
日本の自然
12月15日の産経新聞のコラム『産経抄』に皇太子妃のご懐妊騒動に触れた文章が載っていたが、その中に昔は
「こうのとり」など日本中どこにでもいたこと、それが明治以後の列島開発で今ではほとんど見かけなくなってしまっ
た、というようなことが書いてある。
なるほど、そういうものかとも思う。朱鷺もいなくなり、めだかも少なくなったという。しかし、一方、日本列島は古くか
らこれだけ多くの人が住んでいるにも関わらず、世界的にみてまだまだ自然が残っている地域ではないかとも思う。
先日、滋賀県の住民と話をしていたら、畑にでる猪の被害についての話題がでた。すると同席者が猿の被害を訴え、
ついで鹿を見た話しまででてくる。この県の北のほうでは熊まで出るという。もちろん今各地で騒がれている、おおわ
しも生息している。
どこも人里のすぐ傍のはなしである。この地方は千数百年も前から人が住み開発されてきた地域で、京都からも車
で二十分、三十分のところである。
都に隣接したこのあたりは日本列島のなかでも、早くから開発が進んできた土地であり、京都に都が置かれる以前
の万葉の時代から幾つも歌が詠まれているほど早くからヒトが住みついている。
こうした先進地域で今なおこんな状況であるなら、北海道ならずとも日本列島は到るところ人獣混住状態ではないの
かと思われる。
町の中心部から少し外れるときつねがでたり狸がでたりということなど、日本中どこでもごく日常のことではないだろ
うか。
☆ ☆ ☆
先日ラヂオを聞いていたら、全国各地からのローカルニュースをやっていたのだが、沖縄のそれを聞いて驚いた。
なんとかグスク(城と書く、町や村のこと)のなんとか小学校でウサギがハブに食われてしまい、出動した警察に逮捕
されたというのである。
なお、この犯罪者(?)は来年のサミットの警護に全国から集まる警察官にハブの習性についての実物サンプルとして
供されるべくどこその地の保健所に一時拘置されることになったとまじめに話している。
人間も哺乳類も爬虫類も生きとし生けるものみな兄弟の発想である。隣りのぽちが子どもを産んだという類いのこうし
たニュースが全国のネットに乗るのは日本ぐらいのものではないだろうか。
日本はまことに奥が深いというか、変わった国である。
(19Dec99)
日本の自然 2
日光でも熊が出る話を誰かがTVで語っていた。1000万を越える人口を抱える大都市から一時間半のところで、
野生の熊にお目にかかれる国など世界にないのではないかと言っていた。
欧米を中心として捕鯨問題やひところ酷かった公害を意識して日本を自然破壊のシンボルとして叩いている国内
や海外のNGOが幾つもあるそうだが、自分には一見美しく見えるアメリカやヨーロッパの自然も日本のそれと同程
度には破壊されているように思える。
空から見るフランスやドイツの丘陵地帯に広がる田園や牧草地は一面みどりでとても美しい。が、それも元は森林
で覆われていたところであり、今の美は作られた人造のもので、向こうの公園と同じである。
日本の山々は今もみどりで覆われている。これも、今では北海道といえども原生林ではなく植林されたものである。
ただ、日本の自然は、日本庭園と同じく手が入っていても、いかにも自然らしく作られているのである。
☆
熱帯森林の伐採問題で、その元凶とされる日本の世論と企業に訴えようとやって来たフイリッピンの代表が、空か
ら見た日本列島がどこまでいっても緑で覆われていることに驚いた、と語っているのを新聞で読んだことがある。
彼女は日本では木を切り尽くし列島には森がなくなり、自分の国まで木を切りに来たと思い込んでいたという。
そう言えば、大戦中日本中の町をひとつずつ焼いていった米軍の空襲に参加したパイロットが、この列島は山と
水田ばかりで
『いったいどこにヒトが住んでいるのだ』、というのが空から見下ろしたときの印象だったと書いていた。
ヨーロッパからシベリアルートで日本に戻ってくると新潟あたりからこの列島に入るのだが、山や水田の緑が美しく
これがけっこう霞ヶ浦や成田まで続くのである。これは、南からやってきても同じで天気の良い日には沖縄の緑の
海からはじまり、島と山の緑が美しくいつまで見ていても飽きない眺めである。
☆
空から見た日本の自然の美しさにはいつも感心するのだが、バスや成田エキスプレスで都内に近づくにつれて、
ごちゃごちゃした街並みを眼にするようになり、東京はやっぱりアジアの街だなあと再認識させられることになる。
もっとも、東京も美しいとは言えなくとも、他の日本の町と同様におどろくほど清潔でけっこうおもしろい街なので
ある。
(20Dec99)
P.S.:日本の大都市はともかく、田舎の美しいことを肯定するのには誰も異存はないのではないか。
http://www.maff.go.jp/soshiki/koukai/muratai/21j/index.html