◆陰陽師−飛天の巻◆夢枕獏◆
(文芸春秋 ISBN4-16-315650-X)
収録:天邪鬼、下衆法師、陀羅尼仙、露と答へて、鬼小町、
桃園の柱の穴より児の手人を招くこと、源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと
「陰陽師」阿倍晴明シリーズの2巻目。
あいかわらず、晴明と博雅のコンビは、実にいい雰囲気。
晴明が謎をかけるようなことを言い、博雅が煙に間まかれてすねる感じ。
その癖、お互いがお互いを、ものすごく好きで、大事に思っている。
晴明に持ち掛けられる様々な不思議に関する依頼。
それを解決に出向く時、その隣りには博雅が。
その時の2人の掛け合い。
−「ゆこう」
−「ゆこう」
−そういうことになった
このリズムがすごく好き。
私の好みにぴったりくるのです。
また、博雅は、確かに、ある意味単純なところもあって、分かりやすい。
でも、それでいて、決して、晴明に心酔したとしても、彼に流されることはない。
武を重んじながら風流を解し、特に笛の名手である漢。
いい漢だな、博雅は。
晴明がつぶやくのもよく分かります。
自らは、あやかしの者たちとばかり接していると、こういった、
博雅のような男はきっと、大いなる癒しにもなるのでしょう。
さらに、博雅は、晴明のように考えての結果でなく、理屈でなく、
直感で真実に切り込む力を持っているのです。
その何気ない言葉が、時に、晴明の思考に新たな方向性を与え、
ことを解決に導くことさえある。
時に、その人のよさを周囲に利用されたとしても、
おおむね、誰からも愛される男。
これって、ポアロに対するヘイスティングスの位置みたいですね。
この巻からも、映画に取り入れられたエピソードがあるようで、
読んでいて、「おお、これは」と思うところがあるのも、
なんとなく嬉しいところ。
それにしても、夢枕獏、これを書くのに、ものすごい資料に
目を通したのでしょうね。
出典となっている古典の多さには舌を巻きます。
その中から、私でも知っている有名なエピソードを含め、
様々に作品に取り込んでいる。
「露と答へて」の逸話は、好きな話の1つ。
やんごとない姫君の駆け落ちの顛末とその真相。
切なくもほろ苦い。
「魔」というものの多くは、人の心の外ではなく、
内に存在しているのかもしれないですね。
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