公演日記3:千秋楽へ〜アドリブでにやり

2001/8/13(月)

14歳の息子が6歳の娘をつれて、ドイツから電車でやってきました。迎えにいかなくても会える年になっ

一夏、ここですごしました

てくれたなぁと感無量。こちらは先週木曜から今週日曜まで11日連続公演の最中ですが、久しぶりにオトーサンをやらさせてもらっています。おしゃべりして料理一緒にやって、こっちはホフマンさらって向こうは夏休みの勉強やって・・・・とすごしているうちにすぐ夕方。公演にでかける時間です。夕べは子供達も湖上舞台にきて楽しんでいきました。「オヤジ、はまり役だね」、我が辛らつなる批評家の一言でありました。

ネット環境はちょっと苦しくて、子供がいるときだけ貸し別荘にいるのですけど、ここに電話がない。二日に一遍くらい、定宿にしていたワイン農家の電話をかりにきています。だから返信もおくれがち。

そうこうしているうちに、ホフマン帰国が間近だなぁ、とあせっています。


2001/8/26(日)

メルビッシュ日記の結語を、とずっと思っていたのですが、なんだか気の利いたことはおもいつきません。

八月二十日までの十一日間は子供たちと過し、三ヶ月ぶりに会った彼らの成長にびっくりしながら湖で泳いだり料理したり、楽しい時間を持ちました。ちょっと早いかな、とおもったけど息子とワインで晩酌も。ぼくが飲める年になるのをオヤジが心待ちにしていたン十年前を思い出しましたね。なるほど、息子と飲むのは格別だ(夏休み旅行の特例ですがね。母親のもとでは飲まないそうなので・・・。)

今週は、月曜日に子供たちとウィーン西駅を出発して、フランケン地方のホーフに住む彼らがニュルンベルクで途中下車したあとぼくはフランクフルトに帰宅。二日間で壱ヶ月分たまった残務を整理して、木曜の飛行機でオーストリアにもどりましたが、報告したように木曜の公演は恨めしい雨天中断。さぁ最後のシリーズだ、といきごんでいたもんで、すっかり不機嫌になってしまい、同僚たちが集うワインスタンドにも寄らずに宿に直行してしまいました。どうせ日本帰国をひかえて各種打ち合せの資料つくりや翻訳など、パソコンに向かう仕事には事欠かないので、気晴らしがてら夜中の残業。

一昨日・昨日は無事公演できました。だいぶ回りの風情も三ヶ月まえとはかわりましたね。一幕終了までだいたい明るかったのに、今は八時半の開演時に暮れています。名物のこうのとりも南下したようで、パタパタと嘴で太鼓たたく音も聞かれなくなりました。リハーサル中には葡萄の開花祭があったのに、いまはたわわに実って収穫をまっています。蒸し暑いのは相変わらずだなぁ。きょうは午後から劇場の楽屋でホフマンの最後の稽古をするつもりなので、そのあとはとなりの湖水浴場にいきましょう。美容に効く泥水湖を最後にもう一度あじわって・・・。

2001/8/27(月)

セットがまだ置いてある舞台上で打ち上げパーティ ミー役の三谷さんのご両親一行はあでやか
着物姿でメルビッシュの舞台にたちました!

千秋楽をつつがなく勤め、初日同様、舞台上のパーティをたっぷり楽しんでメルビッシュの三ヶ月を打ち上げました。

ワイン醸造のマイスターもソー
セージスタンドで助っ人.

ワイン屋の主人とも今日午前中に最後のワイン談義をたのしみ、トランクを詰め終わって迎えの車を待っているところです。

ロングラン最終日というのは、よくアドリブをやります。芝居をこわしちゃいかんし、あまり内輪ウケだけでもいかんし、それでもずっと付き合ってきた同僚たちが「ヤッタナ」とニヤニヤしてくれる手でないとおもしろくない。まともに公演するのより神経使います(笑)。ぼくも何箇所かのセリフに即興をいれました。そのひとつが日本語。登場の場面で王子にむかって「ニーハオ」というくだりがあるのですが、ウィーンから戻った王子を歓迎する場面なので、

「若君、よう戻られた!」

とやった。ミー役の三谷さんのご両親が見えておられるのを知っていましたしね。ほかの共演者がポカンとしている顔見るのも楽しかった。

毎日同じ役、という日本でやる一回かぎりの祭典的公演とは対照的な一夏をすごしました。いつものことではありますが、今回もまた得るところすくなくなかった。セリフは随分磨けました。八月後半の公演をヴィデオ収録してくれたらよかったのに・・・と思うくらい。微妙なタイミングを意図的に操作することで、芝居の流れは随分かわります。歌は多くなかったけど、これも毎日研究の対象になりました。ちょうど昼間フランスオペラを稽古していましたので、その発音のちょっとしたクセが、ドイツ語の歌にヒントとなることも随分。これがまたホフマンに影響するんだろうな、と期待しています。

この周辺には音楽祭がいくつかありますので、またいつかここか近くで出演したいですね。このワイン屋にまた住みこんで。

(完)