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屋久島へ行こう

その2



縄文杉に向かって


屋久島一番の観光の目玉、縄文杉ですが、往復で七時間以上歩かないとお目にかかることはできません。我々も、探検隊を名乗っている 以上、縄文杉を見なくては名がすたります。

三日目の朝、四時三十分に起きて縄文杉に向かいました。車を荒川ダム登山口まで走らせ、歩き始めました。まだ、日が昇る前なのであ たりは真っ暗です。頭につける懐中電灯が役に立ちました。

かつて切り出した屋久杉を運びだすためのトロッコの線路が残っていて、そこを 歩き始めます。それほどのアップダウンもないので気持ち良く歩けます。澄みきった空気に杉の香りが混じっていい気分です。風邪気味だっ たチカ隊員も歩くにつれて元気になってきました。



線路橋線路橋の恐怖

川が流れる山あいをぬうようにトロッコの線路が作ってあります。川は縦横に流れているので、線路は何ヵ所か、川を横切らなくてはいけま せん。そこは手すりもなく線路に足場板が渡してあるだけの橋がかかっています。

長いところで五十メートルぐらいはあるでしょうか。暗い うちは、下がよく見えないので平気ですが、明るくなってくるとかなり下のほうに川が見えるるので足がすくみます。私たちが行った時は天 気も良かったので、足場板もすべらず、風も無かったので揺れませんでしたが、雨、風のときはかなりのスリルでしょう。高所恐怖症の人は、 ちょっと渡れないと思います。




小杉谷小学校跡

歩き始めて一時間、二つ目の大きな橋を渡ったすぐのところに小学校の跡地があります。

そこで朝食をとることにしました。かつて屋久杉を 切り出していた頃、ここにちょっとした集落があり、百世帯ほど住んでいたそうです。平らな場所があまりないところですが、小学校は狭い ながらもグランドがあり、ここで勉強できたこどもたちは幸せだったろうなと感じさせられました。その小学校の上に林業に従事する人たち の家があったとのことです。

鹿児島より南の島ですが、標高660メートルで空気も湿っているので、冬には雪も降ったようで、雪合戦をした子供たちの写真が貼ってあり ました。昭和四十五年に屋久杉の切りだしは取りやめになりましたので、小学校も閉鎖されました。





林道入口ウィルソン株

小学校正門から一時間ほど歩くと線路の道も終わり、いよいよ本格的な山道にはいります。雨が多いため、道がえぐれて歩きにくいところも あります。山道をさらに一時間ほど歩くと、大きな切り株があります。

大正三年にアメリカの植物学者のウィルソンが雨宿りをしたのでその名前がつけられたそうです。大きな切り株で中に入ると神棚が祭ってあ り、広さは畳十八枚分にもなります。見上げるとぽっかり穴が空いていてまわりの杉の枝が見え、その間から空が見えます。

この株は、豊臣秀吉の時代に切り取られたもので、以前からきこりの人の休憩所のようになっていたとのことで、その存在は知られていたそ うです。ウィルソンが発見したわけではありません。

切り株の大きさからして切られた杉もさぞ巨大だったことが想像されます。それを動力も満足な靴もない豊臣秀吉の時代に山から運びだした ことは、少し歩いてふうふう言っている私たちからは想像もできない厳しさだったでしょう。



パトロール隊の話

ちょうどウィルソン株のところで、ウィルソン株を三十年間見続けているという地元のパトロール隊の隊員に会ったので、同じ隊員同士、 情報交換をしました。
ウィルソン株は入り口があって人が出入りできるようになっていますが、他にもところどころすきまがあって光がこぼれています。以前は 入り口だけがあいていたそうですが、だんだんすきまがふえてきてこのままでは補修が必要になってくると言っていました。登山道も人が たくさん歩くようになったのでだんだん荒れてきたそうです。


縄文杉縄文杉

ウィルソン株からさらに険しい道を一時間三十分歩き、大王杉、夫婦杉を経て、いよいよ縄文杉に到着です。写真では何度も見ましたが、 いざ実物をまじかに見ると感激もひとしおです。曇り空が続いていた空模様でしたが、縄文杉に着いたら、明るくなってきました。

保護のため、足元までいくことはできませんが、展望台からすぐ近くで見ることができます。よく見ると、いろいろな色の葉っぱが見えます。 これは、他の木の種子が、縄文杉について大きくなっているからです。木というより、岩か山のようです。やはり、年月の重みでしょうか神 々しいものを感じます。

出発から九時間半かかって、無事、車がとめてある荒川登山口まで、たどりつきました。足は疲れていましたが、頭はむしろさえて疲労感は 感じませんでした。新鮮な「気」がいっぱい体の中にはいったのでしょう、さわやかな気持ちでした。



屋久島温泉

汗もかいたので、温泉にはいってさっぱりすることにしました。国民宿舎の浴場でもある屋久島温泉に行きました。国民宿舎の受付で二百円 払って浴室にはいると、海に面したところが全部ガラス窓になっています。夕陽がしずむところが見えました。建物は、断崖絶壁に建ってい るので、かなり下のほうに海が見えました。
山歩きで疲れた体を癒しながら、今日はいい一日だったなあとゆったりとした気分になりました。



喫茶店ペイタ

「登山の疲れを甘いもので」とばかりに、ぐるめ担当のチカ隊員は、ケーキのおいしい店はチェック済みです。屋久島温泉からすぐのところ の喫茶店ペイタにはいり、コーヒーとケーキを頼みました。愛想のよい奥さんと大阪弁のご主人の明るい雰囲気の店です。ケーキも素直な味 でおいしかったです。

屋久島は、いい所ですが、外からきても仕事がありません。屋久島に魅せられて外からやってきた人は、何か商売をするのが収入を得る方法の ようです。それでも、観光客が沖縄のようにくるわけではないので、商売も大変なのでしょう。かといって観光客が増えてきたら、今の屋久島 のよさは失われてしまうし、難しい問題です。

旅行者の勝手な希望は、いつまでも今のままの屋久島であってほしいけれど、便利でもあってほしいし、住民が幸せに生活できるだけの収入 が得られようになってほしいです。そのバランスがくずれてしまうと屋久島も他の観光地のようになってしまうのでしょう。



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