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-General/Specification-

Pen D3 1999年3月25日になんとあの「ナチスドイツの目」、「潜水艦の潜望鏡」、「時計屋のおやじの拡大鏡」とさんざん毛嫌いしていたPen D3が我が家に入籍しました。普段あまり足を運ばない新宿の中古カメラ屋さんで出会ったこのPen D3は価格がばか安かったので、すぐに見せてもらいました。電池を使うPenをいじるのは始めての体験であり、最近話題の水銀電池の件を店員さんにあれこれと教えてもらいながら、頭の中は、もう買って帰るぞ、と決心している状態でした。新宿と言えば、カメラ量販店が大挙している街。小生は安売りフィルムを買って、夜の新宿に繰り出してPenシリーズ最高速のレンズで闇をさらってみました。さんざんセレンのPen Dが最高とかなんとか言ってた人がいましたが、実はPen Dの巻き上げが異様に重くなってきてまして、そのうち壊れるぞ、という強迫観念から中古カメラ屋に行くとPEN Dを探してる自分がありました。そこへ、格安のD3との出会いが偶然訪れました。

オリンパスのPen開発はとどまるところを知らず、Dの発売から2年後にD2を発売、さらにその翌年である1965年にはPen D3が発売されました。世は大口径レンズの大ブームでありF1.9と他社に対して劣勢であったD2にF1.7のレンズを搭載したモデルです。Pen Dと比較すると露出計がセレンからCds露出計となり、外観はご覧の通り、恐い測光窓がつきました。重量を実測してみると、Pen Dが420g、D3が410gでした。

Specification
発売年月:1965〜1969
レンズ: F Zuiko 32mm F1.7  4群6枚
シャッター:コパル#000 B.1 / 8〜1 / 500秒 X接点    
 ドイツ型シンクロソケット
焦点調節:目測式、直進Helicoid 0.8m〜無限
ダブルクリックストップ付き(3 m,1.2 m)
ファインダ−:Albada式Blight Frame 0.5倍
露出計:セレン光電池、単独LV値直読式(note1)
測定範囲LV3-17 ASA10〜400
大きさ、重さ:108x67x50mm 420g
フィルム送り:Rear Winding
発売価格:\16300



note1=Direct Reading


-Lens-

D3 Lens Pen D3の存在意義はやはりそのレンズにあると思います。F1.7と言う大口径のレンズにより、絞り開放でのボケを生かした撮影や闇夜での自然光を生かした手持ち撮影の領域を拡大してくれます。レンズの仕様はF.Zuiko 32mm F1.7 4群6枚のガウス型です。大口径化が流行していた昭和30年代後半に、他社がF1.8のレンズを軒並み標準化したための対抗措置として前年度にD2を発売した直後にもかかわらず、F1.7レンズを搭載することになったそうです。F1.7という大きさのレンズをいかにしてコパル#000のシャッターに納めるかという限界に挑戦したモデルですが、実質的にはどれほどの効果があったかは疑問の残る企画だったと、Pen開発にたずさわった松崎氏が当時を振り返って書かれています。しかしその写りはPen D/1.9と比較してまったく遜色の無い、すばらしいものです。その実力に関しては、「れんずまにあ(note2)の私的レンズテスト/Dの紋章」をチェックして下さい。またDシリーズにはフィルターワークを容易とする為に直進Helicoidが用いられています。このおかげで、焦点調整をしても前玉が回転しないようになっています。

note2=Lens Mania


-Shutter-

D3 Shutter Pen D3のレンズを生かしきる為には、高速なシャッターが必要不可欠です。高速なシャッター、大口径のレンズ、従来のPenサイズの維持という課題をクリアーすることが技術陣に求められました。レンズシャッターの場合フォーカルプレーンシャッターと比較してよりコンパクトさが要求されます。このコンパクト化と高速性能を両立させるためコパルの#000シャッターはシャッター羽根の枚数をPenシリーズの枚数より増やすことで、ひとつひとつの羽根の大きさを小さくし高密度実装を可能とし、かつ慣性重量を押さえることで、高速性能を得ています。レンズシャッターとしてはオーソドックスな手法が採用されているわけですが、それにしてもPenサイズにおさまったことは、すばらしいことだと思います。

次回は露出計を見てみます。


-露出計-

 D3 Meter Pen Dシリーズの特徴である露出計。Pen Dではクラシックなセレン光電池が使用されていましたが、D2になってついにCdsが搭載されました。

セレンは電源が不要、大電流を得やすいなどの特徴ゆえに、大昔からカメラに搭載されてきましたが、世はスピード時代、また短小軽薄時代。重量が重く反応が鈍く計測範囲の狭いセレンから(あれだけPenはセレンにかぎる、なんて言ってたのは誰?)小型、軽量、高速、精度向上、計測範囲の拡大されたCdsを搭載して生まれかわりました。ただし、外部電源が必要という宿題がくっついてしまいました。

もうひとつおまけに使用している電池が今日では製造中止の水銀電池です。外観はこの通りの円形の測光窓がつきました。例の「ナチスドイツ」「潜水艦の潜望鏡」「時計屋のおやじさんが使う拡大鏡」です。狙った獲物は逃がさない、真っ暗闇でも覗いてやる、といった外観です。物はその外観に性格や機能が表われてしまうんですね。こわいこわい!

