◆行きつ戻りつ◆乃南アサ◆
(文化出版局 ISBN4-579-30386-5)
収録:姑の写真(秋田・男鹿)、一粒の真珠(熊本・天草)、
微笑む女(北海道・斜里町)、最後の嘘(大阪・富田林)、
青年のお礼(新潟・佐渡)、母の家出(山梨・上九一色村)、
湯飲み茶碗(岡山・備前)、姉と妹(福島・三春)、
Eメール(山口・柳井)、越前海岸(福井・越前町)、
泣き虫(三重・熊野)、春の香り(高知・高知市)
なんて優しい旅の数々。
それぞれに、心に屈託を抱えた女性たち。
旅の風景が、出会う人たちが、彼女たちを癒していきます。
旅先の風景というのは、どこか特別で、日常を離れた世界は、
それだけでも心を解き放ってくれます。
そこに、懐かしい人がいれば、なおのこと。
「姑の写真」
生前、反りのあわなかった姑の死後、姑が少女時代を
過ごした町を訪れる旅。
相手の故郷を訪れることは、多少なりと、相手の心に
触れることでもあるのでしょうね。
「一粒の真珠」
夫の暴言の数々から逃れて訪れた町。
旧友との邂逅。
過去に誰かを傷付けた言動が、自分に跳ね返ってくることもある。
でも、それに気付くことで、何かが変わることもあるのでしょう。
「母の家出」
家族に、「窓ガラス」のようにしか見られないなんて、寂しい。
それでも、そんな家族でも、大事に思えば耐えて行くことも
できるでしょう。でも、それにだって限度がある。
ふっと、そんな毎日から飛び出してみたくなる。
それを実現するには、勇気が必要だけど・・・。
「湯飲み茶碗」
陶器を映画に置きかえて考えてしまう・・・。
好きで始めたものでも、少し分かってくると、人より詳しいことに
優越感を抱いて、分かったようなことを言ってしまう。
心でなく、頭で判定するようになってしまう。
そんなのって寂しい。
「好き」が、「好き」でなく「知識」が先行するなんて、イヤだもの。
「Eメール」
文字だけで交わされるやりとり。
相手の筆跡すらわからないけれど、間違いなく相手はそこにいる。
かつての同級生と、交わし始めたメール。
昔の思いが甦って、かすかにおぼえるときめき。
いざ、直接会うことになってふくらむ想像。
Eメールだったからこそ始まる出会いもあるのですね。
BookTopへ
Topへ