもすごく好きですが、今度の片山は、もっといい。
出番はすごく短いですが、忘れられません。
それだけに、その前に安男が電話をかけた弁護士の野田の冷血漢ぶりが
際立つのですよね。原作では、そこまで言ってないのですが、
映画でのあの一言はあんまりだわ。
原作を読んで、野田が、いかに、景気のよかった安男にくっついていい思いを
したかを知ると、いっそう、そう思います。
もう、この手でけちょんけちょんにしてやりたい。
人間として、何か欠けてるもの、あいつには。
で、その片山の言った「あんたは甘い。銭のありがたみが分かってない」ってのは、
まさにそのとおり。
私は、意地を張って、プライドを守って、わざわざ苦しい思いをしてる人が
キライではありません。むしろ、積極的に応援したい気持ちになることが多いです。
でも、安男は、はっきり言って、ばかの甘ったれにしか見えません。
いくら、兄や姉たちが、母親の手術に反対してると言ったって、安男がどうしても
そうするからと言って、必死で援助を求めれば、お金は出すでしょう。
原作では、むしろ積極的に、金だけは出すがほかのことは任せると言っています。
(映画では、このへん、どうだったか、失念)
それなのに、安男は、変な意地を張って、母親に、肉体的にも精神的にも
つらい思いをさせているのです。
本当に母親が大事なら、他人に甘えてお金を借りるより先に、兄弟に頭を下げて、
お金を工面すべきところです。そうやって、少しでも楽な移送手段を取るべきでしょう。
ここで、兄や姉には頼らないって突っ張るのは、自分の意地のためだけにしか
見えなくて、全然、共感できませんでした。
第一、安男は、同級生に無理して雇ってもらっているのに、仕事もしないで公園の
ベンチで寝てるような奴ですから。
母親が大事だったら、そのために、下げたくない頭も下げるのが本当だと思います。
(いや、そうすると、物語が始まんないんですけどね(笑))
それから、分からないのが、離婚に際して、元妻英子と子供に養育費として給料の
手取り分の全てを渡さなければならないような状況。
いくらなんでも、それはないでしょう。
英子は、まだ、充分に働ける年齢で、しかも、子供の養育の責任の半分は
母親である彼女にだってあるでしょう。
いい服を着て、いい学校に行かせるためのお金。法外な金額ですよね。
原作では、そういった、学校とかのお金だという記述がありますが、
映画では、確かに英子は常に身奇麗にしているものの、なんで、養育費が
そんなにかかっているのか、分かりませんでした。
そんな金額を受け入れてる安男もなんだか変。
その挙句に、惚れてもない女のアパートに転がり込んで。
夫が破産したからって逃げ出すくせに、そんな法外な養育費を求めるなんて、
ものすごく身勝手な女にしか見えません。
そんな英子をいい嫁だという安男の母親も謎。
でも、それを除けば、安男の母親って言うのは本当にすごい女性。
病床にありながら、他の誰よりも1番強いのかもしれません。
40歳になっても、あいかわらず頼りない安男をときに叱咤しそきに慰撫しながら
百マイルの道を走り始めるのですから。
早くに夫を亡くし、女手1つで子供4人を育て上げるのは、並大抵の苦労では
なかったでしょう。
でも、そんな険しい道を歩んできながら、それでいて、なおたおやかな女性。
しなやかに、折れることなく。
病床から、笑顔でVサインを送るその強さ。
2人が、旅の途中で立ち寄ったドライブ・インのトラック運転手たち。
荒くれ男たちは、思いのほか親切で気のいい男たちでした。
そして、ドクター曽我。
天才的な腕を持つ外科医。
柄本明が、ほんと、これ以上ないぐらいはまってました。
彼が天才だということ、疑うことなく信じられます。
それから、もちろん、マリ。
給料を全て養育費にしてしまう安男の面倒を見ているホステスのマリ。
美しく、お人よしで、男運の悪いマリ。
一途に、不器用に安男を想う様は、胸が痛くて、痛くて。
彼女の語る過去が、なんとも言いようのないものであるだけに、ぜひ、
幸せになってほしい。
原作では、ものすごく肥った女性として描かれていますが、大竹しのぶが、
見事にはまっていました。
ちょっと人がよくって、頭のあんまりよくなさそうな、くずれた感じの
しゃべり方。
ああ、マリだぁ、って思いました。
1番の泣かせどころは彼女でした。
幸せに、なってほしいな。
本当に、安男を取り巻く人たちの温かさに、泣いて、泣いて、泣きまくりました。
主役であるはずの人物に感情移入できなくても、あんなに泣けるものなのですね。
そんなダメ男の安男が、母親を助け、自分も立ち直るための旅。
やっぱり、あの距離は、ああやって走る必要があったのかもしれません。
(バカだと思うけど)
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