◆大誘拐 RAINBOW KIDS◆
(1991日本)
原作:『大誘拐』天藤真
監督:岡本喜八
脚本:岡本喜八
出演:北林谷栄、緒形拳、
樹木希林、風間トオル
3人の刑務所帰りの小悪党たちが、村の有力者である柳川とし子刀自を誘拐した。
だが、いつの間にか、誘拐犯グループは、被害者であるはずの老婦人の手下の
ようになってしまい、計画は彼女の言うがままに動き始める。その彼女の主張で
新しく決まった身代金はなんと100億円!彼女の計画により、TV局まで巻込んだ、
壮大な身代金受渡し計画が動きだした。
誘拐された被害者と、犯人との間になんらかの心理的つながりができると言うのは、
それほど珍しい設定でもないと思いますが、被害者が犯人たちを牛耳ってしまうと
言うのは、とてもユニークな感じがします。しかも、それが、腕力などにものを
言わせたのではなく、その知能と人間性で、というのがさらに素晴らしいですね。
おまけに、自分の身代金に5000万円なんて安すぎる、100億円でないと
知恵を貸さないって言い出しちゃうのには、びっくりです。
(被害者に、「知恵を貸さない」と言われて、それに従っちゃう犯人グループも、
また、なんとも人がいいというか、他愛ないというか(笑)
しかも、それが、犯人たちを罠にかけて警察に捕まえさせようとかで言っている
のではなく、本当に、自分の身代金ならそのくらいは当たり前と思っている
ようなのが、いかにも傑物という雰囲気。これには、誘拐なんてだいそれたこ
とをしでかしている犯人たちも唖然。何しろ、彼らは、「ラーメン単位」(笑)で
お金のことを考えているのですから。で、刀自は、ラーメン単位でなく戦闘機
単位で考えれば、100億円なんて、たった2機分と言い放つ、と。もう、こ
うなったら、人間としてのスケールの違いとしか言いようがないですね。とう
てい、敵いっこないです。
北林谷栄さんって、こういう女性にぴったりなのですね。それから、その刀自
に心酔していて、なんでも仰せのとおりという元使用人に樹木希林。
奥様一途
で純朴な感じが、まさにはまり役。「お供の人」には、ウケちゃいました。
で、幸か不幸か(笑)、そんな刀自を誘拐してしまった犯人たち。
ある程度まとまったお金が必要で、やむにやまれず誘拐などという犯罪行為に
手を出しちゃいましたが、決して、根は悪くない彼ら、最初から、誰のことも
傷つけるつもりは、ないんですね。まぁ、そういうところを喝破したからこそ、
刀自もあんな計画を思い付いたのでしょうが。
犯人たちは、仮にも被害者の前で、お互いの本名を呼ぶわけにはいかないからと
偽名を使うわけですが、そういうのに慣れてないのも、バレバレ(笑)
だから、誘拐したのが刀自でなく他の人間だったら、きっと、あっという間に
警察に捕まっていたのじゃないのかな、と思います。
主犯格(であったはず(笑))の「嵐」と刀自との過去の因縁のところなんて、
ちょっとしみじみしちゃいました。このへんもそうなのですが、小説では、
犯人3人のバックグラウンドにもきちんと触れてあって、彼らに感情移入が
しやすくなってます。映画でも、こいつら、ほんとはいい奴なんだなぁ、と
言うのは、しっかり現されていて、誘拐犯=卑劣な奴という印象は受けないよ
うに、ちゃんとなっています。
あ、小説にしかない部分で笑ってしまったのは、なにしろ身代金が100億円
と言うことで、社会現象になってしまって、国会で扱われたり、柳川家の財産
目当てにいろんな輩が近寄っていったりするところです。そうやって、右往左
往する人たちが、いかにも人間くさいところが、かえっておかしかったです。
で、警察を引っ張りまわしての身代金受渡しとあいなるわけですが、その引っ
張りまわされる警察側の指揮者、本部長の井狩を演じる緒形拳が、また、素敵
でした。小説では、ちょこっと顔を出すけれで、映画には出てこない奥様を、
誰にやってほしいかなぁ、なんていう想像も楽しいですね。
彼もまた、刀自に恩を感じていると同時に、人間的に深く心酔している1人。
誘拐の連絡が遅れたことで、部下を怒鳴りつける迫力も、さすがでした。
最後の、彼と刀自との会話なんて、すごい名シーンだと思います。
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