「音楽と遊ぼう!騒ごう! in 平塚」報告
「知的障害者とオペラ歌手が一緒に歌を歌ってもらえるといいな!!」。私も最初は軽い気持ちで話題に出したのですが、あとで実行委員長になる杉崎さんの奮闘と、田辺君とピアニスト川手さんの快諾により、とんとん拍子にこのイベントが実現されました。イベントの企画やら会場準備やら、急ごしらえのボランティアの力による開催でしたが、楽しい一日となりました。そして、さすがはプロの田辺君、感心しました。たいへん遅くなりましたが、ここにその報告をします。2001.12.31(あ)
目次
○田辺とおるのレポート:「ぼくの歌手キャリアのうち特別な意味をもつ本番がひとつできた」
○ピアニストの川手さん:「榑松さんの演奏に癒されるのは私の方でした」
○観客の感想:「魔女と握手でき喜んでいました」
○裏舞台から−スタッフの一言:「あらためて、彼らから教わったこと−−ありのままでいる。だから、生き生きとしている」
<まずはお礼:多くの人の協力で実現しました>
田辺君、川手さん本当にありがとうございました。ボランティアで取り組んだスタッフの皆様、お疲れ様。。
また、一緒に出演し、盛り上げてくれた「ハッピーフレンド」の皆さん、榑松さん、湘南養護学校の先生ありがとうございました。湘南養護学校のご厚意は忘れることが出来ません。
そして、なによりも遊びに来てくれた皆さんに、感謝いたします。ということで、最初に集合写真です。スタッフもあわせ総勢87名です。

