◇ 不審船関係 ◇
| 海保が初の船体射撃、不審船沈没し15人不明 22日午前1時10分ごろ、不審な船舶が航行しているとの連絡が海上保安庁に入り、同6時20分、海保の航空機が鹿児島県・奄美大島の北西約240キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内で国籍不明の不審船を確認した。不審船は海保の巡視船の停船命令を無視して逃走したため、巡視船が船体射撃を行ったが、不審船から巡視船に向けて銃撃があり、海上保安官2人がけがを負った。不審船は午後10時過ぎに沈没、乗組員約15人が海に飛び込んだが、23日午前0時ごろ全員がいなくなった。政府筋は同日未明、「不審船は北朝鮮籍の可能性が極めて強い」との見方を示した。同庁は「自沈の可能性がある」としており、不審船の沈没や乗組員の行方不明で、事件の真相解明は困難になりそうだ。 同庁によると、沈没した不審船は、左舷に日本の漁船登録番号にはない「長漁3705」という船名が書かれた100トン前後の漁船。21日午後4時ごろ、警戒監視活動中の海上自衛隊の哨戒機P3Cが奄美大島北北西約150キロの公海上で発見した。 甲板上に漁具がなく人影も見えないことから船体を撮影して分析した結果、一昨年の能登半島沖で発見された北朝鮮の工作船と似ているとして、22日未明、海上保安庁に通報した。 同庁は、巡視船25隻、航空機14機を動員して追跡。海上自衛隊もイージス艦「こんごう」と護衛艦「やまぎり」を派遣した。 奄美大島西北西324キロ地点で追いついた巡視船「いなさ」が停船を命じたが、不審船は時速13〜18キロの速度で西に逃走を始めた。「いなさ」は漁業法違反(立ち入り検査忌避)の疑いで追跡、中国のEEZ内で5回にわたり上空、海面に向けて威嚇射撃を行ったが、停船しないため、22日午後4時16分、船尾に向け11回の船体射撃に踏み切った。さらに巡視船「みずき」も約40分後、船体射撃を行い、全弾を命中させた。 この船体射撃により、不審船は機関室があると見られる前方の甲板部分から出火、一時停船したが、乗組員が消火に当たり、再び逃走を開始。このため巡視船「きりしま」が接舷し、停止させた。 午後7時、巡視船4隻が取り囲み捕そく措置を講じたが、不審船は午後9時過ぎに再び逃走を開始。同35分に「みずき」が船体射撃を再開、その後、「きりしま」などが不審船をはさみ、海上保安官が乗り移る準備を始めた。 しかし、不審船の乗組員は巡視船に向けて13ミリ機銃か自動小銃で乱射、「あまみ」「きりしま」「いなさ」の3隻に命中、「あまみ」航海長、金城良武さん(49)が右腕に、航海士の長友良治さん(54)が左手にけがを負った。2人はともに意識があり、ヘリで奄美大島へ搬送されている。 不審船は午後10時10分ごろに沈没。同庁では不審船は自沈の可能性もあると見ており、刑法の殺人未遂罪などに切り替えて捜査を進めていく。 (12月23日09:34) |
炎上、沈没…衝撃の結末
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海上保安庁が追跡した不審船は、一昨年3月に日本海で逃走した北朝鮮工作船と様々な点で酷似している。最大の酷似点は、外観が漁船を装っているのに比べて著しく漁具が少ないということ。さらに船体が前に傾いているのも同じで、船尾の中央に観音開きとみられる隙間(すきま)の痕跡が走っているという特徴も重なっている。これらの類似点について、防衛庁の幹部の1人は「船尾に積んでいるエンジンを、前部にずらしている疑いが強い」と指摘しており、船尾の空間に、工作員が使う半潜水型侵入艇を出し入れするため、専用のドアを付けていたとみられる。
海上保安庁も22日夜の会見で、ブリッジの形や2本あるマストの形などの船形が、過去に確認した北朝鮮の工作船に酷似していることを明らかにした。
今回の不審船には、中国漁船ともとれる船名が記されているが、一昨年3月の場合も、日本の漁船を偽装しながら、米偵察衛星によって北朝鮮国内に入港したことが確認され、工作船と断定された経緯がある。
不審船が反撃した上で沈没したことについても、警察当局からは「密航や密輸などのただの犯罪船舶ではない。工作船の可能性はかえって強まったのではないか」との指摘があがっている。防衛庁の幹部も「特殊な訓練を受けた工作員の自爆テロに等しい行為だったのではないか」と話した。
防衛庁は今回の不審船を発見しながら、海上保安庁への連絡は9時間後になった。防衛庁の幹部は、特殊工作船だった場合、工作員が重火器を携行している可能性もあると指摘した上で、「工作船の可能性があるから慎重を期した」と話しているが、海保内部からは「連絡が遅すぎる」という声があがっている。
◆2人負傷、苦渋の海保◆
「正当な職務権限を執行したと思っているが、その結果が海上保安官2人の負傷に結びつくとは残念でならない」。幹部の1人は苦渋に満ちた表情で、こう漏らした。当初、同幹部は、「一昨年の北朝鮮の工作船による領海侵犯事件以前なら、船体射撃など絶対に出来なかった」と話していた。
船体射撃は、逃走する船を停船させるための「威嚇射撃」の一種だが、その結果、乗組員に危害を加えた場合、刑事責任が問われる。このため、逃走する不審船への船体射撃は、これまで事実上困難で、平然と日本の領海や排他的経済水域内に入りこむ不審船や海洋調査船などに対し、現場の保安官の間には「海上保安庁の船は絶対に撃ってこないと、なめられている」との思いが強かったという。
それが、一昨年の工作船事件で大きく変わった。「国民からは、なぜ取り逃がすのかという批判があった。不審船に対しては厳正に対処して行くのが、我々の職務だ」(坂本茂宏・警備救難部管理課長)と、世論の後押しを受けて、同庁内部の意識も変わった。
その結果、海上保安庁法の見直しに着手、今年11月には、領海内であれば、〈1〉放置すれば(犯罪が)再び繰り返される可能性が高い〈2〉停船・立ち入り検査をしなければ犯罪予防が出来ない――などの要件を満たせば、海上保安庁長官の判断で、船体射撃で人を傷つけても免責されることになった。
領海外で起こった今回のケースには、この法律は直接、適用されないが、追尾中の巡視船には射撃精度の高い高性能の機関砲が搭載されていることも踏まえ、海上保安庁長官が、「船長判断で許可する」という承認を与えた上での船体射撃だった。
1999年3月には、北朝鮮の工作船に海上自衛隊が初の海上警備行動を実施、警護艦が5インチ砲で警告射撃をしたが、船体には命中していない。53年8月には、旧ソ連のスパイ船が停船命令を無視して火器で攻撃してきたため、海保の巡視船が行った例があるが、今回のように逃走する不審船に対する船体射撃は初めてという。
(12月23日02:25) Yomiuri
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