◆悪魔の涙◆ジェフリー・ディーヴァー、訳:土屋晃◆
(THE DEVIL'S TEARDROP 文春文庫 ISBN4-16-721871-2)
大晦日のワシントンの地下鉄で起った銃の乱射事件。
それは、続く戦慄の事件の予告編に過ぎませんでした。
やがて市長に届いた脅迫状。
市民の身代金はなんと2000万ドル!
ところが、身代金を払おうにも、受け取るはずの男はなんと交通事故で死亡。
予告された、共犯者による無差別殺人を止める方法はあるのか?
手がかりは、たった1枚の脅迫状。
その脅迫状から犯人像を割り出すために出動を要請されたのがパーカー。
でも、彼にとって、それは不本意なことでした。
それによって、離婚した前妻に、子供の養育権を奪われることを恐れているから。
とはいうものの、事件を引き受けてからのパーカーのお手並みは、
本当に素晴らしいです。
言葉遣い、句読点の打ち方。
そんな些細なことから犯人像を浮かび上がらせていきます。
これは、ちょこっとだけ登場したリンカーン・ライムの仕事の文書版ですね。
その分析能力は、ライムに勝るとも劣らない。
こういう頭の切れる専門家って、惚れ惚れします。
しかも、仕事一筋でなく、(彼の普段の仕事は、もっと平和な文書の鑑定)
子供をこよなく大事にしているところが、また魅力の1つ。
でも、それは、逆に言うと、弱点ともなりうるのですが、、、
もう1人の中心的人物が、ルーカス。
FBIの支局長代理。
過去に傷を持つ女性。
でも、そのプロ意識はさすが。
だてに支局長代理をやっていません。
なかなか頭も切れて、パーカーの分析を信頼しています。
4時間ごとに繰り返される無差別殺人。
それを食い止めなければという焦燥。
それを押さえて証拠を分析し、殺人鬼の次なる標的を探し当てようと必死の捜査側。
タイムリミットが切られた中、限られた情報だけを頼りに前に進むのって、
限りなくスリリング。
殺人鬼<ディガー>は、悲しい存在です。
精神を病み、指示を出す男からの、実行中止の指示がないがために
ひたすら、指示通りに殺人を繰り返すなんて。
殺人に対して罪の意識のまるで持てないこういう男を利用するなんて、
まったく、ひどい男もいたものです。
捜査に直接は加わらないものの、ものすごく気に入ったのがケネディ市長。
最初は、保身のために捜査に口をはさもうとする、まぁ、よくあるエライさんだと
思っていました。でも、違っていました。
彼が、市長であり続けたいと願うその理由。
そのために取った行動の中には、ばかげたものもありました。
でも、なかなか伝わってこない捜査の情報を元に動いたにしては、
なかなかたいしたものです。
それに、妻クレアとの関係もとても素敵。これは、ポイント高いです。
それから、素晴らしいケイジ捜査官。
こういう男は、絶対に敵にはまわしたくないですね(笑)
終盤、突如訪れる殺人鬼<ディガー>との対決。
大晦日の花火の下、激しい戦い。
衝撃のクライマックス。
信じられませんでした。まさか、そんな。
要所要所で表れる「3羽のタカ」のクイズが、なんとも象徴的でした。
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