◆欲望という名の電車◆
(A STREETCAR NAMED DESIRE 1951米)
原作:テネシー・ウィリアムズ
監督:エリア・カザン
出演:ビビアン・リー、マーロン・ブランド、キム・ハンター、
カール・マルデン
「欲望という名の電車に乗って、墓場というのに乗り換えて」、ブランチは、
妹ステラの住む「極楽」を訪ねてきた。南部の大農園から、傷付き疲れて。
だが、彼女を迎えたのは、ステラの夫スタンリーの粗暴な振舞いだった。
実際にこの作品を観るまでは、「欲望という名の電車」というのは、
何かの比喩なのだと思っていたので、それが、この作品の世界に存在する
電車の名前だと知ってとても意外に感じました。
その電車に乗ってブランチが着いたところは、いかにも
「欲望という名の電車」から「墓場」に乗り換えてたどり着くのに
ふさわしい趣の町でした。
とうてい裕福とはいえない人々の、くらい活気にあふれた町。
昼間でもどことなく薄暗いけれども、人々の大声が、喧騒があふれる町。
路地裏では、野良猫が餌を争ってケンカしているような、そんな町。
そして、なぜかブランチを目の仇にして粗暴な振舞いにおよぶスタンリー。
それらは、南部の大農園の娘として暮らしてきたブランチには耐え難いものです。
そういうふうに、追いつめられていくブランチの、どこか神経症的な様子
が、ビビアン・リーにぴったりでした。
そして、粗暴だけれども魅力的なスタンリーにマーロン・ブランドも、
これまたはまり役。(彼は、この作品が映画化される前に、すでにブロード・
ウェイの舞台でもこの役をやっていたそうです)
ブランチは、妹夫婦のアパートの一間に滞在し、電灯に紙のシェードをかけて
安らげる暗さを求めます。
見たくない現実、知りたくない事実から目を背けるかのように。
なのに、スタンリーは、彼女の過去まで追求し、暴きたてようとする。。。
かわいそうなブランチ!
そんなブランチを、彼女がこうありたいと思うとおりのままの姿で見てあげるのが、
スタンリーの仲間の1人、ミッチーです。妹ステラは、姉の幻想をそのまま
受け入れはしますが、それを信じているわけではないから、ブランチには、
きっと、それだけでは足りないのでしょう。
ミッチーにとってブランチは、上品で清楚な美しい高嶺の花。
憧れの人なのです。だから、ミッチーといるときのブランチは、
こうあり続けたいと思っている本来の自分に帰れる、とても幸せな時間を
過すことができます。ミッチーの目に映る自分は、「そうでなければならない自分」。
彼を鏡にして、自分の姿を確認するブランチは、その弱さがとても哀れでした。
そして、彼女が大事にしている思い出の品も、ブランチがそれについての思い出を
幸せそうに語れば語るほど、見てるほうは切なくなってしまうのです。
妹ステラは、ブランチと同じ境遇で育ったのですが、こちらは、見事に、夫の
属する世界に順応しています。すでに、過去の生活は自分とは関係ないものと
して割り切っているせいか、夫とも、派手な夫婦ゲンカをしながらも、うまく
いっています。その姿は、姉とは、悲しいくらいに対照的です。せめて、その
強さの何分の一かでもブランチにあれば・・・。
この作品、95年にも、ブランチ=ジェシカ・ラング、
スタンリー=アレック・ボールドウィンでリメイクされています。
ブランチのジェシカ・ラングには、ビビアン・リーのような危うさが
感じられなかったのですが、別の意味で心惹かれるヒロインでした。
スタンリー役のアレック・ボールドウィンの迫力もさすがです。
2本のうち、とっつきやすいのは、こちらの方かもしれません。
私としては、オリジナルの方がお気に入りですが。
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