◆破線のマリス◆
[1999年 日本]
― THE ORIGINAL BOOK
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『破線のマリス』
作者:野沢尚
出版:1997年 講談社ISBN4-06-208863-0
― STAFF & CAST
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| 監督: 脚本: 出演: |
井坂聡 野沢尚 黒木瞳、陣内孝則、筧利夫、篠田三郎、辰巳琢郎他 |
― SUMMARY
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遠藤瑶子は、無茶をしてでも、自分の主張を映像に込めて編集していく。その、
独走には批判の声もあるが彼女は意に介さない。ある日、彼女の元に、郵政省
の内部告発を収めたビデオテープが届けられる。いつものように、自身の直感
に従いそのテープを編集した瑶子だったが、それが、罠の始まりとは気付く由
もなかった。
― COMMENT
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最初から最後まで、画面に取り込まれたかのように見入ってしまった。
こんな世界があっていいものなのか・・・。
まさに、「マリス(悪意)」の世界。
だけど、「誰の」悪意なのかが問題。
冒頭で示されるのは、「瑶子の」であり、それが象徴するのは、TVを代表と
するマスコミの悪意なのだと思う。
瑶子のそれは、確信犯。他の人間のチェックが入らないように、わざわざ放送
の直前に編集したテープを届ける念の入りよう。だけど、言い替えれば、そん
な小細工を弄しないと彼女の意思は電波に乗らないのかもしれない。チェック
する者を納得させ、説得することを逃げているのだから。厳しい言い方かもし
れないけれど、こういうやり方は、後進を育てず、視聴率のよさにのっかって
好き勝手してるようにしか見えないのだもの。
そんな彼女だから、見えない悪意のターゲットにされてしまう。
郵政省の内部告発テープというおいしいエサにくいついた瑶子は、信じられな
いことに、なんの追跡取材もしないまま、テープに映った怪しい男を、そのま
ま、殺人者として示唆する映像を電波に乗せてしまう。
「映像」としてテープに収められていることは、一見、間違いようのない事実
に見える。だけど、それは、編集次第でいろんな意味を持たせられることに、
編集に携わる人間として、思い至らないものなのか?
テープを持ち込んだ春名は、「自分の命も危ない」ことをさかんに強調し、職
場に連絡することや、確認を取られることを、固く拒みます。そして、そうい
うことが必要ならばテープは返してほしいとまで言う。瑶子が、はっきりと、
相手のえさに食いつき、針を飲み込んだ瞬間かもしれない。
さらには、待ち合わせた喫茶店のマスターと春名が古馴染みであるらしいこと
も、瑶子に、言い訳を与えてしまう。
情報提供者の身元ははっきりしている、と。
この喫茶店のシーン。原作には描かれていない。
映画では、描かれていて正解でしょう。でないと、相手の賞賛の言葉にうかう
か乗せられてしまった瑶子が浮彫りになってしまうから。そして、張り巡らさ
れた罠が、周到なものであることが、より強調されるから。
ただ、残念なのは、原作で描かれていた瑶子が春名の後姿を見送るシーン。
これは、使ってほしかった。
使ってほしかったといえば、瑶子に謝罪を求める麻生が、強行につきまとうだ
けでなく、穏やかでかえって何を考えているのかという点で、
蕎麦屋のシーンもいれてほしかったかな。
さらに省かれているのは、新聞とTVの関係にも絡むマスコミ論やマスコミの
歴史。このへんは、なかなか興味深かったです。
怖いのは、麻生が「灰色の男」ではないことが判明してからの、瑶子の暴走ぶ
り。最初は、暴走ですんでいたものが、麻生に付きまとわれたりするうち、ヒ
ステリックに壊れて行ってしまう。
差出人不明の「贈り物」が届くようになってからの彼女。
だんだん、このこと以外には何も見えなくなっていってしまう。
そうして、事実を冷静に見極めることができなくなってしまい、自ら、さらな
る罠へと足を踏み込んで行ってしまう。
麻生に、仕返しをたくらむあのシーンは、本当にぞっとしました。
自分を心配してくれる倉科や赤松の言葉も耳に入らなくなってしまって。
それにしても、気の毒なのは麻生公彦。
彼の生活は、瑶子の作り上げた恣意的な映像のせいで、見事なまでに瓦解して
しまう。
殺害された弁護士の事件での事情聴取の後、笑顔を見せたがために。
それも、決して、警察の調査を終えてほくそえんだのではなかったのに。
家族も、仕事もなくしてしまったなんて。
たった2秒の落とし穴。
映画ではあっさりとしか触れていなかった妻との暮しを知ってみるとよけいに。
そして、あのラスト。
なんという悲劇。
瑶子が知ってしまった衝撃の事実。
なのに、そのときの彼女の表情。
あれが、1番、怖かったかもしれない。
だって、そのとき彼女は、麻生の本当の姿をも理解したはずなのだから。
もしかしたら、そこまでは理解が及ばず、表面のことだけに気を取られた?
原作でその後付け加えられた瑶子のメッセージ。
これは、蛇足だと思う。
映画で、ここを入れなかったのは正解。
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