◆ウォッチャーズ◆ディーン・R・クーンツ、訳:松本剛史◆
(WATCHERS 文春文庫 ISBN4-16-713613-9、ISBN4-16-713614-7)


運命に導かれたかのような、トラヴィスとアインシュタインの出会い。
人生に絶望し、過去を旅することしかできなくなった男と、
まるで知能を持っているかのようなレトリーバー。
お互いが、お互いにとってどれほどの意味を持つかは計り知れないほど。

そして、ノーラ。
自らを深い深いところに閉じ込めて生きてきたノーラを初めて外の世界に
導く2人との出会い。

この3人の関係が、静かに静かに深くなっていく様子は、
こちらまで幸せな気分になります。
深い傷を持つカップルを、癒して行くアインシュタイン。
そして、きっと、そのことでアインシュタイン自身も幸せを感じていたはず。
彼も、また、心に傷を持っているから。

なのに、そんな彼らを追う影。
たくさんの人間が、それぞれの思惑から彼らを追う。
そっとしておいてあげてほしいのに。
望みはそれだけだったのに。

けれども、誰よりも何よりも悲しいのは「アウトサイダー」の存在。
悲しいのは、「アウトサイダー」自身が、自らがおぞましい姿をしていることを
自覚していること。
自らが異様で、人に受け入れられる存在でないことを知っていること。
そして、自らがこうありたい、こんな風に人に愛されたいと思う、
その通りの存在を目の当たりにすること。
こんなに残酷なことがあっていいでしょうか。

「アウトサイダー」が、あるべきところに帰り、穏やかにいてほしいと
心から願わずにいられません。

そして、ラストシーン。
涙なくしてはいられませんでした。
私も、アインシュタインを、思いっきり抱きしめてあげたい。


BookTopへ
Topへ