◆きらきらひかる◆
(1993日本)
原作:『きらきらひかる』江國香織
監督:松岡錠司
脚本:松岡錠司
出演:薬師丸ひろ子、豊川悦司、筒井道隆、大島智子
笑子は、情緒不安定で、軽いアルコール依存症。夫の睦月には、紺という男の
恋人がいる。お互いそれを承知で結婚した2人は、紺を含めた3人で、微妙な
バランスをとっていた。だが・・・。
なんだか、不思議な夫婦です。お見合いで知合って、お互いに抱える問題が
あるのを知りながら結婚したのですから。そして、笑子は、夫の恋人である
紺とも仲良くなっているのですから。
江國香織の小説は、『落下する夕方』と、これと、たった2つしか読んでいない
のですが、不思議な三角関係という点で、この2つは共通していますね。
『落下する夕方』ではリカが、この『きらきらひかる』では、笑子が、
好きな人の恋人と近しくなっていきます。
そして、そんな2人を、ただ見守る男というのも共通ですね。
でも、こういう関係は、どんなに楽しくても、やはり、長くは続かないもの
なのでしょうね。本人たちが、それをずっと続けたいと真剣に思っていても。
やがては、その中の誰かの気持ちが変化するでしょうし、周りの人間の横槍が
入るかもしれない。
ふわふわ不安定で、お酒のグラスを片手にゆらゆら歩く、そんな笑子に、
薬師丸ひろ子のちょっとかわいらしいしゃべり方や雰囲気が、よくあっています。
でも、小説で見せているほどのユニークさは、映画では見られないのは、
ちょっと残念かもしれません。なにしろ、小説の彼女、「紫のおじさん」や
「紺君の木」に、本気で話し掛けたりしているのですから。しかも、それは、
なんだか微笑ましい感じで、むしろ、笑子の心の柔らかさ、
というか傷つきやすさを表しているみたいに見えます。
そして、彼女がよく歌っているのが「おじいさんの古時計」の歌なのですが、
これが、なんだか口ずさみやすい歌で、観た後、2、3日は、何かにつけ
口ずさんでいる私がいました。小説では、けっこういろいろな歌を
笑子は歌っているのですが、映画では、ずっとこの歌でした。
小説は、笑子と睦月それぞれの一人称が交互に使われていて、それが、とても、
効果的にお互いの心情を見せてくれました。
3人の主要人物のうち、小説と映画とで、イメージが1番違うのは、紺君でした。
小説での彼は、ちょっと意地悪で、どこかエキセントリックな感じがあるのですが、
筒井道隆演じる紺君には、そういったところは感じられなくて、とても優しい好青年。
こういう弟がほしいなぁ、としみじみ思ってしまいました。
小説にはいない登場人物で、すごく好きな人がいます。
笑子がよく行くファミリーレストランのウェウトイレスさん。
最初は、無愛想で、客を客とも思わない、いやなウェイトレスだなぁ、
と思ってみていたのですが、なかなか味のある方でした。
終盤の「あなた、恋人いるの?」から始まる笑子との会話で、
一気に印象がひっくり返ってしまいました。
3人のどこかアンバランスなバランスを保った生活に、ある日、大きな波紋が
投げかけられて、でも、その波紋というのは、いつかは、消えていくもので、
どういう形にしろ、それがおさまると、もう一度、静かな時間がやってきます。
もちろん、1度起こった波紋は、たとえそれが静まっても、なかったことには
できないのですが・・・。
ラストの早朝の人気のない街。お気に入りのラストシーンの1つです。
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