◆明日の記憶◆
(2006年 日本)
監督:堤幸彦
原作:荻原浩『明日の記憶』(光文社刊)
脚本:砂本量、三浦有為子
出演:渡辺謙、樋口可南子、坂口憲二、吹石一恵、
袴田吉彦 、遠藤憲一、香川照之他
映画を観て、これだけ泣いたのは久しぶり。
冒頭の、夫婦2人のシーン。
枝実子がお茶を飲む、その湯のみ。
それを見てぶわーっ。
パンして美しい景色が写って、さらにぶわーっっ。
美しい景色って、時に、やけに涙を誘う。
佐伯雅行は、公私共に順風満帆な多忙な日々を送っていた。
時々、やけに物忘れがひどくなることはあっても、
そんなのは年齢のせい、当然のようにそう思っていたのに。
それが、物忘れではすまないようなことが続くようになって。
そんな時の、視界がぐるぐる回るようなシーン。
まさに映像ならではの心理的不安感をあおってくる。
作品中、そういうシーンが、何度も繰り返される。
よく知る街中で、あるいは部下との会食中に。
自分が、どこで何をしているのかとっさに分からなくなる。
不安と恐怖。
よく知る人間に声をかけられたのに、認知できない。
足元が崩れていく恐怖。
退職の日に佐伯を取り囲んだ幻影たち。
過去から、現在から、襲い掛かってくる。
逃げ場のない、追い詰められる心。
でも、それだけに、その後の(かつての)部下たちとの
別れには涙が止まらなかった。
それは、どんな花束よりも素晴らしいはなむけ。
彼が、どれほど慕われているかの証だから。
生き馬の目を抜くような業界で、
人望厚く、さらに仕事上でも成功するというのは、
どれほどの努力を、彼はしてきたのだろう。。。
同じぐらいに泣けてしかたがなかったのが、
アルツハイマー病の告知を受けたシーン。
特に枝実子のセリフに。
あんな風に言える事、言ってくれる人のいること。
もちろん、だからこそ、そんな相手を忘れてしまう、
忘れられてしまう、という辛さはあるのだけれど。
そして、流れ着く、悲しくも美しいラストシーン。
優しい音楽と美しい映像。
悲しみを優しく包んでくれる。
寄り添う2人が、穏やかに生きてほしいと切に願う。
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