◆アンドロメディア◆渡辺浩弐◆
(幻冬舎文庫ISBN4-87728-6)


バーチャル・アイドルを生み出して、1人のアイドルで、より大きく儲けよう。
すべてはそこから始まったのです。
芸能プロダクション社長の高中は、天才プログラマーである息子タカナカヒトシに、
「アンドロメディア」計画を持ちかけました。
それは、ヒトシにとって、千載一遇のチャンス。
彼は、持てる能力と、父親の潤沢な資金によって、
バーチャル・アイドルAIを生み出します。
でも、ヒトシの計画の無謀さに、高中社長は計画の中止を命じます。
すべては、動き出してしまっていることも知らずに。

一方、パソコンにひとかたならぬ実力を発揮する高校生の少年ユウ。
彼が、AIに出会ったことから、物語が急激に展開します。
そのあまりの実力のゆえに、彼が、パンドラの箱を開けてしまったから。

自らの意思で考えることも動くこともでいるのに、実体を持たない
バーチャルな存在AI。
彼女が、ユウと心を通わせて行き、それゆえに、自分に実体がないことを
悩む様子は、とても切なかったです。
AIは、自分で好き好んでバーチャルな存在であるわけではないのですから。
なのに、そんな彼女に「意志」や「好奇心」、「感情」を与えてしまったのは、
人間の罪だと思わずにいられませんでした。
バーチャルなものに「心」あるいは「魂」と言ってもいいでしょうが、それを
与えるのなら、それゆえに彼らが背負うことになる苦しみまでも、一緒に背負う
覚悟が必要でしょう。
家庭環境からコンピューターにのめりこんだタカナカには、それができたのかも
しれませんが、彼の思いは、他の方向へ向ってしまったようで・・・。

やがて、ユウによって、行動への枷をはずされたAIは、とんでもない暴走を
始めます。
そうなってみると、実に、電脳世界というのは、脆いものです。
そして、そこから逃れることも、それと戦うことも、不可能に見えてしまう。

残された武器は1つ。
始まりであり、終わりでもあるもの。
AIが、気にかけ、探していたものとの出会いがそういう形であったことが、
とても残念です。
彼女が変わってしまったことも。

それにしても、この作品の舞台は2000年。
近未来として描かれたのであろう、その時に、すでに突入しているのですね。
なんだか不思議な感じです。

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