◆仮面舞踏会 伊集院大介の帰還◆栗本薫◆
(講談社文庫 ISBN4-06-263758-8)


乃南アサの『ライン』でも思ったけれど、ネットというのは、便利で楽しいもの
ではあるけれど、その反面、怖いものでもあるということ。
それを、きちんと分かっていないと、とんでもない目にあうのかもしれない。
もちろん、必要以上にその怖さに臆病になる必要はないけれど、
ネット上にある自由さは、ある種の危険性をはらんだものだということを、
しっかり認識していないとダメなのだ。

その危険には2種類あると思う。
相手が言っていることを、そのまま鵜のみにして、信じきってしまうことから
生れる危険。
そして、相手に自分の実態が見えないのをいいことに、次々と嘘を重ねていって
しまう危険と。

作者の栗本薫氏は、自らも、パソコン通信をやっているだけあって、すごく
そういう状況には通じているようです。

ネット上で、「姫」と名乗ってバーチャル・アイドルとして行動する「男」姫野。
オフ会に出てこないことで、正体を疑われるのを恐れて、嘘に嘘を重ね、
あるとき、「オフ会に出席する」ことを宣言。

ところが、その約束の場所で、1人の女子大生が殺される・・・。
彼女は、「姫」として殺されたのか?それとも?

「姫」を名乗っていた姫野は、戦々恐々としているのだけど、こいつには、
正直、なんの同情もできなかった。
すべて自業自得。
それどころか、周囲の人間までも巻き込んで、殺人事件があってさえも、
反省の色が見えやしない。
絶対、友達にはしたくないタイプ。

警察は、そういう裏の事情を知らないので、捜査がかんばしく進むはずもなく、
「ぼく」は、友人姫野に泣きつかれて、事件に関わっていく。

だけど、この「ぼく」の考え方や行動も、「師匠」を見習おうとしてはいる
みたいなのだけれど、どこか、子供っぽくって頼りない(笑)
捜査には素人の浪人生なのだから、それで当たり前か。

むしろ、「姫」ファンクラブの中に、みょうに気になる奴がいたりして(笑)
「わるいやつー」とか言いながら、憎めないタイプ。
実際に関わったらどう思うか分からないけど。

終盤、やっと、伊集院大介が登場してくれて、がぜん、ミステリとしての
面白さが出てくるのだけど、ラストは、なんだか、後味が悪くて・・・。
別に、勧善懲悪がいつでも正しいと思っているわけではないけど。

ああ、なんか、オフ会に出たことなくて、こういうのを読んでしまうと、
「オフ会って怖い」とか思ってしまう人が、たくさん出てきそう。
それで、オフ会を敬遠してしまうのは、それは、なんだか、もったいない。
ネットが絡んだ殺人事件というと、どうしても、それがメインになって
しまうみたいだけれど、、、

便利で楽しいものを、ちゃんと、便利で楽しく使っていれば、こんな事件は
起きないのにね・・・。


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