◆回廊亭殺人事件◆東野圭吾◆
(光文社文庫 ISBN4-334-71968-6)


富豪、一ヶ原高顕の遺言状の公開にあたって、一族が回廊亭に集められた。
その中には、1人、血縁者でない菊代が含まれている。
彼女は、本当の菊代ではなく、その真の目的は、半年前の心中事件の真相を
探ること。
だが・・・。

事件の夜、そこにいた人間が容疑者であるという点で、ある意味、
クローズド・サークルものに近いと言っていいでしょうね。

かつての「自分の」心中事件の真相をさぐる老婆。
それ以外の、誰が犯人であってもおかしくない状況。

その心中にいたるまでの状況が、彼女の一人称で語られて、思いっきり
彼女に感情移入してしまいました。
だから、事件を捜査する刑事が、彼女に疑いの目を向けないようにと、
どきどきしながら読み進んでいました。
でも、矢崎警部の鋭い視線が・・・。
彼女のために、心配せずにはいられませんでした。
徐々に、その輪が狭まっていくことを・・・。

若い3人のいとこたちの、それぞれの心の行方。
それが、本人もそれと知らずに、事件に大きな影響を与えていきます。
思いが、純粋であるからこそ、よけいに。

そして、出会ったときから、見透かされそうな危惧感を彼女に与えていた直之。
いかにも、いろんな鍵を握っていそうな男。
亡くなった高顕の後継者となれそうな唯一の人物。
彼は、何を知っているのか?

殺人の動機やトリックに、それほどこった作品ではないのですが、
切ない情感に満ちていました。
回廊の形をした旅館回廊亭の持つ空気。

そして、明らかになる意外な真犯人と、そのラスト・シーン。
人間って、哀しいものです。


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