◆鈍色の歳時記◆by阿刀田高◆
(文藝春秋 ISBN4-16-318670-0)
収録:冬日和、豆撒き、水ぬるむ、黄水仙、父の日、半夏生、
百物語、油照り、宵待、鉦叩き、秋出水、年の瀬
季語から生み出される12の阿刀田ワールド。
いつもそうなのですが、この世界は、本当に日常のほんの隣り。
ちょっといつもと違う角を曲がったらそれだけで飲み込まれていきそうな、
ぽっかりと口を開けて待っている世界。
これを読んでから、一見のどかな俳句の中にも
何か感じるようになってしまいそうな・・・。
超自然的なことなんて何もなくても、だからこそ、自分の足もとを掬われる
ような恐怖に捕らわれる「冬日和」。
一見して傍からは分からない狂気を隠し持った人々・・・。
想像力の恐怖、「水ぬるむ」。
そう、真相がわからないまま、想像だけが膨らんでいくことほど怖いものは
ないというときがあるのです。
ブラックな世界の中で、ほんわか温かい気持ちにさせてくれる「鉦叩き」は、
特にお気に入りです。そういう直感って確かにありますから。