◆はるか、ノスタルジイ◆
(1992日本)
原作:山中
恒『はるか、ノシタルジイ−失われた、時を求めて』
監督:大林 宣彦
脚本:大林 宣彦
出演:石田 ひかり、勝野 洋、松田 洋治他
はるかは、小樽の街に母親と2人で暮らしている。あるとき、ひょんなことか
ら、東京から来たライター綾瀬のガイドをすることになった。綾瀬のリクエス
トで、あちこち回るうち、2人は不思議な少年と出会う。
なんと言っても嬉しいのは、懐かしい、大好きな小樽の街が見られたことでした。
しかも、それが、素敵に、物語の舞台になっているのです。見覚えのある風景が
映し出されるたび、うきうきしてしまいます。大林監督は、街の魅力を
すくいとるのが上手ですね。
そして、石田ひかりが、ヒロイン「はるか」に、まさにはまり役。
映画では、原作で持っている、ちょっと不思議な力は出てこないのですが、
映画のために書き下ろした小説というだけあって、ぴったりです。
彼女をイメージして書かれたのでしょうね。
そして、松田洋治演じる不思議な少年。
彼って、青春ものに、よく似合いますね。
残念なのが、原作で、はるかの元気いっぱいな魅力を引き出している少年が、
映画の方に、出てこないこと。どうして、彼を削ってしまったのかなぁ。
それから、はるかの幼なじみの兄貴分、無口なお兄さんに尾美としのり。
彼とはるかの関係も、すごく微笑ましくていいのです。「お兄さん」に対して
大人ぶって見せようとするはるかは、すごく可愛らしくて、
見ていて、つい、にこにこしちゃいます。
その「お兄さん」が、はるかをとっても大事にしていることも伝わってきますし。
この映画が、何よりも小説と違うのは、クライマックスから、終盤にかけてです。
綾瀬の過去についてや、はるかにそっくりな少女遥子については、ほぼ原作通り
なのですが、他は、まったくと言っていいほど違っています。
そして、その違いの中に、こういうファンタジーっぽい作品とは、
ちょっとそぐわないなぁ、というところがあるのが残念です。
もう少し、そこは、あっさりと流してくれれば、よかったのに、と思いました。
始まりの、服を・・・のシーンは、少女の覚悟をよく表していて好きなんですが。
はるかが『マクベス』を暗唱するシーンは、彼女の性格を、よく表わしているようで、
好きなシーンの1つです。そして、そこに含まれる隠された真実も。
それから、はるかと母親の関係も、とても素敵でした。お互いに、御互いが
すごく好きで、思いやりをもっていることが、伝わってきました。
2人の行く先々に現れ、少しずつ姿を見せる不思議な少年。
彼が、自分の正体として語ったことには、驚きました。でも、確かに、
そうとしか考えられないこともあるのです。小説では、そこに、
映画にはないサスペンスフルな味が加わっていて、ハラハラさせられました。
映画には、小説にはない後日談があるのですが、これが、すごくほんわかして
いて、いい感じでした。
小樽には、こういう、優しいファンタジーが、よく似合います。
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