◆ミステリの女王にささげる映画−その3 冒険もの編−◆

アガサ・クリスティというと、本格的なミステリという印象が強いのですが、
楽しい冒険ものも、数多く残しています。
そして、嬉しいことに、そういう作品も、ちゃんと映像化されているのです。

「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」
原作:『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』
監督:ジョン・ディヴィス、トニー・ホーンビィ
脚本:バット・サーンディーズ
出演:フランセスカ・アニス、ジェームズ・ワーウィク他

幼なじみのフランキーとボビー。ある日、ボビーが、ある男性の死に際に立ち
会ったことから、謎めいた事件に飛び込んでいくことになります。
事件に首を突っ込んだばかりに、フランキーとボビーは、とても危険な目にあ
います。そこへ、意外な人物が、意外な形でやってきて、窮地を脱することが
できるわけですが、まぁ、なんておいしいところをさらっていくのか、という
くらい、見事な登場ぶりです。
ストーリー展開もテンポがよくて、あっという間に終わってしまったという感
じです。ボビーと父親との会話も、そこはかとないおかしさがあって、いい味
を出しています。これも、原作のとおり、うまいものです。

カップル探偵が、お互いに、相手に接近する魅力的な異性にジェラシーを
感じているのも、ある意味「お約束」かもしれませんが、物語のエッセンス
としては、申し分ないですね。

最後に、「エヴァンズ」の正体が明かされるのですが、まったく思いもかけな
い人物で、あっと言わされます。見事、クリスティにしてやられるのですが、
あまりにも見事にやってのけられて、むしろ嬉しくなってしまいました。


「七つの時計」(1981 英)
原作:『七つの時計』
監督:トニー・ワームビィ
脚本:パット・サンダース
出演:シェリル・キャンベル、ジェームズ・ワーウィック
クリストファー・スクーラー,ジョン・ギールグッド他
前作「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」に続いて制作されたこの作品に
は、ジェームズ・ワーウィックが出演しています。今回は、前作で、いいよう
にボビーを振り回していたフランキーに相当する方がいないですね。ヒロイン
としてバンドルが出てはきますが、カップル探偵ではありませんし。

寝起きの悪いジェリーを起こすのに、1つでは足りないとばかりにしかけた8
つの目覚まし時計。いくらなんでも、これだけの時計がいっせいになれば起き
てくるだろうと待ち構えている彼らに肩透かしをくわせるかのように、彼は、
いつまで待っても起きてきません。様子を見に行った彼らを待っていたのは、
二度と目覚めない眠りの中にいるジェリーでした。やがて、謎の組織「セブン
ダイアルズ」の存在が浮き上がってきます。はたして、ジェリーを殺したのは
セブンダイアルズなのか?

原作は、『チムニーズ館の秘密』の姉妹編にあたります。その『チムニーズ館』
同様、ヒロインバンドルのぶっとんだおてんば娘ぶりは、本当に爽快です。
もっとも、父親のケイタラム卿の、数ある悩みをさらに増やしていることに、
違いはないのでしょうが。
映像でも、彼女はやはり元気で、機転の利く行動力には、感心しきりというと
ころです。
ストーリー的には、かなり原作に忠実なほうだと思いますが、原作で大笑いし
たコダーズのシーンがなかったのは、ちょっと残念。

「秘密機関」(1983英)
原作:『秘密機関』
監督:トニー・ワームビィ
脚本:パット・サンディーズ
出演:フランセスカ・アニス、ジェームズ・ワーウィック
幼なじみのトミーとタペンスが、偶然再会し、新聞の広告で仕事を見つけよう
と話がまとまる。トミーと別れたタペンスに、ある男が依頼人として接近して
くる。だが、タペンスが何の気なしに口にした「ジェーン・フィン」という名
前を耳にしたとたん、男の態度は豹変する。男の目的はいったい?そして、謎
の組織を牛耳るブラウン氏の正体とは?

豪気なアメリカ人の大富豪、有名な弁護士、怪しげな美女。
調査を進めるトミーとタペンスの前に、様々な人物が姿を現します。
組織に捕らわれて、お互いに連絡がつかなくなり、心配でたまらない気持ちを
押して、2人とも少しずつ進んで行きます。2人の終世の仲間となるアルバー
トとも、この事件を通じて知り合います。キャンディで手をベタベタにした、
探偵小説好きの少年は、年を重ねても変わらない、2人のよき味方です。
短編集『おしどり探偵』では、探偵小説好きが高じて、2人をへきえきさせる
場面もありますが、それも、またご愛敬ということで(笑)

映画の方も、「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」でもコンビを組んだ溌
剌とした2人の 活躍が、生き生きと描かれていて、楽しめます。
トリック、展開等、基本的に原作に忠実で、原作を読んで自分の中に登場人物
のイメージができあがっていても、その印象を裏切りません。

ただ、2人が活躍する小説は、短編集も含めて全部で5冊。
トミー&タペンスが、年齢を重ねて孫ができたところまで描かれているのですが、
それらが映画化されていないのは、とても残念です。
フランセスカ・アニス&ジェームズ・ワーウィックのコンビが、
『おしどり探偵』を映像化した「2人で探偵を」までというのは
惜しいですから、「ぜひとも続編を作ってほしいものです。


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