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-General-

Photo/PenWPen WはPen発売から5年後の1964年(昭和39年)に誕生しました。Penシリーズの多様化の中、プロ指向の広角専用機として企画されたモデルです。販売期間が1964〜1965年とわずか2年間であり製造台数が比較的少ないモデルです。またこのPen Wはブラック仕様のみが販売された珍しいモデルとなっています。Penと比較した場合そのシャッター、レンズ、塗装の違い以外は共通です。製造台数が少ない為、中古市場においてかなり高価な値段で取り引きされています。

 写真工業に記載された設計者米谷さん自身の説明を紹介いたします。
「オリンパス・ペンワイドは、ペンのボディーにEズイコーWをつけたものです。したがってファインダーとかその他本体関係は、今までのペンを踏襲しております。その構造については今さらここに書くこともなく省略いたしますが、すでに多くの愛用者によって実証済みの、これまでのペンのもっていた小型軽量つかいやすさの上に、ブラック仕上げもあいまって、ワイドレンズ-EズイコーWをより使いやすいものにしていると思います。
 ペンカメラを開発した当初の目的の一つであったサブカメラの分野に、これでまた一つワイドファン待望の新星が現れたわけです。」

Specification
発売年月:1964年(昭和39年)9月
レンズ:E.Zuiko 25mm F2.8 3群5枚
シャッター:コパル#000 B、1 / 8 〜1 / 250 秒
      X接点、ドイツ型シンクロソケット
焦点調節:回転Helicoid 0.6m - 無限 目測式
     ダブルクリックストップ付き
ファインダー:逆ガリレイ採光式Bright Frame 0.5倍
フィルム送り:Rear Winding、Self Cocking式
サイズ:108X68X40mm 、380g
発売価格:10000円


-Lens-
Pen W Lens Pen Wに搭載されているレンズは、E.Zuiko 25mm F2.8で3群5枚構成です。35mmフルサイズに換算すると36mm相当の広角レンズとなります。オリジナルPenが28mm(フルサイズ換算で40mm)と準広角の画角(note1)ですので、素人の小生なんかが町中のスナップを撮るのにはPen Wの方が使いやすいような気がします。

 この豆粒(note2)のようなレンズの性能に関しては、是非「れんずまにあ(note3)の私的レンズテスト/広角の罠」をcheckして下さい。驚くほど、高性能なんです。Pen Wに関しても、「レンズだけはケチらない」という米谷さん(note4)のポリシーが受け継がれているのではないでしょうか?そもそもPen Wの開発背景には、Pen Fの存在があったのです。Pen Wの模写性能が非常に優れているのは、設計者=米谷さん(note4)にとっては必然であり、また当然の帰結であったことが後々に明らかになりました。この件については、このページの最後、「Overview」にて紹介いたします。

ここに一つの謎があります。それは何故、Pen Wのレンズが25mmという焦点距離なのか?ということです。この件に関して米谷さん(note4)は1964年の「写真工業」の中で以下のように語っておられます。

「ワイドカメラの設計にあたって、最初に問題となるのは、レンズの焦点距離をどこに置くかということです。「焦点距離と画角(note1)の対比表」を見て下さい。どれをもって標準レンズとするかにはいろいろ意見もあろうかと思いますが、いちおうLeicaによって確立された、35ミリサイズにおける50ミリ標準レンズ画角(note1)47度を基準に、準広角、準挟角を含めた標準レンズグループを考え、それより画角(note1)の広いものをワイドレンズと考えてみました。
分類

35ミリサイズ焦点距離

画角(note7)

ペンサイズ焦点距離

広角レンズ

28mm
33.2mm
35mm
36mm
75°
66°
63°
62°
19.4mm
23mm
24.3mm
25mm
標準レンズ
準広角
40.4mm
56°
28mm

