人民元の変動幅拡大――「円安批判強める公算も」(マーケットウオッチャー)
掲載日:2002/02/20 媒体:日本経済新聞 朝刊 ページ: 19 文字数:1045
 十九日の東京市場で、人民元に関する為替政策の規制緩和に向けた中国人民銀行(中央銀行)総裁の発言が市場関係者の関心を集めた。同日の市場では、ブッシュ米大統領の来日前に高まったデフレ対策への期待が後退し、円相場の下落幅は一時、一円を超えた。中国が人民元の自由化に踏み出せば円相場の影響を受けやすくなる。中国は一段と円安批判を強めるのではないかとの観測も浮上している。

 ▼…「人民元相場の変動率を適度に拡大していく」。戴相龍・中国人民銀行総裁は十八日夜、香港での講演でこう語り、為替政策を徐々に自由化していく方針を示した。市場ではこの発言について「ブッシュ大統領の訪中に合わせて、為替政策の自由化を推進していく考えを表明した」(シンガポールの為替ディーラー)との指摘が出ている。

 今月四日には中国の李肇星外務次官(前駐米大使)がワシントンで開いた講演で、円安について「アジア経済、金融に不健全な影響をもたらす」と発言、円安問題を含めて米国と経済・金融分野で戦略的な対話を推進したいとの考えを表明した。市場では「米中首脳会談では円安問題を含めて金融情勢も議題になるのではないか」との思惑もくすぶっている。

 ▼…円と人民元相場をめぐって日中は昨年来、つばぜり合いを演じてきた。人民元相場は現在、政府の厳しい管理で実質的にドルに連動している。日本は製造業の中国への生産移転が加速し、中国からの輸入が膨らむなかで「人民元相場の切り上げを要請すべきだ」との議論も高まっている。一方、中国は「円安が加速すればアジアの金融市場を不安定にする」との考えから円急落をけん制。人民元が割高となり輸出競争力が低下することに懸念を示してきた。

 中国が人民元相場の規制を緩和した場合は「輸出競争力を映し、人民元には確実に上昇圧力がかかる」との見方が支配的だ。中国と日本は輸出市場で直接競合する分野は少ないものの、円安によって日本と競合する韓国や台湾などの通貨に対ドルで下げ圧力がかかり、通貨安がアジア全体に広がれば、人民元の割高感が強まる。一九九七―九八年のアジア通貨危機時には中国は円安に対する非難を強めた。

 ▼…昨年十―十二月期の中国の輸出は前年同期比六・六%増加し、前期(三・八%増)と比べ回復しているが、世界貿易機関(WTO)の加入に伴う輸入の増加で今後、貿易収支は悪化するとの指摘もある。それだけに「通貨規制の緩和をにらみ中国はこれまで以上に為替相場の安定に神経質になる」との見方も出ている。(H)