◆メトロポリス◆
(2001年 日本)

― THE ORIGINAL BOOK ――――――――――――――――――――――――

 『メトロポリス』
 作者:手塚治虫
 出版:角川コミック文庫 ISBN4-04-185120-3 1995年

― STAFF & CAST ―――――――――――――――――――――――――――

 監督:りんたろう
 脚本:大友克洋
 

― COMMENT ―――――――――――――――――――――――――――――


手塚治虫の原作の方は、どうにも古めかしい感じがして馴染めなかったのですが、
映画は、とてもいい感じでした。
50年も前に描かれたものであってみれば、多少なりとも古めかしく見えても
当り前。むしろ、その時点で、ロボットと人間の共存について思い描いていた
ことに驚嘆します。
もっとも、この作品は、「鉄腕アトム」と比べて、その難しさを表に出しては
いるのですが。
映画は、原作を大幅に現代的に改変して成功ストーリーも、大筋では確かに
原作をなぞっている部分もありますが、基本的にはオリジナル版といった趣です。

やはり、大きいのは、主役のロボットの姿。
原作では、ミッチィと言う名で、少年にも少女にも見えるのですが、
映画では、ティマという名の、美しい少女。
この姿が、敵役レッド公の命令によるものだというのは共通ですが、
原作では、それは美しい彫像からのものなのに比べ、
映画では、失った娘の姿を求めているように見えました。

そういう意味で、大きな意味を持ってくるのが、映画オリジナルのキャラ、ロック。
レッド公の息子。
レッド公は、拾い子のロックを、「息子なんかじゃない」と邪険に扱いますが、
ロックのレッド公への思慕は、あまりにも深く、運命を変えるのに充分なほど。
彼のティマへの憎しみには、レッド公こそ世界を手にすべきという思いの外に、
自分がどうしても手に入れられない父の愛情をなんの努力もなしに手にしている
彼女への嫉妬が大きかったのではないかと思います。
それは、なんて悲しい思い。

ティマを少女に設定したことで、日本からの探偵ヒゲオヤジの助手ケンイチとの
ささやかなロマンスも生まれて来ます。
ティマを守ろうと必死なケンイチは、子供ながらに立派なナイト。
そして、彼らといっとき行動をともにしたロボット、フィーフィー。
この子が、すっごくいい子。
ロボットに、感情や、愛情がないなんて嘘だわって信じさせてくれる。
あの表情や、あのしぐさの中に、愛情がないわけはないって。

ティマの持つ、秘められたパワーを利用しようと彼女を追う者たち。
彼女を守ろうとするひげおやじとケンイチ。
神の怒りに触れたバベルの塔にも似たその高層ビルにある
恐るべき装置の正体とは?
ケンイチたちは、ティマを救うことができるのか?
今となっては、決して目新しいストーリーではありません。
でも、それは、この作品の雰囲気を、決して損なうものではないのです。

美しい映像の持つパワー。
普遍的なテーマ。
「ロボットに感情は宿るのか?」
宿らないなんて、誰に決めることができるのかと言うような、
むしろ、ある種の人間よりも人間らしい感情を備えたとしか思えない
人工生命体を数多く見てきています。
それは、今は、作り事の世界でしかありません。
でも、いつか、もっといろんなことのできるロボットが誕生したとき、
そこに感情なんて宿らないと、言い切ることなんて、できないのかもしれません。

そして、ティマのように、ロボットが感情を持ったなら、
それは、ロボットなんていう枠で括られるものでなく、
「ティマ」という固有の生命体。
それを、自分の欲望のために利用するなんて、許されることではないのです。

ティマ。
ケンイチの惜しみない愛情に応えて、彼女も、ケンイチをかけがえのない
存在と感じるようになります。
その姿。
あまりにも切なく胸に痛く響いてきました。
それでも、ラストは未来に希望を託すことを許してくれているようでした。


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