◆エンプティー・チェア◆ジェフリー・ディーヴァー、訳池田真紀子◆
(THE EMPTY CHAIR 文芸春秋 ISBN:4-16-320400-8)


勤務中の事故により麻痺した全身を少しでも改善する可能性があるならと、
はるばるノースカロライナまで警官であるアメリア、
介護士のトムと出向いたリンカーン。
そこで出くわしたのは連続婦女暴行犯とみなされる少年の捜索劇。

NYでの知合いのいとこが偶然その町の保安官をしていたため、
依頼を受けて、少年が監禁していると思われる女性の居場所を、
残された証拠から突き止めようとするリンカーン。
あいかわらずの、アメリアとの息のあったコンビはさすが。
でも、土地鑑も、馴染みの人間もいない土地では、
まるで彼らは陸にあがった魚。
ましてや、周囲に歓迎されないとあっては・・・。

保安官補たちの敵視。
町のごろつきたちの横槍。
必死で捜査する人間に対して、自分たちの面子や利益のほうが
大事だなんて態度を、よくも取れるものだと腹が立ちます。
かと思えば、数少ない協力的な人間はアメリアに色目を使うし。
でも、そんな中でも、アメリアは友情を築くことができる。
それが、なんだか嬉しかった。

逃亡犯である少年ギャレットは、「昆虫少年」と呼ばれるほど、
虫たちに詳しい知識を持っています。
というより、孤独な少年の唯一の友達が虫たちだったから・・・。
そんな少年が、他の人間に危害を加えたりするなんて。
でも、いろんな証拠は、間違いなく彼が犯人であることを示し、
第一、 ギャレットがリディアを拉致して行ったことは事実。
いったい、なぜ?

リンカーンたちは、ギャレットを見付けてひどい目にあわせようという
連中に先んじて、少年を見付けることができるのでしょうか。
残されているのは、本当に微細な証拠物件のみ。
そこから、いったい、リンカーンの頭脳は、どんな筋書きを
見付け出すのでしょうか。
なにしろ、この虫少年、なかなかどうして頭がいいのです。

実際に、リンカーンの目となり手足となって少年を追うのはアメリア。
いざ、少年と接した時、アメリアの認識は、大きく覆ります。
そして、なんと、とんでもない行動に。

信念のためとはいえ、なんて思い切った行動。
まさに、命懸け。
そして、皆を裏切る行為。

正しいと信じた道を進むことに躊躇しないといえば聞こえはいいですが、
なんて無鉄砲。

第一、 アメリアの信じたことは、本当に正しいのか、どうか。
それをはっきりさせないままに、引っ張りまわされて、
終始、はらはらし通しです。
アメリアが、正しければいい、そうであってほしいという思いと、
アメリアとともに、こちらも騙されているのではないかという不安。

アメリアもそうですが、拉致された女性の勇気。
絶望的に思える状況の中、必死にそこから逃れ、
生きようとするその姿。
素晴らしかった。

緊張感の中、最後まで引っ張っていかれました。

ずっと、このタイトルの意味が分からなかったのですが、その意味に、
なんだかやられた気がします。
人の心って、なんだか、悲しい。

シリーズ続編が待ち遠しい。


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