[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2004年10月号


小額訴訟を利用した架空請求にご用心



 あいかわらず携帯メールや封書による架空請求があとを絶たない。さすがにマズいと思ったのか、やっと警察も本腰を入れ始めたようで、特別捜査班を編成して情報を収集しているようである。
 が、敵も負けてはいない。ここにきて連中は新たな手口を使い始めた。それはなんと小額訴訟という裁判制度を利用したもの。  国家制度まで詐欺のツールに利用しようというのだから、詐欺師の悪知恵には感心するやら呆れるやらだ。
 さて、その小額訴訟とは何ぞや、である。この裁判は60万円以下の金銭取り立てを目的とした簡易裁判制度で、わずか1日で判決が出るため債権回収が迅速に図れるメリットがある。
 借家を出る際に保証金を返してくれない大家さん。あるいは、呑み代のツケを払ってくれない常連さん。彼らを裁判で訴えようにも弁護士費用だけで赤字になってしまう。そこで小額訴訟の登場となる。費用は訴訟額のわずか1パーセント。60万円 の債権請求裁判でも、6000円の費用で済んでしまうし、もともと弁護士不要の本人訴訟を基本にしているだけに、裁判官の訴訟指揮も素人に優しいものになっている。
 きわめて便利な裁判制度だが、この制度を悪用した詐欺師たちが現われ始めた。その手口は次の通りである。

★突然裁判所から呼び出しが★
 ある日、簡易裁判所からあなたのもとに特別送達の朱印を押された分厚い封書が送られてくる。中身は訴状と裁判期日が指定された呼出状。訴えたのは名前も知らない出会い系サイト業者だ。で、あなたは被告。訴状の中身は「当社の出会い系サイ トの利用料が未払いです。ついてはその代金と延滞料、身元調査費用など、あわせて20数万円を支払え」などと書かれている‥‥。

 これは驚くだろう。これまで架空請求業者への対応策はひたすら無視が原則だったが、裁判所相手だとそうもいかない。もし無視すると裁判は被告の負けになる。架空請求業者は判決を片手に、堂々とあなたに金銭を要求してくるはずだ。理不尽な ようだが違法請求だったものが裁判所の判決で“合法”になってしまうのだ。

★実際にあったこの手口★
 じつはこの話、筆者も噂には聞いていたがデマだと思っていた。なぜなら架空請求業者にすればリスクがありすぎるからだ。被告が裁判に欠席することを最初から狙った手口とはいえ、詐欺師どもも裁判所に訴状を出す上で住所や氏名を明らかにす る必要がある。ある程度の個人情報を晒すわけだから、下手をすれば詐欺罪で刑事告訴されるリスクが連中にもあるだ。
 だが調べてみるとこの手口、ホントにあった。
 今年3月、東京都内に住む男性Aさんのもとに大阪簡易裁判所から小額訴訟の訴状が届いた。  原告は出会い系サイトの業者。請求額は15万円弱。むろんAさんがサイトを利用した覚えはない。これまでにAさんのもとには同じ名前の業者から架空の督促状が送られてはきたが、これを無視。そうこうするうちに裁判所からの呼出状が届いたと いう。
 Aさんは消費者センターへ出向くが、たまたまここで出会ったのが架空請求問題に取り組んでいるB弁護士だった。レアケースと判断したB弁護士はAさんに弁護を逆依頼。裁判そのものを大阪簡裁から東京地裁へ移し、小額訴訟から一般の民事裁 判へと手続変更した。現在、なんと17人もの弁護団が結成されこの裁判を担当しているが、驚いた業者は訴えを取り下げるものの後の祭り。弁護団はこれに同意せず、逆に損害賠償と刑事告訴を視野に入れた方針でいるという。

★小額訴訟に無視は禁物★

 さて架空請求といえどもこのような小額訴訟を利用したものに無視は禁物だ。欠席すると自動的に被告の負けになる。
 万が一このような訴状が届いたら、弁護士や司法書士、または消費者センターに相談してほしい。この場合、無視はくれぐれも禁物である。

(記事/庄村 有治)

 


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