<開催趣旨> 「知的障害者とオペラ歌手が一緒に歌を歌ってもらえるといいな!!」。そんな夢を実現するため、10月28日(日)「音楽と遊ぼう!騒ごう!in 平塚」を開催します。知的障害者が楽しいひとときを過ごせるよう、音楽と遊べる企画を考えてみました。「DJに合わせて踊ってもよし、絵を描いてもよし」がコンセプトです。 また、この企画の趣旨に全面的に賛同していただいた、ドイツで活躍しているオペラ歌手の田辺とおるさんとピアニストの川手美保子さんが、特別ゲストとしてこの交流会に参加していただき、プログラム後半にミニ・コンサートをしてくれます。参加者は知的障害者を中心に70名程度を想定しています。 参加してくれる人が一緒に遊べて交流できる場にしたいと思いますので、ぜひ、趣旨をご理解の上、ご参加下さい。 <日時> 2001年10月28日(日)開場13:30 開演14:00 <場所> 神奈川県立湘南養護学校(平塚市御殿4丁目14-1 TEL 0463-34-7212) <プログラム> 第一部 みんなで遊ぼう!騒ごう! 14:00〜ウィンディーと魔女の玉入れ合戦(お母さん方も一緒にどうぞ) 14:25〜ラート日本一選手特別演技 14:30〜ハッピーフレンドの活動紹介と演奏(一緒に歌おう!) 第二部 田辺とおるのミニコンサート(15:00〜16:00) ピ ア ノ:川手美保子 ・シューベルト 鱒 ・ムソルグスキー 蚤(のみ)の歌 −榑松直さん演奏− 線路は続くよどこまでも 隣りのトトロl アヴェ・マリア ・ヘンゼルとグレーテル オペラ「ヘンゼルとグレーテル」より みんなで歌おう!「翼をください」 <入場> 無料またはカンパ(上履きを持参してください) <主催> 「音楽と遊ぼう!騒ごう!in 平塚」実行委員会 <後援> 平塚市社会福祉協議会 |
<田辺とおるのレポート:ぼくの歌手キャリアのうち特別な意味をもつ本番がひとつできた>
第一部
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| ウィンディーと魔女の玉入れ合戦 |
登場前、安く見積もっても普段の倍は緊張している。オペラや歌曲集コンサートの類はお客様の反応によって舞台の内容を即興的に変えていく必要ないが、トークコンサートは言わばそれが生命線だ。酔っ払い・子供・聞かないワルガキ・寝ちまうオジサン・老人・・・・、随分いろいろなお客様を対象にトークコンサートをやってきたが知的障害者の経験はまったくゼロ。不安。第一部のゲームやダンスコーナーをよく観察してみなさんの反応や司会の語り口調などを参考にするつもりだったのだが、あまりピンとこなかった。ただ、
・ ひとの話しを聞かなくなるほど無節操に騒ぎたてることはない。むしろはにかんでいるようにおとなしい。
・ 騒いでるときに後ろからそっと親御さんが手を引くとすぐに静かにする。
ということはわかって一応安心することにした。
昔から僕のコンサートを聞いてくれている知人で重度障害の養護学校校長を長く勤めた方がいるので事前に助言を仰いだ。とおる君なら絶対大丈夫だよ、と勇気づけてくれたあと、@非常にゆっくり明瞭にしゃべること、A騒いだり踊りだしたりするだろうが、すべて喜びの表現なのでノッてる証拠と思うこと、を注意してくれた。最後にもういちどそれを頭で反芻して登場。
第二部
シューベルト作曲 ます
「オペラって知ってる人」と勢いよく手をあげたら、「ハイッ」と一番まえから元気な反応。女の子、中学生くらいだろうか。「すっごいなー,オペラ知ってるんだ!大人だってほとんど誰もしらないんだよ。ねぇ、オペラって何さ」「あのねー、歌とねぇ、劇やるの」「そうだよ、そのとおり。きょうはね,ドイツのオペラを歌いにきたんだ。オペラは物語が必ずあります。そのおはなしをするね」
興味深々の聴衆をひとりみつけた。幸先いい。この手で個人的に語りかけているあいだ、はきはきと全員に聞こえるようにやっている限りは他の聴衆もみんな興味もってみつめてくれる・・・のが普通。どうやらそのへんは、今日も普段のトークコンサートと同じ反応がかえってきている。
「こんどはのみの歌です。のみ知ってる人」「ハイッ!」今度は負けずに数人が手をあげた。この調子だ。「痒いよねぇ」というあたりは身振りまじりで大仰にやる。ゲーテの皮肉の説明はしないつもりだったのだが、思い切ってやってしまうことにした。「王様が蚤をとっても大好きで、かわいがるからお后やお姫様は、いくらかゆくてもつぶせない」という程度にやる。さすがに「権力におもねるおべっか野郎・・」は割愛。一曲目はドイツ語、つぎのは日本語だよ、といって歌へ
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| 田辺とおるの語りかけに真剣なまなざし |
「蚤(のみ)の歌」ニ題
ベートーベン作曲
ムソルグスキー作曲
20歳の榑松君を呼んでピアノをひいてもらう。開演前に楽屋で紹介してもらった。「はい、ピアノは好きだよ。はい、ピアノ弾くよ」とすがすがしいうけこたえ。物怖じしないんだなぁ、と感心する。
その榑松君の演奏にはとても感動した。かくも無垢に自分と「だけ」向き合って、自分のために「だけ」演奏する風格は、50年60年のキャリアをつんだ世界の名手からしか感じたことがない。淡々とピアノに向う。子供の発表会だってお客様の前で弾くとなりゃ、欲はでるものだ。趣味のアマチュアにだって「気分転換」とかなんとか、目的意識ってものがある。もしくは「道楽」という自覚がある。まして我々のような職業人の演奏は煩悩の塊といっていいだろう。「はい。5歳からやってるよ。ピアノは好きだよ。はい、練習するよ」という純真な受け答えが耳に残る。大家じゃなくても、ああいうふうに音楽と向き合える人はいるのだなぁ・・・。
途中でとまったらどうしよう。やめてもじもじしてたらどう対応しよう、という懸念はまったく杞憂。崇高な自分の世界に没頭して、榑松君は立派に3曲弾ききった。

榑松君の演奏
線路は続くヨどこまでも
となりのトトロ
アヴェ・マリア(シューベルト)
いいインターバルをもらったあと、「きょうはオペラのお芝居を歌うといっても、黒い服しかもってきていないので、ドイツで歌ったときの舞台の写真をみよう」とスライドを4・5枚みてから、お馴染みヘンゼルの写真へ。筋を話す、というのは事前の不安材料のうちでも、最も大きなひとつだったのだ。きっと彼らは「何がどうしてこうなって・・・」式の段階思考は得意でないだろう。なるべく状況説明を省き、森・小屋・貧乏一家・ほうき作りのお父さん・町で全部売り切れ・機嫌よく一杯のんでご帰還・・・などを点景風にしゃべる。もちろん忠告をまもってゆっくり大きな声で。
ハテ、一杯のんで機嫌よくなるというのは通じたかな?
おおむね、「幼稚園児でもわかるように」というあたりを念頭におく。幼稚園用の「パパの語るヘンゼル」は2年前にぼくの出身幼稚園のコンサートでやったことがある。面白いと思ってくれればちゃんと聞いてくれるものだ。
ここでも「ヘンゼルとグレーテル知ってる人?」「ハイッ!」のテを使う。今度は別の小さい女の子が答えてくれる。こちらはほんとに幼稚園くらいかな。

