音楽雑誌「カンパネラ」(2004年2月号)です。

↓僕のホームページでこれに関してご感想等々頂きました。有難うございました。
http://www.yk.rim.or.jp/~hirata/minibbs2/minibbs.cgi?view=1013&page=1092

田辺とおる バリトン歌手

日本をドイツへ、ドイツを日本へ。
 ヨーロッパを身につけ配信する声楽家」

取材・文・撮影  ――― 伊東 雨音

この雑誌は2004年8月をもって休刊しましたが、バックナンバーは以下のところから購入できます。
http://www.artuniongroup.co.jp/campanella/backnumber/index.html


会うだけで人を惹きつける容貌、独特の語り口は、性格俳優という言葉を彷彿とさせる。しかしヴィースバーデンやハルバーシュタットの劇場で経験を積んだ真のオペラ歌手だ。輝きのある声、柔軟なセリフ回しと巧みな演技の三拍子揃った数少ない東洋人と、欧州でも定評がある。ウィーン郊外のメルビッシュ音楽祭でレハール《微笑みの国》を歌い(2001年)好評を博した。昨年5月にはイラク問題を音楽家の視点で考えたいと《バグダッドの理髪師》を日本初演した。(略)「子どもの頃からヨーロッパに憧れていました」。ともかくヨーロッパに行きたかった。一方、落語に傾倒する。彼のコンサートでは歌の合間のトークも特徴でそのファンも多いが、趣味を超えた落語のワザが随所に込められているのがわかる。(略)

 もともと西欧に興味があった田辺は「オペラは美術、建築、文学、すべてが統合されて表現される」と語る。衣装、台本、時代背景やそれを支える文化と歴史。それらすべてがグローバルにつながっているヨーロッパの社会。自分の表現の引き出しを広げたいと切実に思った。(略)「僕しかできないことをやりたい」宝塚劇場の前に行列ができているのを見ると「なぜクラシックにはこういうファンがいないのかと嫉妬する」という彼は、クラシック音楽をエンターテインメントと考え、その楽しさをより多くの人々に知ってもらいたいと切望している。(略)


 一つは、”ドイツに日本を、日本にドイツを”。日本の歌をドイツ語訳した歌曲集を出版し、日本語のローマ字表記もつけた。「日本ではたとえば《もみの木》や《ローレライ》なら誰でも知っているでしょう?しかも訳詩で愛唱している。ドイツでもそうできると思ったんです」。二つめには「ヴィンナーリート(ウィーン歌謡)」である。シャンソンやカンツォーネと同じく、親しみやすく歌いやすい民謡を日本語訳し、多くの人に歌ってほしい。「クラシックファンじゃない人に受けると思うんですよね。」(略)。三つめは「もちろんコンサート活動とオペラ」。独特の語りの入ったコンサートは喉への負担も大きいが、「これが自分のスタイルとして続けられるだけ続けていきたい」と意欲的だ。(略)

 彼のコンサートを聴いた人はリピーターになるだろう・・・そういうクオリティの高さと音楽の持つ温かさや幸福感がある。(略)先般、封切られた映画《ラスト・サムライ》で渡辺謙の独仏スペイン語版吹き替えを担当した。ドイツでテレビの料理番組に出演するなど、ますます活躍の場を広げている。クラシックの裾野だけでなく聴く人の満足を広げてくれそうなバリトンである。