◆ドラキュラ◆
(DRACULA 1992米)
原作:『ドラキュラ』ブラム・ストーカー
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:ゲイリー・オールドマン、ウィノナ・ライダー、
アンソニー・ホプキンス、キアヌ・リーブス他
原作となった、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』は、何度も映画化されて
いますが、これほどまでに美しい恋愛ものに仕上がっている作品は、
他にないでしょう。
華麗な衣装、そして、豪奢なパーティの中ですら覆い被さってくる影。
小説は、複数の登場人物の1人称が繰り返され、むしろ淡々と語られますが、
それが、見事に一大叙事詩に仕上がっています。
ドラキュラ伯爵のミナ、いえ失った妻への想いがすべての始まりなのです。
愛しい人を失い、その死を、拠り所となるべき宗教からも見離されたとき、
彼は、神を捨てたのです。そして、もう1度、大切な人を抱きしめるために、闇の世
界へと自ら踏み込んで行った・・・。
その時流れた鮮血は、悲しみの色なのでしょう。
彼を、闇の世界へ導いたものが「愛」であるならば、
彼を救おうとする力もまた、「愛」なのです。
彼とミナが語り合うシーンは、見ているこちらまで切なくなってしまいます。
ホラーが苦手な私が、ヴァンパイアものにだけは、惹かれてしまう理由が
そこにあります。「ドラキュラ」に限らず、ヴァンパイアものは、
一般的なジャンル分けではホラーなのでしょうが、私には、むしろ恋愛ものに
見えるものが多いのです。
その1つに、「血とバラ」という作品があります。
これは、古城に住み着いた女性ヴァンパイアを扱ったもので、原作は、レ・フ
ァニュの『吸血鬼カーミラ』という短編集の表題作です。ただし、吸血鬼カー
ミラが登場する点以外に、共通項はあまりないのですが・・。
この「血とバラ」の印象を一言で言うなら、oldfashioned
vanpire story。
カーミラもまた、ドラキュラ候と同じく、
叶えられなかった想いを抱いたヴァンパイアです。
その想いが、古城にやってきた女性の持つ、
古城の持ち主への想いに反応してしまう。
モノクロームの世界に、鮮烈な血の色。なんともムーディな作品です。
人の生き血を吸って永遠の命を生きるヴァンパイアは、忌むべきもの、
狩れれるものではありますが、その始まりとなった想いは、
あまりにも深く純粋で、心に響いてくるのです。
人ならぬものの恋ということでは、ナスターシャ・キンスキーの
「キャット・ピープル」も、とても切ない物語でした。