◆和宮様御留◆有吉佐和子◆
(ISBN4-06-131702-4 講談社文庫)
「公武御一和」のためということで、有栖川家との婚約を破棄してまで、徳川
に降嫁することを命じられた皇女和宮。その身代わりとなった少女フキの人生。
「公武御一和」って、いったいなんなのでしょうね。いやがる皇女を無理に降嫁
させないと実現させえないものだったのでしょうか。
否。そんなことはなく、その「象徴」としての降嫁なのでしょう。
足の悪いのも手伝って、東下を頑なにいやがる和宮。
知る人のない徳川の大奥になんて、喜んで降嫁できるはずもありません。
そういう、公家と武家の駆け引きのようなものに巻き込まれて一生を狂わされた
フキが可哀想ですね。何も知らされずに使いに行った先で、こっそりと、
「いるけどいない」者として扱われ、思いもかけなかった生活に否応もなく
放り込まれてしまった少女。
溌剌とした彼女にとって、それがどんなに苦痛に満ちているか。
フキが、それまで、実に活き活き暮していた少女であるので、そんなカゴの鳥の
ような暮しをさせられるのは、どれほど苦痛だったことか。思いっきり水汲みを
する夢をみるくだり、胸が痛くなりました。
そして、自分が何をさせられるのかも理解しないまま、宮様(和宮)に憧れている
様子にも・・・。
それでも、フキの立場に同情し、理解を示してくれる存在のあることが
せめてもです。
だんだんと、彼女だけがフキの支えになっていきます。
彼女もまた、フキと同じような存在だから・・・。
そんなフキの人生を中心に、ご降嫁を早く早くと急がせる武家。
なんとか和宮優位にことを運ぼうとする公家。
彼らの思惑を織り交ぜながら物語は進んでいきます。
フキが楽しみにしている祇園のお囃子の音が、やけに悲しい・・・。