43.3mm
53°
30mm

46.2mm
50°
32mm

標準
50mm
47°
34.7mm

準挟角
54.8mm
43°
38mm

58mm
41°
40.2mm

60mm
41.6°
41.6mm
ー中略ー こうして整理していきますと、ペンサイズのカメラは、一眼レフのペンF以外ほとんど準広角のレンズを使っております。ペンサイズを最初に開発したオリンパスペンが、焦点深度の深さとカメラの小型化から、準広角の28ミリ画角(note1)56度を使ったことによると思われます。ではペンワイドに何ミリのレンズを使えばよいだろうか。対比表に示す通り28ミリより短いレンズを使わなければならないことだけはわかりますが、どの程度広角にするかは重要なキーポイントになるわけです。種類の多い35ミリサイズ用ワイドレンズについて過去に発表された入選作を調べると、焦点距離35ミリのレンズがやはり一番多く使われていることがわかりました。これをペンサイズに換算すれば24.3ミリになります。準広角のよく使われるペンサイズにとって、もう少しワイドをとも考えてみたのですが、35ミリサイズの半分の面積しかないペンにとって、画像のより小さくなることは、現状のフィルム事情からおしても、大倍率の引き伸ばしにより不利になると考えたのです。レンズ交換のできないワイド専用カメラには広角における汎用性が要求されます。そこでもっとも利用度の多い画角(note1)62度の25ミリレンズを使うことに決めました。」

 また米谷さん(note4)は、同写真工業誌にPen Wに搭載されているE Zuiko 25mm F2.8レンズの設計に関する苦労を書かれています。

E Zuiko 25mm F2.8 Lens「焦点距離25ミリという短いレンズをペンのボディーに組み込むには、ビハインド用000番シャッターなどからかなりの制限をうけますが、これからのワイド専用カメラにはやはりF2.8くらいの明るさが要求されます。画角(note1)62度F2.8、ワイドレンズとしては明るい部類に入るでしょう。これに4枚構成のテッサー型(PenやPen Sで採用されている型)を用いますと、像面の湾曲がかなり大きくなり、画面の中間帯または周辺部に像のくずれが生じます。特に周辺部では急激にくずれてしまいます。この像湾曲を取るために各レンズの曲率半径を小さくすると、F2.8という口径比の大きさから球面収差が急激に増して、写した写真には霧がかかったようなフレアーの多いものになってしまいます。この球面収差を小さくするには前とは逆に各レンズの曲率半径を大きくとらねばならず、結果は像面湾曲を悪くせねばならないことになります。
 焦点距離25ミリF2.8のワイドレンズを大倍率の引伸ばしにたえうるものにするには、4枚構成のテッサ−型のままではやや無理なように思われます。そこで前玉を2枚に分離して、屈折率の高い稀元素を含んだ新種ガラスを用い、テッサ−型に改良を加えることによって、曲率半径を大きく取りながらも各レンズの屈折が小さくならないようにし、像面湾曲を悪くせずに、球面収差をF2.8に対して充分なように補正することができたのです。このほかワイドレンズに出がちなディストーションの補正はもちろん、他の収差も良く補正されていることはいうまでもありません。写してみますとフレアーのないクリアーな像を結びます。第1図はその構成図ですが、斜線の部分が新種ガラスです。
 ペンのボディーにこのレンズを組み込む場合、ビハインドシャッターによる周辺光量の低下が生じないように、シャッターの羽根をできるだけレンズ後面に接近させなければなりません。このように短いレンズをシャッター羽根まで近づけると、レンズがすっぽりとシャッターの中に入ってしまうので、F2.8をカバーする絞り羽根などの入るスペースが非常に窮屈になってきます。
 また、レンズの偏心とかその他の精度も焦点距離に逆比例して難しくなってくるので、このような点は苦労の種でした。第2図は鏡枠の断面を示すものです。」


-Shutter-
Pen W Interior Pen Wのシャッターは、Pen Sに搭載されているものと同じ5枚羽のタイプです。オリジナルPenには2枚羽のバリオ式が使われてましたが、より高速性能を追求した#000プロンタ−式が使われています。このシャッターの説明についてはPen S2.8 Shatterを御一読下さい。

