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特集: 奉仕活動・体験活動・ボランティア活動の総合的推進 ■キーワード 地域で親子音楽・オペラ体験 ルポルタージュ 各地域ホールでの、低予算で充実した民官協力型文化事業の実現を目指して 世界のおとぎ話とオペラ夢コンサート(葛飾区) |
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オペラ鑑賞 プラス 出店、縁日、展示・体験活動 財団法人葛飾区文化財団が、今年、創立十周年を迎える葛飾シンフォニーヒルズの記念事業として、8月17・18日の二日間に渡って開催する、親と子どものための音楽フェスティバル、「世界のおとぎ話とオペラ夢コンサート」に行ってきた。有限会社アルテコム総合企画が、企画制作を担当しているこの音楽フェスティバルは、コンサートホールにおけるファミリーコンサートプログラムと、葛飾シンフォニーヒルズ施設全体を活用した総合イベントプログラムの二つのプログラムによって構成されている。 会場である葛飾シンフォニーヒルズは、建物外観や内装自体の美しさ、音響設備の整った1300人収容のモーツァルトホールなど、クラシック愛好家に非常に人気の高いコンサートホールである。正面エントランスからなかに入ると、飲料や、ポップコーンなどの出店が並び、ピエロのアトラクションを子どもたちが集まって眺めている。民間企業の事業機会としても、広いロビー空間を開放し、企業の出店参加を積極的に誘致することで、従来のメセナ的な協賛金とは異なり、企業の出店料を全体事業費の一部に充当するという、新しい発想の民間活力の活用方式を取り入れている。 |
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| 二階は、入場無料のエンターティメント空間だ。コンサートでの、馬の毛を使ったモンゴルの楽器、馬頭琴の演奏にちなんで、モンゴルの生活や風土、文化をつたえる写真展(写真芦谷牧人氏)が開催され、馬頭琴も展示されている。そのほか、施設全体の空間や部屋を活用し、ヨーヨー釣り、飴つかみどりなどの縁日コーナーや、手作り工作コーナー、ポニーと遊ぼうコーナーなどが設けられ、観劇だけでなく、建物内にはいってから出るまで、親子で楽しく遊べる総合イベント空間づくりを演出している。「日本の下町、葛飾」という地域で、いかに地元住民に喜んでもらえる、クラシックコンサート(オペラ)をするか、という主催者側の配慮がつたわってくるようだ。 ホール入場受付で、チケットを入手する。日本で、海外の第一線で活躍するプロのオペラ歌手が何人も出演する舞台というと、安くても一万円を超えるという思いこみがあったが、このフェスティバルは1500円(全席自由・二日間共通)と、リーズナブルである。葛飾フィルハーモニー管弦楽団や、葛飾少年少女合唱団など、地域の産・民・学が一緒に参加するプログラムを策定することにより、財団法人地域創造の助成金と民間企業からの資金獲得を可能とし、地域財団の小さな予算で充実した地域音楽文化事業を実現している。 |
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![]() 写真: ステージオペラ ヘンゼルとグレーテル |
舞台・ワークショップをつうじての国際交流 さっそく、プログラムを開いてみる。17日は、「スーホーの草原の大地」というテーマで、第一部では、話題の手話ソング・アイドル歌手、星野はるなさんのミニコンサート、第二部では、モンゴルの馬頭琴走者チ・ボラグ氏、指揮・ピアノの増田宏昭氏、ドイツを中心に活躍する日本人オペラ歌手、田辺とおる氏(バリトン)らが出演して「中央アジアの高原にて」「チンギス・ハーンの二頭の馬」「浜辺の歌」などが演奏され、モンゴルと日本の、音楽を通じた文化交流が図られた。 コンサートにひきつづき、「僕たちみんなオペラ歌手!」―ドイツの歌劇場で活躍するオペラ歌手による公開レッスン―や、「馬頭琴を弾いてみよう!」など、小・中学生を対象にした、プロの演奏家による楽しいワークショップ(受講料1000円)が、別のホールで開催されている。客席で聴く・観るだけで終わらずに、ふだん、あまりふれあう機会のない外国人にすぐそばで教えてもらい、実際に体験できるのも、子どもには新鮮な喜びだろう。 18日は、「感動〜音楽物語、ステージオペラへの誘い〜世界のおとぎ話とオペラ夢コンサート」というテーマで、広く子どもたちに親しまれているモンゴルとドイツの二つの童話を題材にしたプログラムを、本場で活躍する一流のプロの音楽家たちによって上演する構成だ。第一部の音楽物語は、モンゴルの名作童話「スーホの白い馬」を、稲垣隆史氏、コスモポリタン・オーケストラと、チ・ボラク氏の馬頭琴の演奏(指揮 増田宏昭氏)とともに、情感をこめて朗読するものだ。哀しいストーリーにそって流れる、馬頭琴の胸が苦しくなるようなものがなしい音色が、観客の胸にしみいってくる。現代のクラシック音楽によるオーケストラと、モンゴルの民族楽器のセッションがおりなるハーモニーも美しい。 |
