◆安政五年の大脱走◆五十嵐貴久◆
(幻冬舎)
すごくテンポがよくって、話に勢いがあるから、
あっという間に読み終わってしまった。
しかも、読後感が痛快!
こういうエンタメ系作品は、だ〜い好き♪
若かりし日、兄が家を継ぎ、冷遇されていた井伊直弼。
私は、歴史上の知識として、井伊直弼というと
「安政の大獄」「桜田門外の変」ぐらいしか
知らなかったので、そんな井伊直弼が、
垣間見た美蝶という女性に一目惚れした展開は、
人間くさくっていいなぁ、と。
でも、それが全ての始まりになってしまったなんて。
月日が流れて直弼が大老の地位を手にして、
偶然見掛けた美蝶にそっくりな美雪姫。
その美雪姫を手に入れるために仕掛けた罠。
動機が動機だから、同情の余地はあるのだけれど、、、
策略を立てたのは側近の主膳。
正体不明の恐ろしい男。
頭は恐ろしく切れるから、本当に恐ろしい。
その罠は、美雪姫の津和野藩の藩士たちを
脱出不可能な山の上に閉じ込め、人質とすること。
そんなことをして美雪を手に入れても、
彼女の心を手に入れることなんて、ありえないのに。
手に入れた権力と、屈辱の中にあきらめたかつての恋。
それが、直弼にそんな判断すらできなくしてしまったのか。
諌めようとする外記の声も届かないほどに。
けれど、だからと言って、美雪を、意に反して
直弼の側室になんてさせられない。
藩士たちは、大事な姫を守るため、
自らのプライドを守るため、脱出を決意する。
その方法を知った時、タイトルに含まれた意味に
気付いて、納得、納得。
そうだったのね。
あの音楽が、頭の中に響いて止まらなくなってしまった。
平常時の上下関係もなく、それぞれが、
己の持つ能力を発揮して道を切り開く。
その努力、その心意気!
なんて気骨ある漢(おとこ)たち。
活躍したのは、武士だけではないというのも素晴らしい。
偶然、巻き込まれて連れて来られた商人の宗達。
飄々としていながら、商人ならではの抜け目なさ(笑)
作戦は、血のにじむような努力の中、
また、様々な犠牲の上に、
確実に前進していく。
作戦を進める上で出る音をごまかすシーンは、
すごくユーモラスで笑ってしまった(^O^)
美雪が、外記を懐柔していく様子は、
なんだか微笑ましかった。
むしろ、外記は、美雪に心惹かれていく自分を
楽しんでいたのではないかと思うし。
そして、怒涛のラスト。
息詰まるような駆け引き。
まさか、あんな展開になるなんて。
極上エンタテイメント。
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