◆陰陽師◆
(2001年 日本)


─ THE ORIGINAL BOOK ──────────────────────

『陰陽師』(ISBN4-16-310450-X)
作者:夢枕獏
出版:文芸春秋

─ STAFF&CAST ───────────────────────────

監督:滝田洋二郎
脚本:夢枕獏、福田靖、江良至
出演:野村萬斎、伊藤英明、真田広之、小泉今日子、柄本明他

─ COMMENT ─────────────────────────────

鬼と人とが一緒に生きていた平安時代。
そんな時代に、そういう妖のものを操る力を持った陰陽師、安部晴明。
演じる野村萬斎は、立ち居振舞い、醸し出す雰囲気、まさに晴明そのもの。
母親が狐とも噂される晴明が、屋敷を訪れた源博雅に、
「私はそんなに狐に似ているか」って言うところなんて、
本当にその顔が狐の化身に見えてぞくっとしたほど。
もっとも、シーンとしては、得体の知れない晴明に会う羽目になったことを
ハズレくじとぼやく博雅をからかう笑えるシーンなんですけど。
で、実際、その顔つきにぞくっとしながらも、ついついくすっと笑ってしまいました。

なにしろ、博雅の伊藤英明が、人はいいものの、武骨で実直。
目に見えるものしか信じないという博雅に、あまりにもぴったりなんですもん。
この2人の存在って、光と影という感じ。
宮中で、貴族にその能力をからかわれて、手を触れずに蝶を殺してみろと
けしかけられた晴明。
その蝶の生死に一喜一憂する素直な心根を持つ博雅。
晴明が、「おぬしはいいおとこだな」と、繰返すのも当り前。
そして、原作でも、繰返されるこのセリフ、やはり「おとこ」は「漢」なのです。
原作者が脚本に関わっているわけですし、台本でも、きっと「漢」と
書かれていたに違いありません。

都を破壊しようとする陰謀を徐々に明らかにしていく導尊。
真田広之って、こういう悪役は初めてかな?
でも、すごい迫力。大熱演でした。
その動機が、今一つぴんとこないんですが、それは、おいといて、
全てを自分の目的のために利用しようとするおぞましさ。
今も昔も、人の心の中に棲む鬼が、1番の魔物なのでしょう。

特に、恋に苦しむ姫君をあんな目に合わせるなんて、許せません。
人の心をふみにじるそのやり方。
まして、その相手が彼女だなんて。

博雅の恋の行方も切ない。
名も知らぬ姫のために、夜毎美しい笛の音を響かせる博雅。
姿を見せない車の中のその女性、身分違いなほど高貴な女性であるのかなと
予想はしていたのですが。
その深い苦しみを癒す笛の音に、心を閉ざすなんてできないものを・・・。

原作と似て非なる存在になっているのが青音。
美しく、不思議な力を持つ女性。
冒頭のシーンの意味も、徐々に明らかになっていきます。
似て非なるとはいうものの、彼女は、やはり悲しい存在。
本来、人が持ち得ないものを持ってしまうのは、やはり悲しみ。

そう、原作者が脚本に参加して、オリジナル・ストーリーを書いたことが、
この作品では成功をおさめていると思います。
原作でさりげなく触れられているエピソードがさりげなく映画にも
映し出されていたりすると、なんとなく嬉しくなります。
その上、そこにもってきて、映画ならではの映像スペクタクル。
クライマックスの、晴明と導尊の対決は、迫力があります。
互いに、力のある陰陽師だから。

でも、その一方で、すごくちゃっちい妖怪も出てきていて、ちょっと残念。
特に、あの化け烏は、なんだったのやら・・・。
それがなければ、もっと素晴らしいものだったと思うのですが・・・。

                      (2001.10.6 東宝公楽)


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