江戸暦─水無月の行事 其の四



【虫売り】

 まず第一に蛍、続いてこおろぎ、松虫、鈴虫、轡虫(くつわむし)等の声の良いものが売られました。
 盆になると飼っていた虫を放す風習がありましたので、虫売りの季節は六月上旬から盆までの間でした。
 虫籠は京坂は割りと粗雑で、江戸のものはかなり精巧に出来ていて、舟形や扇形など色々なものがありました。
「江戸見草」によれば、走り物のキリギリスが銀九十匁で取り引きされています。
(銀九十匁(一両二分)は延享(1744〜48)の頃の女中の給金とほぼ同じ。)

 明治の頃の話になりますが、明治四十三年頃の虫の値は、虫売りが最初に顔を見せる五月廿八日の不動尊の縁日で鈴虫=六〜七銭、きりぎりす=廿五銭、かんたん=廿銭、閻魔こおろぎ=六〜七銭と割りと高価です。
 これらの虫は虫屋が育てたもので、野性のものが出るにつれて値が下がっていきます。
(明治四十二年の銭湯代が大人三銭、子供二銭です。)

 昔から日本人は虫を買ってまで楽しむと言う風習を持っていました。
 それから考えると甲虫やくわがた虫が高値で取り引きされるのもごく自然な流れなのかもしれませんね。


目次に戻る 次の頁 水無月の目次に戻る