 左の画像は5枚羽のシャッターを見たところです。

 それとWの巻取りスプールがオリジナルPenとは異なるパーツが使われているのも見てとれます(色が違うだけなのかもしれません)。レリ−ズのフィーリングはPenとPen Wを比較した場合、ほとんどその差異を感じないのですが(極めて軽くチッといった感じで切れる)、リア−ワインディングによる巻き上げのフィーリングにはかなりの差異があります。Penは巻き上げ最終行程でやや重くなったかな〜、くらいの感じなのですがPen Wの方はいかにもシャッターチャージしてますという感覚があります。大した重さではないのですがPenの軽さと比較すると明らかに重くなってます。もっともDシリーズのゴリゴリした重さに比べればずっと軽い巻き上げ感ですが、、。


-Top Cover-
Pen W Top これまでに紹介したレンズ、シャッター、塗装以外に関しては全てPenと共通の様です(トップカバーのOLYMPUS PEN Wの文字が違ってた!)。トップカバー部分では手動逆算式のフィルムカウンター、長方形シャッターボタン、アクセサリーシュ−、巻き戻しノブがPenと同様に並んでいます。ファインダーも逆ガリレイ式採光ファインダーです。
 ちなみにPen Wの黒塗装の品質の悪さは、あまりにも有名で、ホントにすぐ剥げてしまいます。小生がれんずまにあ氏(note3)から譲り受けたこのPen Wも再塗装されたものでした。普通に使用されたWは四隅が間違い無くはげ上がっており、決して酷使されたとは言い切れないと考えた方が自然だと思います。

-Bottom Cover-
Pen W BTM底側はこのような感じで、Penと同じ後蓋引き下ろし式です。蓋のロック解除ノブ、三脚穴、巻き戻しボタンが並んでいます。
 

 


-Overview-

Pen W もしもPenが発売されたとき、このPen WがPenとして発表されていたらどうだったろうか?(価格の問題がありますが、、)ということを勝手に思います。

 Penの画角(note1)はどちらかと言えば玄人好みの準広角というか標準の目であり、スナップをバシバシと撮るには、より広角の目を持つPen Wの方が向いていると思いますし、撮影そのものにPenが本来目指した軽快感も出てきます。黒装束に身を包んだことは、少なからず撮影領域の拡大にもつながっていると思います。

 しかし何故かこのPen Wはわずか2年間でその幕を下ろしてしまい、後継モデルもとうとう出現しませんでした。

このPen W の開発背景について、米谷さん(note4)自身は以下のように語っています。「ワイドから800ミリ超望遠までの交換レンズが自由に駆使できる高級機として、ペンFを送りだしました。ペンFにはその捨てがたい良さがあるために人気もあり、数多くの傑作も生まれるのでしょう。しかし数本のレンズをそろえて交換しながら使うとなると、実際には煩雑であり重量も重く、かえってカメラに使われるような結果に終わることもあります。こんな場合、望遠レンズはやむをえぬとしても、焦点深度の深いワイドレンズまで、精密にピントが合わせられ、ボケの具合まで見られる一眼レフでなければならないだろうかと疑問を感じるのです。そこで新設計のワイドレンズを付けて登場したのがこのペンWです。かたやズームを付けたペンFを持ち、かたやペンWといったハイクラスの方のサブカメラに使ってもらうのが目的です。その為サブカメラにふさわしい黒塗りに仕上げました。かつてのオリンパスワイドのペンサイズ、それがこのペンWなのです。」

Pen W追伸:米谷さん(note4)からの答え
Q1:何故ブラック仕様のみが販売されたのか?
A1:プロフェッショナル及びハイアマチュアユーザーを販売ターゲットとした為。

Q2:Pen Wの販売台数は?
A2:公開できる資料無し。比較的少ない生産台数です。

Q3:Pen Sとの価格差(1200円)の理由は?
A3:E.Zuiko25mmレンズ及び黒塗装の為

Q4:Pen F用25mmF2.8と比較して開放時から遥かに高性能な訳
A4:Fは一眼レフでありレトロフォーカスになっていますが、Wはその必要が無い為。しかし当社としてはそれ程に性能差は存在しないと思ってます。

Q5:なぜ2年間という短い期間で販売終了としたのか?
A5:売り上げが不振であった為。Penの6000円に対して、Wの10000円にその相対的価値を見いだせる層は少なかったと判断。

 Pen W Close Upはこれで終わりです。


note1=angle / note2=small beans / note3= Mr.Lens Mania / note4=exact Mr. Maitani

 


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