◆アルジャーノンに花束を◆
(FLOWERS FOR ALGERNON 2000年 カナダ)

― THE ORIGINAL BOOK ――――――――――――――――――――――――

 『アルジャーノンに花束を』(FLOWERS FOR ALGERNON)
 作者:ダニエル・キース
 訳者:小尾芙佐
 出版:1989年 早川書房 ISBN4-15-203393-2

― STAFF & CAST ―――――――――――――――――――――――――――

 監督:ジェフ・ブレックナー
 出演:マシュー・モディン、ケリー・ウィリアムズ、ボニー・ベデリア他
 
― SUMMARY ―――――――――――――――――――――――――――――

30歳を過ぎても子供並みの知能しかないチャーリー。みんなに、かわかわれ、
笑われながらも楽しく過ごしていた。ある日、そんな彼が、知能を高くする
手術を受けることになった。彼は、同じ手術を受けたネズミのアルジャーノンに
親近感を覚えるようになる。手術は成功し、知能は高くなったが、彼の中で、
外で、様々なことが変化し始めた。

― COMMENT ―――――――――――――――――――――――――――――

子供並みの知能しかないチャーリー・ゴードン。
でも、彼は、優しいおやじさんのいるパン屋で、みんなと仲良く、楽しく
やっていたのです。同じ様な人たちの集まる学校に通って、いつか、うんと
頭がよくなることを夢見ながら。

もう、このチャーリー・ゴードンを演じるマシュー・モディンは、まさに
ぴったりで、この映画を見る前から、自分が、チャーリーとして、彼を
思い描いていたと感じられるほど。優しい笑顔に、穏やかな表情。
その性格に似つかわしいふんわりと柔らかそうな金髪。
もう、他の人がやるチャーリーなんて考えられないぐらいです。
あ、でも、ロビン・ウィリアムズなら、いい感じかも。
そういえば、2人、ちょっと雰囲気が似てるかな。
そして、キニアン先生も、小説から思い描く、まさにその通りの女性。
陳腐な言い方をすれば、2人とも、小説からそのまま抜け出てきたかのよう。

手術によってチャーリーは、少しずつ知能を上昇させていきます。
でも、彼の変化はそれだけではありませんでした。
情緒的な発展として、キニアン先生=アリスへの想い。
とても遅い初恋ではありますが、チャーリーは、とてもいい女性に恋をしました。

でも、問題は、チャーリーが、知能が上昇するにつれて、それまで、パン屋の
中間たちにされていたことの本当の意味を悟ってしまったこと。
みんなと一緒に楽しんでいたと思っていたのに、ばかにされていたのだと
気付き始めてしまったこと。
ショックだったでしょう、悲しかったでしょう。

やがて、チャーリーは、手術をし、導いてくれた先生たちをも追い越して行きます。
これは、彼にとって、幸せだったのか、不幸だったのか・・・。
自分の方が優れていると自負しながらも、そういう相手に、いくら思いやりをもって
とは言っても実験動物、とまで言っては言い過ぎでも1つのケース・スタディとして
扱われるとしたら・・・。
そう、自分が、彼らにとってアルジャーノンと同じ意味をしか持たないのだと
感じてしまったとしたら・・・。

それが、あの学会でのチャーリーのとんでもない行動に結びつくのでしょう。
そして、彼のアルジャーノンへの一言。
「彼らは、お前と他のネズミとの区別もつかない」
それは、アルジャーノンについてだけ言った言葉ではないはず・・・。

知能が高まることによって、人を見下すことまで覚えてしまったチャーリー。
でも、そんなときでも、同じ手術を受けたアルジャーノンだけは特別。
唯一、心から信頼できる相手。
そして、アルジャーノンの行く道は、チャーリー自身も、いつか行くであろう道。
アルジャーノンの変化を見ることは、彼には、ある意味、恐ろしいものでもあったはず。

本当に、こんなに残酷なことがあるでしょうか。
人並みはずれた知能を手にして、それゆえに、その行く末が見えてしまうなんて。
それを防ぐ手だては?あるの?ないの?

映画では、小説で重大な位置を占めるフェイが、あんまり出てきません。
その代わり、チャーリーとアリスの関係に大きな違いがあるのです。
2人の間にある大きな感情。
最後の最後、こんなに切ないラスト・シーンがあったでしょうか。
チャーリーは、自分がどうなって行くかを誰よりもよく分かっており、
だからこそ、選べないことがあるということ。

チャーリーの手記というか、日記の形で綴られる小説と違って、映画では、
チャーリーの見ていない、彼の知らない他の人の動きや表情まで
映し出されます。これは、とても大きな違い。
そして、とても効果的。
でも、やっぱり、小説には敵わないですね。
それは、「けえかほおこく」から「経過報告」まで、少しずつ、少しずつ
チャーリーの知能の上昇を浮彫りにしていくその手法が素晴らしすぎるせい。

でも、映画では、その代わりに、アリスとのロマンスを強めることで、
深く、強く感情を揺さぶってくるのです。
涙が止まらなくなってしまいました。

チャーリーとアルジャーノンに花束を・・・。


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