◆いちばん初めにあった海◆加納朋子◆
(角川書店 ISBN4-04-872995-0)


収録:いちばん初めにあった海、化石の木


「いちばん初めにあった海」
アパートの、周囲の音の煩わしさ。
暴力的とも言えるほどの騒々しさを周囲に撒き散らして、
なんとも思わない、いいえ、そういうことをしているという
認識しかない住人たち。
それは、確かに、千波にとって、ものすごい苦痛であったことでしょう。
彼女の置かれた状況を知ると、いっそう、そう感じます。
過去の傷に心を縛られて、逃げ出せないでいる千波。
彼女が見付けたの1冊の本。
読んだ記憶どころか、見覚えさえない本。
そして、その中にはさまっていた1通の、封印されたままの手紙。
そこに書かれていたのは・・・。
差出人<YUKI>とは誰なのか。
なぜ、その人に思い当たらないのか。
そこから始まる、千波の心の旅。

深い傷を負った時、傷を傷として受け入れることはとても辛い。
人の心って不思議。
いろんな方法で、自分を守ろうとするのですね。
それにしても、なかなか、YUKIの正体に気付かない千波に、
もどかしい思いをさせられました。

作品の中で千波が読むもう1つの「いちばん初めにあった海」も、
とても素敵な作品。
実在するならば、ぜひとも、この手にとってみたい1冊。


「化石の木」
幼い頃から化石に興味を持っていた少年。
化石の木の前で出会った不思議な少女。
2人の関係は、なんだか微笑ましい。

そんな「僕」が問わず語りに語る1冊のノートの話。
そこに描かれたのは、なんとも切なくも痛々しい物語。
母親と、幼い少女の心痛む関係。
大人になりきれない少女が母となるなんて。
少女は、母親として見なければ、可愛らしい、いかにも
少女、少女した女の子だけれど。
子供は、子供を育てられない・・・。
幼子の瞳が悲しい。
そんなある日、沸き起こった事件。
それを見守っていたのは、1本の木。
大いなる自然の力。
母なる大地に根を張るものだけが持ちうる力でしょうか。


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