そして、20分の休憩をはさみ、最後に子どもたちがもっとも楽しみにしている、ステージオペラ「ヘンゼルとグレーテル」が始まった。お父さん役で登場するバリトン歌手、田辺とおる氏が、劇の合間合間で、客席の子どもたちに日本語で語りかけながら、おまかなあらすじを説明するという手法で、ドイツ語によるオペラを小学生でも楽しく観ることができるようになっている。歌手たちは、会場奥から、客席の通路を歩いて舞台に登場したり、舞台をおりて、会場を走って一巡したりなど、客席を沸かす凝った演出だ。ラスト10分では、魔女の魔法がとけて、お菓子から人間の子に戻ることができた子どもたちとして、葛飾少年少女合唱団の子どもたち約25名が舞台に登場し、美しい合唱を披露してくれた。舞台づくり・観賞をつうじて、国際交流をはじめ、地域の交流、異世代の交流が自然と育まれる様子が目に見えるようだった。 |
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日本とドイツの地方劇場のちがい 舞台終了後、約10年間に渡り、ドイツの地方劇場でオペラ歌手として活躍してる田辺とおる氏にお話を伺った。「舞台というのは、映像にはない、生の感動があり、役者は観客の反応を受け取りながら、次の演技の間合いをとっていくので、観る側と演ずる側のコミュニケーションがあるんですね。文明が進むほど、人は他者との生のふれあいを厭うようになり、メールやチャットなどの間接的な接触が主流になって、人とのつきあいはあるようでなくなっていると思います。舞台芸への関心がテレビや映画にとって代わられているのもその一例と考えられるでしょう。ぼくは、日本の大都市だけでなく、地方でも、劇場が娯楽の殿堂として、人びとがふれあう場として機能していってほしいと思っています。 日本において、多くの地方劇場は立派な建物(ハコ)だけで、公演のたびに出演者をはじめ、裏方のスタッフもすべて外から呼んで、膨大な費用をかけて打ち上げ花火的に、単発のイベントとしてやる場合がほとんどです。でも、それでは、地域にその公演がなじまないし、第一不経済ですよね。ドイツの劇場では、全国どこでも、電車に30分も乗れば、必ず専属の大道具・音響・照明・オーケストラや合唱団、バレエ団や、年間契約のソリストの歌手や演出家など、総勢約200人〜300人のスタッフを抱える地方劇場があり、小規模なところでは、年間13億円の予算で、約550公演を実践しているような例も見られます。 |
![]() 写真:葛飾音楽フェスティバル 少年少女合唱団の子どもたちが舞台で合唱 |
| もちろん、同じ演目を長期にわたって、定期的に何度も上演します。そのほうが、経済的にも人材的にも効率的だし、地域になじみやすいからなんですね。劇場運営費は、州や郡市のような自治体の助成が85%で、チケットや広告など自家収入は15%程度、各劇場に配属される劇場総監督の給料は自治体から支払われるのですが、この総監督は、この地域では、今、どのような催しをすれば人が集まるか、地域住民が喜ぶか、ということをつねに考えて、それを実践していないとクビになってしまう立場なんです。なので、つねにアンテナをはりめぐらして、たえず、地域になじむ魅力のある舞台をつくっている。結果、ドイツの地方劇場はどこもユニークで元気なんですね。 今回のこのフェスティバルが、地域ホールにおいて、いかに少ない予算で充実した文化事業を実現するかの、ひとつの参考になればと思います。たとえば、この演目が今回だけで終わらずに、長期にわたって定期的に上演されることで、『葛飾の子どもは、みな、馬頭琴の演奏とヘンゼルとグレーテルのドイツ語のオペラを、生で観て育つ』と言われるようになれば素晴らしいですよね。」 (取材・文/浅田志津子) |
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