九月に入り、二学期が始まった。子どもたちはまっ黒に日焼けして、夏休みを思う存分、満喫したようだ。今回は夏休みの話を書こうと思う。
同じ夏休みでも、「プールがある!」「昼寝がある!」といちいち驚いていた昨年の夏休みとは違い、指導員二年目の今年は夏休み前に自分で「夏休みは一日保育だから、気合いを入れて…」と思っていたからか、割合すんなりと保育をすることが出来たように思う。 |
★カブトムシ取れた!★
そんな中で、昨年の学童と違っていたのは、夏休みの自由遊びの時間は、男子は決まって「虫取り」に興じていたことだった。
昨年勤めていた学童も裏山があったりして、自然には事欠かなかったように思えるのだが、今の学童は、学校の敷地沿いにフェンスが敷かれているのだが、木や所によっては茂みがあったりするからか、あるいは、学校の隣の敷地がこんもりとしたちっちゃな雑木林だからか、虫取りにはうってつけの環境のようである。
夏休みの初めの週に、学童に通わせている保護者の会である「保護者会」から虫取り網を3本貰った日から、早速、虫取り大作戦が展開された。
取るのは蝉がほとんどなのだが、たまには、茂みにいるカマキリやバッタ、そして、今年の夏は何と、カブトムシの雄も二匹、雌も一匹、クワガタの雌も一匹取れた。
カブトムシの雄のうち、一匹は見つけた子供が言うのには「虫取りをしてて、木ィ見てたら、下にポロリと落ちてきてん」。そして、もう一匹は、警備員さんが学校内で拾ったのを子供に下さったのだ。警備員さんは、「最近じゃ、カブトムシの雄は売れるんやてな」と言いながら、「でも、今は夏休みで児童がいるのは、この学童だけやから(ここに持ってきた)」とおっしゃっていた。
貰った子供は「ラッキー!」と言わんばかりの満足そうな顔でその日は、おやつの時間に「カブトムシにも、先生、(おやつ代わりの砂糖水)やって」と言い、自ら砂糖水をカブトムシにやっていた。
★蝉の命は短くて★
蝉は、多いときで一〜二時間の自由遊びの時に、大体十匹くらい虫かごに入れていたが、虫かごに入れるのは元気な蝉だけで、子供達の基準によると「弱っちい蝉」、例えば羽根が欠けていたり、片方無かったりしていて飛ぶのもやっとな蝉や、小柄な蝉は、取ったその場で逃がしてやっていた。
また、その虫かごに入れた元気な蝉や他の虫たちも「キャッチアンドリリース」で、自由遊びが終わる時には、一匹ずつはなしてやっていた。
「蝉の命は短いねんで」と言ったら「そんなん知ってるわ。だから、逃がしてやるんやんか」と逆に説教されてしまった。
蝉取りなんて、小さい時にしたかどうかのわずかな記憶しかない私だったが、子供たちと蝉取りをするに従って、いろんなことを学んでいった。例えば、「鳴くのはオスだけであること」「オスでも、鳴かないものもいるが、体の一部分を触れば鳴く」とか、前述のように蝉の命は短いとか。
蝉は長い一生のほとんどを、幼虫として地中で過ごす。その期間は五年から七年、中には十七年間、地中にいるものもいるそうだ。そんなこと、子供たちはとっくの昔に知っているのだった。全く子供達にはかなわない。
★お尻とお尻で交尾★
かなわないと言えば、この夏の同じく虫取りでの出来事。
その日も、虫取りに懸命になっている子供たちの中で、「これは取ったらあかんぞ」と言っている子供がいた。どうしてかと聞くと「交尾してるから」。どうやら、子作りしているのを邪魔してはいけないと思っているらしかった。
そして、しばらくしたら、「交尾してる蝉、取れた!」との声がした。どうして子供たちの間では「取ってはいけない」ことになっている交尾している蝉がとれたのかと思っていると、木の幹の低い所にいたそうである。
そして、その一部始終を珍しそうに見ている私の気配を察したのか、「先生、見てみ。交尾してるで。(蝉を裏返して)ほら、このお尻とお尻がくっついているのが、交尾しているっていう証拠や」との説明をしてくれた。「ほな、返すな」と言って、また、元の幹に返していた。
成虫になった蝉は、約二週間と言われる短い地上での時間の中で交尾をし、卵を産み、その夏のうちにオスもメスも死んでしまう。後でこっそり調べてみたら、蝉の中にはお尻をくっつけてV字形になって交尾するのもあると言うことだった。
★人間のも見たい★
蝉の交尾など、私も初めて見る光景だったので言葉を失っていると、追い打ちをかけるように、その中にいた二年生の子供がぽつりと言ったのである。
「人間の交尾も見てみたいな」と。
何気なく言われた一言だったが、よく考えてみると何だか気恥ずかしい気分になってしまった。でも、その子は、次の瞬間にはごくごく無邪気に、何の変わりもなく蝉とりに夢中になっていた。
★カマキリなどへ★
お盆も過ぎ、夏休みも後半戦にはいると、とれる蝉の種類もアブラゼミからツクツクホウシへと変わってきたが、ツクツクホウシは「小さくてすばしっこいから取れへん」ということで、蝉とりも一段落する。子供の関心は、草むらにいるカマキリやバッタとりに移行していった。
カマキリやバッタも、蝉と同じく取っては逃がしている。
自然に対して「元に戻してやろう」という少しでもやさしい気持ちを持って育っていって欲しいと思った今年の夏休みである。
(磯貝 圭子)