ところが使ってみると、これがいいんです〜。お前にはポリシーというものがあるのか?(^_^;)。計測が即座に終了するし、絞りで3絞り分、暗いところでも使えるんです。やはりこいつは暗闇を覗くいやらしいカメラだ、と思いました。それでもってD3を買ったその日に新宿の闇夜を切り取りに出かけた小生、、(・_・;)。

 実はこのCds露出計には超驚きの機能が隠されています。今日ではごく当然のように使われている評価測光ですが、当時はまだ一般的ではなかったと思われます。いつのころからこの評価測光が一般的に導入されたのか小生はよく知りませんが、少なくともこのPen D2/D3が登場した1960年代中盤においては実装していたカメラは無いのではないでしょうか? ( もし有りましたら、すみません ) 撮影範囲の明るさを測光するにあたり、当時一般的には撮影範囲の中央部を重点的に計測する中央重点測光または撮影範囲全体を平均的に計測する平均測光などが用いられていました。Penのような家庭用の廉価なカメラには、一般的には平均測光が用いられていたかと思われますが、なんとPen D2/D3では、今日のカメラ用語で言うところの「評価測光」的測光が行われているのです!これには驚きました。この情報は、B級カメラ解体新書の主筆-林重雄さんからいただいたメールで解りました。以下にその資料の内容をそのまま紹介いたします。

この内容は、Pen D2/D3の露出計設計にもたずさわった、オリンパス光学工業の楠山氏が「写真工業」に書かれたものです。「スチールカメラのEE化は、撮影者を厄介な露出決定から開放し初心者から熟練者に至るまで広くEEカメラが愛用されるようになった。しかしEEカメラは逆光撮影に弱いと言われ、また一部のものを除いては、シャッターがプログラム方式であるため、シャッタースピードと絞りについて任意の組み合わせができず、EEカメラに飽き足りない人もいて、こうした人々のいろいろな作画意図に応じた操作が可能なカメラとしてPen Dが生まれた。- 中略 - Pen Dは逆光撮影においては、読み取り式なので、単独メーター的な使い方をすれば支障をきたすことはないが、無意識に測定した場合には逆光の影響を受けて主被写体が露出不足になる恐れもあった。Pen D2/D3ではこれらの点を改良し、より高性能を持たせる為にCdsを採用して、測光範囲を広げるとともに、被写体のあらゆるコントラストに適合できるように、最近開発された3つの電極(note 3)を持つ複合セルを使用している。

Cds Patternこの複合セルには、1.広範囲にわたって高低切り替え無しの1レンジ等間隔メーターが可能である、 2.逆光補正ができる という大きな特徴がある。- 中略 - 被写体のコントラストが大きい場合、特に逆光撮影や主被写体のまわりに広い明るい空間などがあるときには、メーターは全受光角(note34)の平均輝度を測るので主被写体は露出不足になりがちであった。その為あらかじめこのような撮影条件を計算に入れてメーターの振れ角を補正したり、露出計の受光角(note4)を極力小さくして被写体の微小部分の輝度だけを測るようにしたものが考えられているが、前者の場合は逆光補正にあまり重点を置くと、輝度が平均化された被写体の場合には補正過剰となり、また後者の場合には、逆に平均輝度域の選択に困難があったりして一般的でなく、いずれにしてもはなはだ厄介な問題であった。しかし複合型Cdsではフラットな光線具合の被写体では従来どおり受光角(note4)全体の平均輝度を測るが、コントラストの大きな被写体の場合には、おのおのの輝度の中間値を示し、一般に低輝度である主被写体に対する露出不足を補正することができしかも、回路の抵抗を適当に選ぶことによって、補正の程度を自由に変えることができる。- 中略 - 左の図はPen D2/3のCdsパターンである。白地の部分が電極(note3)でパターンを形成しているのがCdSである。CdSの前にはこの面から少しずれて被写体の像が結ばれるように凸レンズが置かれている。したがって被写体の中央部の輝度はセル中央部で計測し、被写体周辺部の輝度はセル周辺部で測られる。CdS3は、メーターが所期の目的に沿うように、CdS1およびCdS2で作られる特性を修正している。こうしてPen D2/D3の露出計は被写体のあらゆるコントラストに対応する自動補正によって、適正露出が期待され、Pen Dから継承した安定した機構や機動性とあいまって、さらに威力を発揮するものと思われる。」

note3=Electrical machinery pole / note4=Angle of light measurement


-Top Cover-

D3 Top Cover Pen D3のTop Cover周辺を見てみます。まず露出値(LV値)を表示する窓がありますが、その目盛りをよく見るとPen DはLV7〜LV17の範囲で、D3はLV3〜LV17と違いがあります。つまり暗い側に約3絞り分計測範囲が拡大されているんです。明るい側は変わってません。やはり暗闇を覗き見る性格のカメラといえます(すごく恐いな〜、と思う小生は本当にどうかしている、、)。実は、このメーターの指示範囲の拡大には必然的な理由が存在していました。Pen Dに搭載されているF1.9という高速-明るいレンズと搭載されているシャッターの組み合わせを見てみると、Pen Dのメーター測光範囲はASA100のフィルムを使用した場合にEV7〜EV17までで、EV7と言えばPen Dの絞り開放で約1/30秒に相当し、1/8秒というスローシャッターを装備しているPen Dの露出計としては、測光範囲が狭いという欠点があったのです。

そしてこの露出計を作動させる為のスイッチが、Rear Windingノブの隣に小さくあります(この小ささには、おくゆかしさを感じます)。Pen Dのセレンは光を受けて自分で発電しているので、こういうスイッチはありません。CdSは電池から電源供給を受ける必要があるので、こういう何らかのスイッチが必要になります。これがないと電池があっと言う間に放電してしまいます。Rear Windingを操作する親指を少しだけ内側に移動させてスイッチを押します。その他のレイアウト(シャッターボタン、フィルムカウンターなど)にはまったく変化はありません。Pen D3になっても上部の押し出しのモデル名はPen Dのままです。ところでCdSを作動させる電池はどこに格納されているのでしょうか?

次回はカメラの裏側を見てみます。


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