◆顔のない肖像画◆連城三紀彦◆
(新潮文庫 ISBN4-10-140515-8)
収録:潰された目、美しい針、路上の闇、ぼくを見つけて、
夜のもうひとつの顔、孤独な関係、顔のない肖像画
連城三紀彦という作家は、本当に「嘘」がうまい。
読者の目を、真実でない方に上手に向けさせておいて、最後の最後に
すとんと、こっちが真実だよ、って明かして見せる。
上下が、裏表が、右と左が、180度、入れ替わってしまうラスト・シーン。
騙される快感。
そのために、この人の作品を読むのがやめられない。
なにしろ、主人公たちでさえ、作者に騙されて、自分の立場を見誤ってばかり。
こちらは、それを見抜いてやろうと、ああじゃないかな?それともこうかな、
なんて予想しながら読んでいるのに、それが当ったためしがない(^^;
この短編集の中で特に素晴らしいのは、やはり表題作の「顔のない肖像画」
とある画学生が、著名な作家の絵を競り落とすように依頼されるけれど、
その話には、なにやら、嘘の匂いがぷんぷん。
オークション会場での周囲の会話も、絵を競り落として行く人間たちも、
それを裏付けているかのように見えます。
そうして、主人公と一緒になって、また、見事にすとんとひっくり返されて(笑)
美しい未亡人の願いがなんだか妙に寂しくて・・・。
上品な表情の裏にある祈りにも似た願いが、彼女の中で、だんだん、
真実になっていくといいのにと思わずにいられない。
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