妖怪根付
其の五

「豆腐小僧」
(とうふこぞう)

 この化け物は今ではすっかり忘れ去られてしまったものですが、江戸中期から明治にかけて人気を博した化け物です。
 安永年間(1772〜81)の頃、突然様々な本の中に登場します。
 豆腐小僧が生まれたきっかけは不明ですが、もしかしたらその当時豆腐に関する怖い事件でもおきたのか、それとも芝居にでも登場したものなのか、そこのところははっきりとはわかりません。
 ただ、恐らくは当時のメディアが作り上げた化け物であろう事は想像に難くないところです。(所謂「都市伝説」みたいなものでしょう)

 雨がしょぼしょぼ降る夕暮れに竹の子笠を被って、紅葉豆腐を乗せた盆を持ち、町をちょこちょこ歩き回り豆腐を届けると言うのがこの化け物のする事です。
 川柳には「豆腐小僧は化け物の小間使い」と言うのがあるくらいですから、全く害の無い、化け物の中でも相当気の弱い部類に入るのでしょう。
 この辺りは「一つ目小僧」等と同じ系統と言えます。
 事実、登場当初の豆腐小僧は頭こそ巨大ですが、その顔は普通の小僧のものでした。
 それが江戸の後期になると次第に一つ目の豆腐小僧が増えていきます。
 もしかしたら一つ目小僧が豆腐小僧の人気にあやかって、手に豆腐を持ったのかもしれません。(笑)
 逆に言えば、小僧の姿をした化け物が手に豆腐を持っていれば、それはすなわち「豆腐小僧」と見なされるって事でもでもあります。

 この根付に同梱されている解説書には「見越入道が父親でロクロ首が母親だという」とありますが、「見越入道の孫」であるとか「姉がろくろ首」等という説もあります。

 現代ではすっかり失われてしまった豆腐小僧ですが、是非とも復活をさせたい化け物のひとつですね。

前の頁 次の頁 表紙に戻る