フンパーディンク作曲
オペラ「ヘンゼルとグレーテル」より
パパのお話の場
パパの帰宅・
村祭りの様子
魔女の様子をお母さんに語って聞かせる歌では、魔女に扮したスタッフに活躍してもらう。場内を暗くし、音楽のきっかけを決めておいてぼくに襲い掛かってもらう。逃げ惑いながら歌うのは実に息がきれるけど、こういう汗だくのエネルギーは必ず聴衆に伝わるものだから手抜きはしていられない。うしろにお菓子の家?を建てておいてくれたので格好の舞台

魔女の森
魔女の騎行はピアノでひいてもらう。魔女には会場をはしりまわって子供に掛けたり大人をからかったりしてほしいと頼んだ。
魔女の騎行
ヘンゼルとグレーテルを例によって会場から募る。ハイッと元気よくでてきたのが3人いたから、そのまま3人兄弟に仕立てて終曲を歌う。お菓子の魔女や宝物によろこぶお母さんのスライドも映写。

子供たちと再会
場内を明るくして、みんな起立してもらい、最後は全員で「翼をください」を歌う。中学校で歌った懐かしいフォークソング。終始非常によく聞いてくれていたが、明るくなって立ち上がるとホッとしたかのようにみんなウロウロあるきだした。ちょうど時間的にもこのくらいでよかったのかもしれない。

翼をください
「あ、俺こんなこともできるんだ・・・・」
と、自画自賛しながらステージをすすめることができた。
いつもながら「噺下手笑い上戸に助けられ」という川柳を思い出す。お客様に間合いをたすけてもらうことはいつもある。そういうキャッチボールができなくてはトークコンサートは成立しない。そこがこういう催しの場合どうなるか不安だったのだが、いつもと同様に助けてもらった。障害が重くてきちんと反応できないかと思いきや、そういう方もなかにはいらしたのかも知れないが、上述の如くぼくと楽しそうにやりとりしてくれる元気いい子供たちがいた。ホール出口でたくさんの方と言葉を交わし、障害者本人たちも親御さんも随分満足そうだったのはとてもうれしい。ぼくの歌手キャリアのうち特別な意味をもつ本番がひとつできた。
(田辺とおる)
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| 榑松さんの演奏に耳を傾ける川手さん |
先日の体験はとても貴重なものになりました。
大学で、知的障害者に対する音楽療法といった講義は受けた事がありましたが、聞くと見るではやはり違いますね。
何といっても榑松さんのピアノが印象的でした。
あの後、まだ自分の演奏が残っていなかったら涙が出ていたかもしれません。ピアノ教師の立場から見ると、彼をあそこまで導いてきた先生の努力、献身が思われます。そして演奏者の立場から見ると、もうそれは憧れです。
あんな風に弾いてみたい!!
癒されるのは私の方でした。
スタッフの皆様をはじめ、ボランティアとして会を作って頂いた皆様に御礼、お伝え下さい。
普段、狭い世界の中で生きているので、皆さんとの交流は、とても新鮮で刺激的でした。
本当にありがとうございました。
また、これからもよろしくお願い致します
(川手美保子)
<観客の感想>
○親御さんの声
先日はお招き頂きまして有り難うございました。
田辺さまのコンサートをすべて拝聴させて頂きとても嬉しく想って居ります。
内容的には玉入れでコミュニケーションを持っていき導入が良かった事、子ども達は内容が面白かったそうで魔女と握手ができ喜んでいました。魔女の話を所長さんとしたそうです。
田辺さまの話し方にとても品格を感じまして今後勉強させて
頂きたく存じました。お教えお導きが素晴らしかったので悟りの文を頂いたかのようにとても感動致しました。
今後の検討課題としては、湘南養護学校近辺の小中学校
(例えば中原小中学校及び金目小中学校等)にも開催のお知らせをした方が良いのではないでしょうか?
最後にステキな企画をして頂きました関係者の方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございます
○本人の声
楽しい音楽を聴いてよかった。