◆クローン◆
(IMPOSTER 2001年 アメリカ)


─ THE ORIGINAL BOOK ──────────────────────

「にせもの」『パーキー・パットの日々』収録(ISBN4-15-010910-9)
 作者:フィリップ・K・ディック
 訳者 :大森望
 出版:ハヤカワSF文庫

─ STAFF&CAST ───────────────────────────

 監督:ゲイリー・フレダー
 脚本:エレン・クルーガー
 出演:ゲイリー・シニーズ、マデリーン・ストウ、ヴィンセント・ドノフリオ他

─ COMMENT ─────────────────────────────

小説を映画化するのに、短編の方がやりやすいのかもしれません。
小説の設定に、自由な発想でいろんなことを付け加えることができるのですから。
この「クローン」も、そういう意味で成功している1つではないかと思います。
(そうなると、来年公開の同じディック原作の「マイノリティ・リポート」も、
期待していいのかな)

地球とケンタウリ星の間で繰り返される果てしない戦争。
ある日、地球軍が手にした恐るべき情報。
地球の人間を捕らえて、記憶・人格までそっくり同じクローンを生み出して、
その中に爆弾を埋め込んでいる!
その情報を元に逮捕されたのはスペンサー。
地球側の優秀な科学者であるはずの彼なのに。
スペンサーには、まるで、そんなことは寝耳に水。
恐ろしい濡れ衣に過ぎないのです。
自分が、スペンサーでないなんて!
異星人によって作られたクローンだなんて、どうして信じられるでしょう。
なのに、なのに、一方的に捕えられ、身の証を立てることも許されないなんて。
ちゃんと検査さえすれば、自分が正真正銘のスペンサーであることは、
すぐに明らかになるというのに!
それを、誰も、旧友でさえも信じてくれないなんて。
こんな恐ろしい、理不尽なことがあるでしょうか。

でも、その窮地から辛くも逃げ出す力があるのは、さすが。
優秀な科学者というのは、頭の回転も速いということでしょうか。
でも、その際に起こった悲劇は・・・。
彼については、原作とどっちが悲劇なのか、どちらとも言い難い気もしますが・・・。

ここまでは、いかにもディック原作らしく、「ブレード・ランナー」風な風景と、
原作にほぼ忠実な展開。
ここからが、原作に大きく付け加えられているところ。
逃亡者となったスペンサーが出会った、社会の隅においやられていた者たち。
おそらくは、それまで、スペンサーがその存在を意識さえしなかったであろう者たち。
社会の底辺に追いやられながら、強く、したたかに、生きている。
生き延びるために、多少の法を犯すことは厭わない。
けれど、本質的に「善」である者たち。
(戦争で悲惨な目にあるのは、たいてい、そういう人たちなのですよね)

そして、妻マヤの立場も、原作とは大きく違っています。
原作では、実にあっさりとしか描かれていない彼女ですが、映画では、
とても大きな位置を占めています。
ああいった、突然の悲劇に巻き込まれる美しい女性に、マデリーン・ストウって
なんて似つかわしいのでしょう。
それにしても、「12モンキーズ」の頃から、全然年齢を取った気がしないな〜。

ラストは、原作を知っていても、というか、知っているからこそ、
ものすごい衝撃でした。
まさか、そんなことになるなんて。

その後映し出される風景とのなんていう皮肉。

ただ、ちょっと不満があるとすれば、時代設定が、現在から近すぎて、
そんなに少しの間にそんなことならないって!というつっこみを、
ついつい入れたくなったとこかな。
もうちょっと、先、せめて2100年より先の設定にしてほしかったな。


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