公演は無事終了いたしました。ありがとうございました!


神奈川新聞文化面にエッセイ記事が掲載されました 

「語り部」として歌う
初演時に思いをはせ  〜シューベルト「冬の旅」〜 田辺とおる
2006年2月22日(水)付け・神奈川新聞文化面

 シューベルトの歌曲集「冬の旅」を故郷横浜で五年ぶりに再演する。
今回はキーの高さの問題に取り組み、全24曲を原調から短3度下げて歌うことに統一した。ドレミ楽譜出版社から校訂版「冬の旅」楽譜を刊行することにもなったので、演奏の感触を参考に取り組もうと思っている。
  オペラでは、キーを下げてバスがテノールの役を歌うことはないが、歌曲は誰でも歌えるように一曲に対していろいろな調性の楽譜が存在する。シューベルトが作曲した原調は高声用なので、耳に親しいバリトン・バスの「冬の旅」は原調ではなく下方移調版だ。しかし移調の度合いについては「歌手の声の都合」による矛盾がまかり通ってきた。
  連作歌曲集では、曲間の緊密なつながりに作曲者の意志が込められている。だから本来、曲集全体を何度、と平行移動すべきだが、普及版のペーター版楽譜は曲ごとに歌手が一番歌いやすい調性を採用している。たとえば「ある曲は短三度、次の曲は長三度移調」した結果、テープの回転数が落ちた様に、曲間で突然半音下がったことになってしまう。今回はこれを整理する試みだ。
  多くのシューベルト歌曲は、バリトンのミヒャエル・フォーグルの演奏を前提にしながらも、高い調性で書かれている。これは熟考に値する事実だ。現代より半音以上低い当時の音階を顧みても「高声用マイナス半音」はバリトンには高すぎる。これはもう裏声混じりの軽い鼻歌だったとしか考えられず、現代の演奏会に聞くフルボイスは想像できない。
  シューベルトは、誕生して間もないピアノ伴奏歌曲「ドイツリート」という分野の確立者だ。彼の舞台はもっぱらサロン。「冬の旅」初演も友人たちの集まりだった。ビーダーマイヤー様式の絵画が描いたウィーンの家庭音楽の風景。中央に据えられたピアノの前身ハンマークラヴィーアに向かうシューベルトと、彼を取り囲む友人。楽器にもたれながら出来立ての曲を歌うフォーグル。宮廷歌劇場の大スターがオペラよりも高い調性で飄々と歌う。そんな味がリート黎明期の姿だったという想像は、大ホールでの演奏が定着した現代リート界にとって、示唆に富んでいる。
  とかくリートは高尚で謹厳と思われがちだが、ミュラーの詩はどうにも感傷的だ。ゲーテやシラーの華麗なる古典美よりポップスや演歌の歌詞を思わせる。サロンの語り部にはその方がふさわしいかもしれない。このころは現代の歌唱法よりもずっと「語って」いたのだろう。歌は元々そういうものだった。「吟遊詩人」という言葉が象徴する如く。テレビのない時代、「語られる歌」に人は心躍らせた。それっぽっちのドラマに感情をたかぶらせる繊細さがあった。
「冬の旅」を歌うときぐらいは往時をしのび、語り部でありたいと思う。

たなべ・とおる
声楽家(バリトン)。1961年生まれ。横浜出身、ドイツ・ベルリン市在住。二期会会員。フルート奏者を志し留学中、オペラ好きが高じて声楽に転進。ドイツを拠点に、オペラからミュージカル、独テレビドラマ、ナレーションまで幅広く活動。ホームページはhttp://www.tanabe.de

「冬の旅」全24曲演奏 28日、かなっくホール

 田辺とおるさんによるシューベルトの連作歌曲集「冬の旅」全24曲の演奏は2月28日午後7時から、かなっくホール(横浜市神奈川区民文化センター)で開催。
 演奏のほか、「菩提樹」「おやすみなさい」「凍った涙」などミュラーの原詩全曲を田辺さん自身の抄訳、朗読で紹介する。ピアノは川手美保子さん。4000円。チケット、問い合わせはサウンドポート電話045(243)9999。


多くの反響を掲示板に頂きました。ありがとうございました。

http://www.yk.rim.or.jp/~hirata/minibbs4/minibbs.cgi?view=216&page=216
http://www.yk.rim.or.jp/~hirata/minibbs4/minibbs.cgi?view=211&page=216





  横浜に生まれ、ベルリンに住む。ドイツ生活20年のキャラクターバリトン、
キャラバリ田辺とおるが5年ぶりに「冬の旅」を再演! 
おやすみなさい・凍った涙・菩提樹・鬼火・春の夢・孤独・郵便・しらが頭・からす・最後の希望・宿屋・勇気・幻の太陽・ライヤー弾き・・・・若者は恋に破れ、町を去った

連作歌曲集「冬の旅」全24曲
シューベルト作曲・ミュラー作詞
ドイツ語演奏・日本語訳詩朗読(田辺とおる訳)

ピアノ 川手美保子

2006年2月28日(火曜日)19時開演

神奈川区民文化センター・かなっくホールTEL:045-440-1211
JR京浜東北線「東神奈川」・京浜急行線「仲木戸」駅前

全自由席
一般4000円
割引3500円
  70歳以上と高校生以下(御本人様のみ)
  田辺とおるオペラ倶楽部会員(二枚まで)

お問い合わせ
田辺とおるオペラ倶楽部; 
Tel/Fax 045-711-4868 toruopera@infoseek.to
サウンドポート;
Tel. 045-243-9999 Fax 045-242-2257 info@soundport.co.jp 

主催 田辺とおるオペラ倶楽部
制作 サウンドポート
後援 (財)東京二期会・横浜音楽協会・横浜市芸術文化振興財団

★調性について★
 従来、バリトン・バスが「冬の旅」を歌う場合、どの程度下方移調するか、ということが不統一のまま演奏されてきましたが、原調の曲間調性感を尊重するため、今回は三度下方に平行移調いたします。

★特集「冬の旅」★
 以前の公演プログラムに書いた研究報告・エッセイ・日本語訳詩などを掲載してあります。
http://homepage1.nifty.com/opera/archives.htm