□ ヤマゴとゴギ □
大陸からの高気圧が勢力旺盛に大気を暖め、早朝の川面は霧が立ち込めるほどであった。
気温は刻一刻と上昇し、外皮に包まれ、土手の桜のつぼみは、外皮の中で薄紅を引きつつ、今か今かと出番待ちしているかのようである。
昼前になると、水面を波立たせるほどの風か吹き出した。
西国からの黄色い風は、天を霞ませる。
いきなり、二連発でくしゃみが出たが、相変わらず水面を流れるフライには魚が食いつかない。
昨年、偶然遭遇した本流の良い流れは、すっかり土砂の堆積と流れる筋すら変わっていた。
あの、流下するダンが流れ集まる瀬からつづくトロ場。
護岸と沈み石とが作り出す多角的な流れ。
それらが全て埋まり、平たくなり、真っ直ぐになり、およそ渓流魚など付きそうも無い。
いかに昨年の台風が甚大であったか、釣りを通じて知り得るなんて、不思議な感覚である。
車を上下流に走らせ、瀬を叩き、プールで沈め、なすすべも無くある支流へ逃げ込んだ。
枯れ枝と倒木と残雪の世界に、この3月から臨むことになろうとは・・・
幸い、谷間の流れは、忌々しい風が通り抜けないばかりか、雪代も既に過去のものになっている。
黒っぽいカワゲラとヒラタカゲロウがハッチしていた。
この流れを取り巻く世界は、春全開モードである。
6ftの四角バンブーに#3ラインを乗せ、#11のブラックパラシュートを流れの脇筋に置く。
ゆっくりと捕食するヤマメにこちらもゆっくりと合わせを入れる。
側線に沿ってオレンジの帯をまとうヤマメである。
ヤマメとアマゴの中間、、ヤマゴ?
やっと魚も調子付いて来たのか、瀬尻から、落ち込み脇から反応する。
しかしだなぁ、おっとり過ぎて、フライを上手く咥えきれない。だから、こちらも合わせ損なう。
慣れない魚と慣れない釣り人との刹那である。
遡上止めの小滝を越えると、ヤマメに代わってゴギが流れに付く。
まるで盛期のコンディションであり、少々戸惑うのだが、遡行するにつれ感覚が戻ってくるようだ。
春は変化の多い季節。
週を追うごとに山、渓、木々、魚は色付き、益々フライフィッシングが楽しくなるだろう。
ほろ苦い春の使者を見つけた。
これからは山菜取りも楽しみになるだろう。
フキノトウの三杯酢合えを摘みつつ、ふと忘れ物に気が付いた。
温泉、つかるの、忘れてた・・・